2018年度のリサイクルショップ倒産件数は30件、前年度の2倍発生した(帝国データバンク)

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リサイクルショップの倒産は過去最多に

 リサイクルショップの倒産が急増している。帝国データバンクの調べでは、中古家電や日用品などを買取・販売するリサイクルショップの倒産が、2018年度は30件発生。前年度(15件)の2倍となった。

 私たちの生活では、既に「リサイクル」や「エコ」と言った環境への意識が定着。3R(リデュース・リユース・リサイクル)に対するニーズの高まりもあり、リユース市場の成長を背景に近年急速に普及したリサイクルショップ。帝国データバンクの企業データベースでも、リサイクルショップなど中古品小売業の最新期売上高合計は4000億円を突破している。それにも関わらず倒産が急増している背景には、従来「店頭買取」をメインとしたリサイクルショップや中古品取扱の事業環境が、フリマアプリの登場をはじめインターネットオークションの普及によって大きく変化しているため、との指摘もある。

手軽さが売りの「フリマアプリ」に利用者を奪われ、劣勢に立たされたケースも

 2018年度のリサイクルショップ倒産で、最も有名だったのはAKIRA(東京都)だ。同社は、子供服に特化したリサイクルショップ「ECO&KIDS AKIRA」の店舗名で事業を展開していた。

 近年晩婚化と少子化が進むなか、一人の子供に高価な有名ブランド服を購入する親も多い。しかし、子供服はすぐにサイズが合わなくなるため、「着られなくなったものを売りたい」、「捨てるにはもったいない」というニーズがあった。特に、こうしたブランド服においてはより捨て難い傾向もあり、商品が良好な状態で保存されていることも多い。こうした良質な商材を確保できた当社のリサイクルショップ事業は、「良い状態のブランド服が安く手に入る」という“コストパフォーマンス”を求める消費者に受け入れられ、事業を拡大。2011年3月期には年商1億円を突破するなど、順調な成長を遂げていた。

 しかし、フリマアプリの登場で、当社のリサイクルショップ事業は陰りを見せた。リユース市場に特化したECサイト「メルカリ」は大々的な広告を行い、急速に台頭。リアル店舗を経営する当社において、アプリで手軽に取引が出来るCtoC取引を得意とする同業他社に商材と顧客を奪われた影響は大きく、事業環境の変化もあって最終的に事業継続を断念した。2019年度に入っても、ブランド品のバッグを主体としたリサイクルショップ経営のル・デポ(東京都)が、インターネットオークションやフリマアプリの台頭で顧客離れが進んだことも背景に事業継続を断念している。

 こうしたケースに共通するのは、収益の源泉たる商材の確保が難しくなっていることだ。従来リサイクルショップを通していた商材の流通や販売場所は、ネット上を介して個人間でのやり取りで完結する「C to C取引」を支援するフリマアプリなどが普及したことで、リアル店舗からネット上へシフトしている。そのため、リアル店舗を有するリサイクルショップでは、商品をより高く買い取り、より多くの品揃え=在庫を抱えることができる、経営体力に余力のある大手と中小との二極化が進むことも想定される。

リユース市場拡大にも貢献した「フリマアプリ」、リアル店舗の次なる一手は

 こうした環境下において、リサイクルショップ各企業も新たな顧客発掘に向けた対応を進めている。大手のゲオホールディングスでは、モバイル知識を有した専門スタッフを育成するなど、中古スマホ市場に注力。また、衣料・服飾から家具、家電などリユース品の総合ショップを開設するなど差別化をアピールし、リユース市場シェアの拡大を図っている。トレジャー・ファクトリーもブランド力を生かし、大型品を買い取る出張買取やWEB経由の買取を進め、好調に推移している。

 スマホアプリの登場は、リアル店舗を得意とするリサイクルショップとの競合相手になる半面、リユース品の流通経路を多様化し、市場の活性化にも貢献している存在となっている。そのため、豊富な知識を背景としたきめ細かな対人接客サービスやショップとしての信頼性・安全性など、ネットに負けない「リアル店舗ならでは」の特徴を生かし、いかにして顧客の心をつかみ、リユース市場でシェアを伸ばすか。フリマアプリとの共存共栄を図るためのリサイクルショップ各社の次なる一手に期待がかかる。