学生の窓口編集部

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ゴールデンウイーク前に配信して大好評だった記事、「GWのデート・観光に! 近畿大学建築科の学生が選ぶ、 大阪のお気に入り建築物スポット5つ」 に続き、近畿大学の福岡キャンパス産業理工学部建築科3年生の藤原丈武(みぶ)さんに、続編の第2弾として、「大阪の観光スポットを建築物チェック目線」で案内してもらいます。

藤原さんは、祖父母をはじめ兄も大阪の大学にいて、子どものころから大阪の建築物や観光地を巡るのが趣味だったとか。多くの情報の中から、デートや観光にもおすすめできるスポットを選んで紹介します。文と写真は、藤原さんによります。


大阪府立中之島図書館

■日本一高いビルで浮遊空間を体験。「あべのハルカス」と「ハルカス300(展望台)」

現在、高層ビルとしては日本一の高さを誇るあべのハルカスは、階数が60階、地上300メートルになるそうです。20年間日本最高だった「横浜ランドマークタワー」(70階・地上296メートル)を抜いて高さ競争(?)に勝っています。国内の構造物では、1位東京スカイツリー (634メートル)、2位東京タワー (332.6メートル) に次ぐ3番目の高さになります。

↑ あべのハルカスの外観。これは、徒歩7分ほど離れたところにある「天王寺公園」の近くから撮りました。コンパクトカメラやスマホで全体を写すには、建物からかなり離れる必要があります。

建築物を観るとき、高さは興味の一つですが、その点ではいま、このビルがもっとも見応えがあると言えます。遠目に見ると、街並みからにょきっと突き出ているので、「あれだ!」とすぐにわかりますが、このビルの楽しみは高いことのほか、3つの建物が1つになっていることや、全面ガラスの「カーテンウォール」と呼ぶ工法を用いていること、それにやはり、最上階の展望台「ハルカス300」の構造でしょう。

ビルを外から見るととにかくガラスが美しく、未来の建物!? 的な感覚があります。外観のデザイン監修は、世界中の超高層ビルを設計しているという、アメリカ人のシーザー・ペリ氏。建物は、「地上から約100メートルの低層部」(近鉄百貨店・あべのハルカス近鉄本店が入っています)、「200メートルの中層部」(オフィス)、「300メートルの高層部」(大阪マリオット都ホテルと展望台)の3段階に分かれていて、全体として、これらが一つにくっついた形になっています。

周囲は公道や商業施設、商店街、路面電車の線路などに囲まれています。建設中は資材置き場に困って、3段階に分けて建てたという裏話を耳にしました。その難点をうまくデザインに活かしたのでしょうか。どの方角から見ても表情ががらっと変わる、また、ビルのすべてがガラスで覆われているように見えて、眺めていて飽きない様相です。


↑58階〜60階の展望台「ハルカス300」からの風景。16階にチケット売り場とゲートがあります。16階から50階まで、ノンストップのエレベーターで約50秒で到着。エレベーターの天井はシースルー、LED照明での演出もあって楽しめます。

チケットは大人は1500円ですが、前もって500円追加で時間指定すると、あまり待たずに入れるシステムがあります。休日は混み合うことがあるそうで、ホームページなどで詳細を確認してください。

↑60階のエレベーターを降りると、いきなり眼前に市街地が広がり、「うわぁ〜、高い、高すぎる〜」と、浮遊感を味わいます。60階は屋内空間です。この日は、写真左の、兄の大阪大学基礎工学部4年の藤原宇央(ねお)に案内してもらったのですが、高所恐怖症の兄は真っ青になって、カメラを向けてもニコリともできませんでした(笑) 右が僕です。高いところが好きなので、余裕です。


↑60階の回廊から展望します。大阪、神戸、京都、和歌山、つまり関西一円が望めるのですが、58階から3層吹き抜けのうえに全面ガラスなので、ぐるっと回ると空を歩いている感覚になります。そして、この景色はいったいどこまで観えるのかと、果てしない地続き感も覚えます。登山で味わうそれとは違い、「人の営み」をパノラマで一望する感じです。

