仕事の何に重きを置く? 8タイプの「キャリア・アンカー」
■働き方と幸福の関係は人によって異なる
目覚めているときに仕事が占める時間の割合を考えると、人生とはある意味、働くことでもある。
日本語の「働く」という言葉は、活動(Work)と苦役(Labor)というプラスとマイナスの2つのイメージを持っている。金のために苦労して働き、稼いだ金で生きるという面もあるが、働いて成し遂げたことで得られる喜びもあるわけで、仕事は単純に苦役ではない。いずれにしろ仕事(Business)という言葉がBusyから発生したように、忙しいことに変わりはない。
「キャリア・アンカー」という言葉を耳にしたことがあるだろう。仕事に取り組むうえで、自分がもっとも重きを置く心の拠りどころは何かを示す言葉だ。アメリカの心理学者エドガー・シャインはこれを8つのタイプに分けた。
「自分の過去を振り返って、これは譲れない、という仕事に対しての心の置きどころはなにか、人生の節目節目で、振り返ってみることも大切です」と神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授は言う。
本来なら、診断テストで分析するものなのだが、ここでは結果の8タイプだけを挙げておく。1〜8で、自分が仕事に重きを置いている順番に並べてみよう。自分が仕事に何を求めているかが、見えてくるはずだ。
■満足する働き方を知る
キャリア・アンカーが示すものは、単純に向いている業種を示すものではない。仕事をするうえで当人が大切にしているものなので、人を救う消防士、医者、弁護士だから社会型・貢献型というわけではなく、医者でもスペシャリスト型もいれば、ゼネラルマネジャー型の人もいる。
また、タイプに優劣はない。将来的に安定した雇用を望む保障・安全型は、守りに入って挑戦的でない、そんな人生で面白いのか? とマイナスイメージを抱く人もいるが、誰でもある程度の安定があってこそ力を発揮できるもの。
働くことと幸福の関係の価値観はいくつも種類があることを知り、そして、他人はまた違う価値観を持っていることを受け入れることも大切だ。
まずは自分の仕事を振り返り、自分がどのキャリア・アンカーを軸にしているのかを見つけ、自分の仕事への価値観を明確にしてみよう。どんな時間の使い方をすれば自分が満足するのか、方向性が見えてくるはずだ。
▼仕事の何に重きを置くかで8タイプに分けられます。あなたのキャリア・アンカーはどれでしょう? 自分に当てはまるものから順に並べてみましょう。
[スペシャリスト型]
自分の専門領域で挑戦的な仕事を得たときに最も幸せを感じる。自分の専門領域のなかでなら、他の人を管理することもやぶさかではないが、管理そのものに興味はわかない。
[ゼネラルマネジャー型]
経営管理に関心を持ち、組織の階段をできるだけ高いところまで上りつめたい。組織の方針を決定し、努力し、担当する組織が期待通りの成果を挙げたときに喜びを感じる。
[自律・独立型]
仕事の枠組みを自分で決め、自分のやり方、ペースで納得する仕事に取り組むことを大事にする。自律的な立場を維持するためなら、昇進や昇格のチャンスを断ることもある。
[保障・安全型]
将来的な安定を望み、雇用保障や経済的な保障に対する関心が強い。仕事そのものの性質よりも、仕事の周囲の状況に関心が向かい、組織に縛られることをあまり苦にしない。
[起業家型]
新しい製品やサービスを開発したり、事業を再編して新しい事業を起こす欲求を強く意識している。富に関心はあるが、富そのものよりも成し遂げた成果を世間に示したい。
[社会貢献型]
なんらかの形で世の中をもっとよくしたいという意欲が強く、そのためなら身を奉じる。待遇への関心よりも、価値観を満足させられる仕事かどうかに重きを置く傾向にある。
[戦士型]
不可能と思えるような障害を克服するなど、極めて手ごわい難題を解決することに喜びを抱く。戦いや競争に勝つことがすべて。簡単にできることにはうんざりしてしまう。
[ライフスタイル型]
自分のトータルの人生をどう生きていくのか、家族のニーズ、キャリアの要望をうまく統合させる方法を見出したいと願う。組織が個人や家族を尊重してくれることに期待する。
※出所:『キャリア・アンカー』(エドガー・H・シャイン/白桃書房)をもとに作成
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金井壽宏(かない・としひろ)
1954年生まれ。京都大学教育学部卒業。組織のなかで生じる人間にかかわる問題に対して、個人にとっても組織にとっても創造的な活動を促進するという視点で様々な研究を行っている。
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(神戸大学大学院経営学研究科教授 金井壽宏 構成=遠藤 成、大塚常好)
