正則学園vs 都立江戸川vs 都立葛飾野

写真拡大

都民の日に都内3校が千葉県野田市営球場で交流試合試合前の江戸川の選手たち

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 この日は都民の日ということで、東京都の学校は都立校をはじめほとんどの都内の学校が休みとなっている。そんな日だから、野球部としては1日フルに使って練習試合などを組んでいこうという思いのところも多い。千葉県の野田市営球場を正則学園が抑えていたということで、そこへ当初予定していた練習試合が学校で組めなくなった都立江戸川と都立葛飾野の両校が加わっての変則ダブルの交流戦となった。

 千代田区の神保町という都心のど真ん中に学校がある正則学園はグラウンドはない。そんなわけで、平日でも松戸市営球場などを使用することが多い。だから、千葉県の球場情報などにも詳しいということもあったようだ。東京都心からは少し距離があるが、9時前には集合していた。正則学園は、夏まで指揮を執っていた副校長の梨本洋三前監督から若い國島一平監督に引き継がれた。

 國島監督は東北から日体大を経て社会人野球の伯和ビクトリーで6年間プレーし都市対抗野球で本大会にも出場している。今春から赴任したがコロナの影響もあって、なかなか選手たちに直接指導できなかったようだが、自身の経験してきた質の高い野球を生徒たちに伝えていこうとしている。

 この日も、試合後も日が暮れるまで貪欲に使用できるグラウンドで実戦の感覚を大事に練習していた。19時まで借りているということなので、暗くなってからはランニングなどで選手たちもグラウンドの土を味わっていた。

 チームとしては、まだまだ未完成というところだが、こうした球場での試合や練習は貴重な経験となっていくはずだ。9月に行われた東京都の秋季大会一次ブロック予選では桜町には大勝したが、目白研心に敗れて本大会出場は果たせなかった。そんな中で、3番を打つ石井君が8打数8安打だったというが、この日も2試合で7打数3安打、二塁打1本とシュアなところを見せていた。

 ただ、守りとしては都立江戸川戦では7つ、都立葛飾野戦では3つの捕逸暴投のバッテリーミスが出たのは今後の課題だろう。コロナの影響もあって、身体に刷り込ませる反復練習などが不足してきているのは確か。それだけに、これからの練習の中での学習余地、成長余地はたくさんあるとも言えよう。

 一次ブロック予選では都立墨田工に延長で勝ち、広尾には7回コールドで勝って本大会進出を決めている都立江戸川。今春に都立四商から異動して就任した園山蔵人監督は、選手主導のノーサイン野球を目指している。チームではそれを“セルフジャッジベースボール(SJB)”と称しているという。つまり、「一つ一つのプレーをすべて自分で判断して決めていこう」というスタイルである。

 正則学園との試合では初回にいきなり坂本君が二塁打すると木谷君がバント安打で一三塁とすると、ここで、大嶋君と三走坂本君とでスクイズを決めて先制。さらに、失策で出た袴田君が三ゴロの間に二塁を蹴って三塁を奪う好走塁。

中間のプレーを見つめる正則学園ベンチ

 そして、9番前田君が一塁線へのセーフティスクイズで2点目。そして、5回は相手バッテリーミスも重なり4点を奪っていくのだが、このあたりは園山監督の目指すSJBが見事に機能していたとも言えそうだ。

 そして、投手も柳橋君と竹川君の継投で完封とほぼ理想に近い形だった。 「スクイズなどは、基本はアイコンタクトなんですけれども、アイコンタクトが出来たことをあからさまに表したりして、『そんなことしたら、相手にバレるだろう』ということは言っているんですけれどもね」 と、苦笑もしていたが、それでも選手たちが自分で考え判断していく野球が、徐々に浸透してきていることに手ごたえは感じているようだ。その成果を本大会でどれだけ見せてくれるのかとの沁みでもある。

 都立江戸川と都立葛飾野の試合は、中盤の競り合いとなった。結果として都立葛飾野の八十原君は9回を投げ切ったのだが、「入学して以来、初完投」だったという。才野秀樹監督も、「チームが始まった早々は、どうなるのだろうかというくらいのレベルだったのですが、見違えるくらいに成長しています。先週からも大きく成長しています。こんなに選手たちは吸収力があるのかと驚くくらいです」と、チームが成長していく過程に目を細めている。

 指導者としては武蔵丘、都立日比谷、都立調布南、都立紅葉川などでそれぞれ好チーム夢を作り上げていた田河清司コーチは昨年に都教員を退職後は夏まで都立紅葉川で監督を務め勇退。その後は外部指導員として母校でもある都立葛飾野の投手陣などを見ている。

 「今まで関わってきた中で、一番低いレベルかなと思った投手陣だったのだけれども、投げ方をいろいろ見つけていくうちに自分の投げ方がわかったら、ビックリするくらいに成長した」と言うが、正則学園戦で先発して5回1失点4安打に抑えた榊原君も同じだ。榊原君は腕の上げ位置の修正で伸びたという。

 さらに期待を込めて、素材力の高そうな築比地君、浅見君もその試合での責任イニングの1回をしっかりと自分の投球で投げ切った。

 都立葛飾野もコロナによる実戦練習経験の不足は否めないところだが、中大附に大勝した次の代表決定戦、大森学園との試合では延長10回で競り負けるのだが、「そこからも確実に成長している」という実感は得ているようだ。そうしたことは、選手たち自身の意識としても現れている。

 都立葛飾野の場合は才野監督が都立小山台の部長時代にその効力を目の当たりに体感した“野球日誌”を書くことを導入した。これは野球の技術だけに限らず、生活の中で気づいたことや感じたことも記していくということで、意識の成長、人間としての成長を促していくことにもなっているのだが、そんな精神面での成長も確実にプレーに反映していっていくであろう。「一つ一つのプレーに意図が感じられるようになってほしい」という思いかこうした試合を経験していく中でしっかりと浸透していっている。

 この日も、試合後も田中光主将を中心に、細かいところまで選手たちだけのミーティングを長時間行っていた。そんな姿を才野監督らスタッフは暖かく見守っていた。

 朝の天候は小雨の降る状況でもあったが、昼前後から午後にはすっかり天気も良くなってきた。選手たちのひたむきさと、朝から晩までそんな選手たちと付き合う指導者たちの情熱が雨雲も向こうへ散らして行かせてしまったようだ。

(取材=手束 仁)