写真は北方向で、前方に、梅田や大阪ビジネスパークの高層ビル群が見えます。左下の緑のエリアは天王寺公園と天王寺動物園です。こちらも大阪観光では人気のスポットです。


↑「通天閣」や「大阪城」が見下ろせます。これらの写真は、かなり望遠で撮りましたが、上から観ると、周囲の建物にまぎれ込んでいます。


↑南方向です。中央よりやや右上の緑のエリアは、陸上などスポーツの舞台で有名な「長居(ながい)公園」で、銀色の屋根が開いているのはスタジアムです。植物園や自然史博物館など多くのスポットがあります。


↑58階・59階・60階は自由に行き来ができるようになっています。58階には、60階まで吹き抜けの屋外空間があり、風を感じることができます。カフェ、お土産ショップ、それにビルとしては日本一高い地点(?)のトイレがあるので体験してください(笑)。

僕が訪れたとき(2016年3月)は、58階でウオールクライミングのイベントをしていましたが、今年の夏は9月25日までビアガーデンを開催しています。大阪の地上の蒸し暑さもここまでは届かず、わりと涼しいそうです。あべのハルカスには、天気が良い日を選んで訪れてください。まさに、予想を超えた「見はるかす大阪一円」に圧倒されます。

また、展望台へのゲートにあたる16階では、屋外の庭園に出ることができます。ベンチがあって景色を見ながらぼーっとできて、ここなら無料です。屋内には、「あべのハルカス美術館」、吹き抜け空間の17階にはカフェもあります。

大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43
TEL:06-6621-0300
展望台:9:00〜22:00 最終入場は閉館30分前
入場 大人1500円
JR・地下鉄御堂筋線・同谷町線各天王寺駅、近鉄阿部野橋駅から徒歩1〜10分、関西国際空港から直行バスで約55分

■124年前に建てられた重要文化財。いまも現役の「大阪府立中之島図書館」

この図書館には、驚くことがたくさんあります。まず、1904(明治37)年に大阪府初の公立の図書館として開館した歴史ある建物であること、次に、建築物としての見ごたえ感で、外観は「大阪にギリシャの神殿!?」とは言いすぎかもですが、それぐらいに堂々たる趣きの重厚な建物であることです。

さらに、玄関をくぐると吹き抜けの円形のホールがあって、目の前には大胆に末広がりに迫ってくる階段、円柱に支えられた回廊、天井には自然光がうっすら差し込むドーム屋根のステンドグラスと、全体として外国映画の舞台として出てきそうな風情があります。また、この建物はいまも現役の図書館として使われていて、各資料室や新聞室に入ると、普通に一般利用されているシーンにも強く関心を抱きました。僕は常々、「建築は人なり」と思ってあれこれ見て歩いていますが、この空間の有効活用法には、大阪の気質らしさを感じました。

中之島図書館は、前回の記事https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/36231 で紹介した「大阪市中央公会堂」に隣接していて、ともに日本の近代西洋建築の代表的な存在であるそうです。ぜひ合わせて訪れてください。


↑2015年4月、改装工事が完成したのを機に、2階にあたる正面の扉から入れるようになったそうです。ギリシャ・ローマの神殿建築様式を模し、コリント式の大きな円柱、ハリ、三角形の破風(はふ)、それにふんだんな文様(もんよう)。長い時間、細部まで眺めていても見たりないような気がします。道路を挟んだ向かいは大阪市役所ですが、そこから記念撮影をする人が後を絶ちません。


↑正面玄関の上には、建築当初の、右から左に読む「大阪図書館」の文字が残されています。しぶい。


↑外観はルネッサンス様式、内部はバロック様式を基本としているとのことですが、正面玄関を入ると、眼前の階段から3階の回廊が迫ってきて、壮麗さに一瞬息を飲みます。この階段で3階へ昇るのですが、昇っていいのかな〜と緊張します(笑) 

正面の大きな銅版は「建館寄付記」で、この図書館を大阪に寄付した住友家15代当主による寄付の理由、「大阪にはいろいろあるのに、図書館だけがない」というツッコミ(笑)が記されているそうです。「1世紀以上も前に、寄付によってできた建物」という点も、大阪の歴史的価値を物語るのだとか。

写真には写りませんでしたが、中央に向かって右にある彫刻の像は「野神像」で「野性」を表し、左側の「文神像」は書物を広げて見ていて、「知性」を表現しているとか。この円形ホールは、撮影OKになっています。

