今年(2024年)、ニフティ株式会社が小中学生に向けておこなった調査によると、「今付き合っている人がいる」と答えた小学生は22.9%にのぼった。

私自身、小学生のころに抱いた淡い恋心は胸にしまったまま大人になったが、同じような人も多いのではないだろうか。もしかしたら、友達との遊びで頭がいっぱいだった人も少なくないかもしれない。

一方、令和の小学生の心の中は親世代と同じではないようだ。現代の小学生の恋愛事情や、恋愛が低年齢化している背景、そして小学生の恋愛について親が気を付けるべきことについて専門家に話を伺いながら紹介する。

令和の小学生の5人に1人は「付き合っている人がいる」現状

先ほどの調査によると、「好きな人がいる」と答えた小学生は9割を超え、中学生の86.5%を上回る結果となった。さらに、好きな人がいる小学生のうち、およそ2割が「付き合っている人がいる」とのことだ。

実際に、小学生のわが子の友人や保護者に話を聞いてみると、「4年生のころ、彼氏や彼女を作る流行が起こった」と聞いて驚いた。流行のきっかけを聞くと、「インスタグラムやTikTokでメイクの方法を研究していたときに流れてきた、中高生カップルのデートの様子を紹介する動画」(小学5年生女子)だという。中高生カップルに憧れた女子たちが「私たちも彼氏がほしい!」と、流行が巻き起こったのだ。

付き合うことに対する男女のイメージの違い

「付き合う」ことに対するイメージについて、男女で違いはあるのだろうか。高学年の女子に聞いてみると「一緒に登下校する」ほか、「公園でおしゃべりする」「一緒にプリクラを撮り、おそろいの文房具を買う」などが聞かれた。

一方、高学年の男子は、「『○○に告白する!』と恋愛に盛り上がっているミーハーな男子もいるが、大半の男子は友達と遊ぶことしか考えていない」(小学5年生男子)そうだ。

そんな彼にも最近まで彼女がいたそうだが、「告白されて、仲もよかったしかわいいからOKしただけ」で、「付き合うことがどんなことか、考えていなかった」という。付き合い出した途端、クラスメートの女子と一緒に黒板を消しただけで彼女から嫉妬されるようになり、彼は「彼女の態度に疲れて別れた。しばらく彼女はいらない」と、話した。

子どもを取り巻く環境変化が恋愛の低年齢化の背景に

彼氏や彼女とプリクラを撮ったり、嫉妬心が芽生えたり、中・高校生顔負けの恋愛をしている小学生もいるようだが、なぜ今、恋愛の低年齢化が見られるのだろうか。

「スマホの普及など、子どもたちを取り巻く環境の変化が大きい」と話すのは、NPO法人ハートフルコミュニケーション代表の菅原裕子氏だ。「TikTokやインスタなどのSNSは、リビングのTVとは違って、家族の目をはばからずに、1人で背伸びした内容の投稿を見ることもできる」(菅原氏)

子育てについて講演する機会も多い菅原裕子氏(本人提供)

さらに、菅原氏は「親の意識の変化も、背景のひとつでは」と話す。

たとえば、小学生の化粧について、昭和の親世代(子どもたちの祖父母世代)は「小学生が化粧なんて」と、否定的な人が多かったが、SNSなどを見ていると、令和の親は「かわいいね」と、子どもと一緒に楽しんでいる人も見られる。

「おしゃれして『かわいい』と言われたい気持ちの先に、『異性からモテたい』気持ちが芽生えるのは自然な流れですよね。そしてSNSでは、化粧と同様、子どもの恋愛についても親子で一緒にワクワクできる親も見かけます」(菅原氏)

子どもと一緒にさまざまなことを楽しめる親が増え、おしゃれや異性への興味をオープンにできる環境になったこと、そしてスマホの普及も相まって、「恋愛の低年齢化は自然な流れでは」と、菅原氏は話す。

彼氏や彼女ができてからルールを作っても遅い

小学生の子どもに彼氏や彼女ができたら、親が気を付けるべきことはあるのだろうか。菅原氏は、「門限やスマホの使用時間などを親子で再確認するといった話もありますが、子どもに彼氏や彼女ができてから、家庭のルールを決めても子どもは納得しません」と話す。

「心配事が生じる前から、●時までに寝る、宿題はその日のうちに終わらせるなど、基本的な生活サイクルが回せるよう、環境を整えておくことが大切です」(菅原氏)

