親子三代、そして妻も…スウェーデンの“新10番”エミル・フォルスベリとは?
2015年から所属するライプツィヒでも10番をつける司令塔。2016−17シーズンには8ゴール、19アシストを記録し、ブンデスリーガのアシスト王に輝いた。2017−18シーズンはケガの影響もあって2ゴール、2アシストに終わったが、卓越したボディバランスと繊細なテクニックで快進撃を続ける若きタレント軍団の攻撃を操っている。その活躍ぶりに、今夏のプレミアリーグ移籍が噂される有望株だ。
しかしフォルスベリの体内には、“特別な血”が流れている。父のレイフ、そして祖父のレナートは共に、スウェーデンの元プロサッカー選手。代表歴はないものの、レイフは1980年代から90年代にかけて、フォルスベリがプロデビューを飾ったGIFスンツヴァルで400試合以上に出場し、143ゴールを記録したクラブレジェンドなのだ。エミル少年が“フォルスベリ三世”としてサッカー選手になることは、半ば運命づけられていた。
「僕の才能は父から受け継いだもの。彼は素晴らしいストライカーで、選手時代のビデオを見返しても僕と似たところはいくつもある」
そう話すフォルスベリは、「もしサッカー選手になってなかったら、無職か、いまの父のように消防士として働いていただろうね」と、“フットボーラー”が天職であることを認めている。2014年に代表デビューを果たすなど、いまではフォルスベリ家で一番の出世頭となった。
もっとも、フォルスベリに引き継がれなかったものもあるという。それが「父のような強烈なパーソナリティ」だ。スイス戦後のインタビューでも、「(決勝ゴールは)運が良かった」、「スウェーデン史上最高の選手(イブラヒモヴィッチ)と自分を比較するなんておこがましい」と最後まで謙虚な態度を崩さなかった。チームプレーが最大の武器であるスウェーデン代表において歓迎すべき姿勢ではあるが、レイフさんは「地球上で最も退屈なインタビューをする選手だ」と、息子のシャイな性格に関しては苦言を呈している。
それでもフォルスベリは、昔と比べれば変わったそうだ。弱点を克服するうえで強い味方となったのが、2016年に結婚した妻のシャンガさん。実は彼女もサッカー選手で、ライプツィヒの女子チームに所属している。2017−18シーズンは夫と同じ10番をつけてプレーした。同業のシャンガさんのおかげで、フォルスベリは強いメンタリティを手に入れることができたという。
「彼女が僕を向上させてくれた。もっとアグレッシブに振る舞い、何も恐れることがないように、僕を鍛えてくれた」
ただ、完璧な夫が存在しないように、完璧な妻もまた存在しない。シャンガさんはよき理解者であると同時に、最も手厳しい批評家でもあるのだ。フォルスベリは過去のあるインタビューで次のように告白している。
「サッカーのことで唯一緊張するのが、試合での出来が悪かったときだ。その夜に家に帰ると、何が待っているか…“ザ・シェリフ(小さな保安官)”とのミーティングだ。一言で言い表すなら、『容赦ない』。“ザ・シェリフ”は、いつもストレートにモノを言うんだ」
「もし彼女を怒らせたら、一緒の部屋にはいたくない。ただ僕は誰よりも彼女のことを理解している。僕の妻だからね。もちろん、僕の考えを口にすることもできる。でも、これが結婚というやつだ。夫婦の言い争いがどういう決着を迎えるかは分かるよね。僕にはノーチャンスだよ!」
7日に行われる準々決勝、スウェーデンの相手は12年ぶりのW杯ベスト8進出を成し遂げたイングランド。両国が対戦するのは、2012年11月の国際親善試合以来のことになる。スウェーデンが4−2で勝ったその試合では、イブラヒモヴィッチが全得点をマークした。中でも、後半アディショナルタイムにペナルティエリアの外から叩きこんだオーバーヘッド弾は、FIFAの年間ゴール賞『プスカシュ賞』を受賞。彼のキャリアにおけるベストゴールとして記憶されている。
6年ぶりの再戦で、フォルスベリに同じようなゴールを求めるのは酷かもしれない。今のスウェーデンは11人全員がハードワークを惜しまず、組織的なサッカーを90分間やり通すことで、欧州予選のプレーオフから世界のトップ8までたどり着いた。イブラヒモヴィッチが“王様”として君臨した時代と決別し、スウェーデンの伝統を取り戻したからこそ今がある。そもそも新旧10番は、プレースタイルもポジションも異なるのだ。だが、24年ぶりのベスト4進出を狙うには、フォルスベリが主役級の活躍を見せる必要があるだろう。
スウェーデン国民の期待、“イブラヒモヴィッチの後継者”という重圧、そしてフォルスベリ家のプライド――。北欧の雄が生んだ謙虚なサラブレットは、様々な思いを背負ってサマーラ・アリーナのピッチに立つ。果たして、背番号10はどんな輝きを放つのか、要注目だ。
(記事/Footmedia)