↑正面玄関から入り、円形ホールの天井を観ると、ドーム型の中央にステンドグラスが。柔らかい光が差し込みます。ドーム型天井は外観の正面からは見えず、左右のサイドからと、大阪市役所の階段を上ったフロアからだと少し見ることができます。


↑中央階段を昇った3階に「記念室」とあったので覗くと、レトロなインテリアの会議室風空間がありました。住友家の当主を記念した部屋だそうですが、インテリアや絵画は見ごたえがあり、しばしタイムスリップできます。


↑今年の4月から、2階に「スモーブローキッチン」という北欧の郷土料理・オープンサンド(これをスモーブローというそうです)専門のカフェがオープンしました。2階の赤い灯りの空間がそれです。外から見るだけでも魅力的です。ランチ1400円から。営業時間9時〜21時(LOは20:30) 不定休 TEL:06-6222-8719

大阪市北区中之島1-2-10
TEL:06-6203-0474
図書館開館 月曜日〜金曜日 9:00〜20:00、土曜日 9:00〜17:00
休日 日曜、祝日、3月・6月・10月の第2木曜日、年末年始
京阪電鉄中之島線なにわ橋駅から徒歩約3分。地下鉄御堂筋線・京阪電鉄淀屋橋駅から徒歩5分

■安藤忠雄建築の書物の要塞「司馬遼太郎記念館」

日本の歴史文学の大御所で、『竜馬がゆく』という小説で坂本竜馬を世紀のスターにした作家、司馬遼太郎さんの記念館です。1996年に亡くなられた後、建築家の安藤忠雄さんが、司馬さんの自宅の敷地内に生前に使用していた書斎をそのまま残し、隣にミュージアムの役割の新館を設計されたことで有名です。建築物好き、司馬さんファンに愛されているという、大阪郊外の静かなライブラリーに足を運んでみました。


↑司馬さんが好んで「雑木林」と呼んでいたという庭を進むと見えてきた、安藤忠雄さん名物のコンクリートの打ちっ放しの建築物。これが記念館の新館です。


↑エントランスへ続く、ガラスの回廊です。僕が訪れたのは3月末でしたが、司馬さんが好きだった菜の花が可憐に列をなして迎えてくれました。司馬さんの命日である毎年2月12日は「菜の花忌」とされ、前後は周辺道路にまでたくさんの菜の花が飾られるそうです。

↑出口から外へでたときの回廊。広く大きく見えます。ガラス越しには、たっぷりの陽光が差し込みます。

↑館内は撮影禁止でしたので、記念館で購入したハガキを撮ってご紹介しておきます。一歩入ると地下1階、地上2階、高さ11メートルの3層の吹き抜け空間が広がります。そして、その壁面いっぱいに、天井まで連なる、本、本、本。手に取れるのは一部だけですが、展示の数は2万冊で「大書架」と呼ばれています。敷地は広くないのに、この空間の息をのむほどの存在感は、訪れたあと数カ月が経ったいまも脳裏に刻まれています。

中央には読書用のテーブルが置かれ、訪問者が綴るノートが何冊か置いてありました。写真には写っていませんが、約150席の「映像ホール」もあり、10分ほどの司馬さんゆかりのプログラムの上映やイベントが行われています。

館内は、ステンドガラスから入る太陽光をメインの照明としているのか、光の具合が印象的です。また、コンクリートの打ちっ放しであることを忘れるような、ライブラリーも映像ホールも木の香りに満ちて気分が柔らかくなごむ、たまには黙って考えようかと自然に思う、司馬ワールドに浸れる知の空間だと感じました。


↑司馬さんの自宅の敷地内にあるので、門がまえはひっそり静かです。近畿大学の東大阪キャンパスは、ここから徒歩20分ほどの場所にあります。


↑大阪の難波から約20分、近鉄奈良線河内小阪駅というローカルな駅で下車。小さなアーケードがある商店街を抜けると急に静かな住宅街となり、「東大阪市の歴史の道」に指定されている小道沿いにあります。風情ある道中も楽しめます。

大阪府東大阪市下小阪3-11-18
TEL:06-6726-3860
10:00〜17:00(入館は16:30まで)
入館 大人500円
近鉄奈良線八戸ノ里駅から徒歩約8分、河内小阪駅から徒歩約12分以上、今回は3つのスポットをお届けしました。興味がある方はぜひ、お出かけください!

文・写真:藤原丈武×ユンブル