たとえば、子どもが彼氏や彼女と遊びに出掛けて帰宅が遅くなったとき、基本的な生活習慣が確立されていれば、「●時に夕飯を食べ始めるから、●時までに帰ってくる約束だよね?」と注意することができる。しかし、生活習慣が定まっていないなか注意をしても、「今まで時間なんて決まっていなかったのに」と、子どもは素直に聞き入れられない。

「小学校3~4年生くらいまでの子どもは、特に親の影響を大きく受けます。それまでに、親子の信頼関係や生活習慣、家でのルールを確立することがとても大事です。それができれば、門限などのルールについて注意することがあっても、納得感が生まれる」(菅原氏)

家庭での性教育は生き方教育

また、保護者の大きな心配として「性的なことに誘われないか」ということも挙げられるが、家庭で性について、どんなことを伝えればよいのだろうか。

菅原氏は「家庭での性教育は、『生き方』を伝えることを意識されてはいかがでしょうか」と話す。

たとえば、両親のなれそめや、どこでデートしたかなど、両親の昔話をなぞって話すことも、「生き方」を伝えることになる。

「そのなかで、『2人で子どもを持つことについて話し合って、あなたが生まれたのよ』と伝えれば、子どもが『必要とされて生まれてきたんだ』と感じられるとともに、『子どもをもうけることの重み』も伝えることができる」(菅原氏)という。

「子どもを授かったら育てなければいけないこと、だからこそ心身の準備ができるまで、興味本位で異性に自分の体を触らせないこと、また異性の体を触らないことは、ハッキリとお子さんに伝えてほしい」(菅原氏)

何でも相談し合える親子関係を築くには

取材していると、小学校高学年の女子は彼氏がいることを親に隠している子が多かった。恋愛に関わらず、子どもが親に相談してくれる親子関係を築くには、どうしたらよいのだろうか。

「親子で子どもがしたいことを楽しむ時間を、毎日少しでも取ってください。親子で心が満たされる時間の積み重ねが、親子の信頼関係になっていきます」(菅原氏)

一方、親と一緒にいるのに、子どもが「寂しい」と感じる状態では、信頼関係どころか、「子どもは外にぬくもりを求めるようになってしまう」(菅原氏)という。

共働き家庭も多いため、子どもと過ごす時間を長く取るのは現実的ではないかもしれない。しかし、菅原氏は「お風呂に入りながらでもいいし、子どもが寝るまでの時間、少しでも一緒に過ごすことで、子どもの心は満たされます」と話す。

働きながら育児をしていた菅原氏も、子どもが小学3年生くらいまでは、子どもが寝るまでの30分ほど、その日の子どもの気分に合わせてごっこ遊びをしたり、本を読んだり、おしゃべりしたりする時間を取っていたそうだ。

また、菅原氏は「親が子どもにいろいろな話をすることも重要だ」という。その日の仕事で感じたことや、ささいなことも子どもに話していれば、親の気持ちや考え方を子どもが知ることができるからだ。

「親に恋愛の話をしてもよいのか分からなければ、子どもは話せません。普段から、親も子どもにいろいろな話をしていれば、子どもも『パパやママにこんなことを話してもいいんだ』と思えるので、安心していろいろなことを親に話せるようになります」(菅原氏)

子どもの恋愛相談は傾聴に徹する

では、いざ子どもが恋愛相談をしてくれたとき、親子にとってプラスになる対話をするためにどんなことに気を付けたらよいのだろうか。

「まずは、お子さんの話を聞くことに徹しましょう。たくさんの情報を得られれば、子どもの様子を知ることができます」

ここで気を付けたいのが、親の先入観で頭ごなしに反対してしまうことだ。ろくに話も聞かずに反対すれば、子どもも反発して親の話に耳を傾けなくなる。

「情報がたくさんあれば、それだけ適切なアドバイスもしやすくなります。傾聴に徹して、必要であればアドバイスをすればよいのでは」(菅原氏)

親子の信頼関係が、親子の心の支えになる

子どもに好きな人ができることは、心の成長のうえで自然なことであり、喜ばしいことだ。親としては心配も生じるが、大切なのは普段から子どもとの時間を大切にして、親子の信頼関係を築いておくことだろう。

毎日、仕事に家事に育児に多忙だが、ほんの少しでも子どものためだけに過ごす時間を作り親子の信頼関係が築けたら、それは近い将来、思春期などの難しい局面に至ったときに親子の心の支えになるかもしれない。これからも子どもの心身の成長を日々喜び、心配しながらも育児を楽しみたい。