今回は、精密機器(電気機器を含む)業界を取り上げる。世間で広く用いられているROE(自己資本利益率)とPER(株価収益率)の時系列データを、次の〔図表 1〕と〔図表 2〕に示すことによって、今回ピックアップする企業を最初に紹介する。証券コード順としている。



 ROEやPERは、『会社四季報』や『日経会社情報』で必ず掲載されるほどポピュラーな指標だが、〔図表 1〕や〔図表 2〕は惨憺たる結果になっている。投資家や金融機関の立場からすれば、企業をどう評価したらいいのか、途方に暮れてしまうほど。ベースとなる企業業績が荒れているのだから、評価のしようがないといえるだろう。

 ところで、ROEやPERを持ち出したからには、本連載を従前から読んでいる読者であれば「ROE-TAKADAなどを持ち出すつもりだな」と推測していることだろう。もちろん、のちほど持ち出すつもりでいる。なぜなら、ROEやPERをはじめとする伝統的・通説的な経営分析手法を用いていては、次の〔図表 3〕に掲げる仮説を検証できないからである。


〔図表 3〕サバイバル経営戦略における仮説
(1) 民主党・鳩山政権以降、〔図表 1〕や〔図表 2〕で取り上げた精密機器業界は海
外移転を加速させ、いまや「産業の空洞化」が完了しつつある。
(2) 日本電産・京セラ・村田製作所には、輸出型企業の特徴である「円高限界点」が
存在しない。
(3) 昨今の円高に際し、キヤノン「1人負けの構図」が顕著である。
制作著作:高田直芳@公認会計士


 今回、特に言及するのが、〔図表 3〕(1)にある「産業の空洞化」だ。メディアや評論家がしきりに連呼するので、耳にタコができるほど。経済産業省も「現下の円高が産業に与える影響に関する調査」を公表しており、政府もそれなりに危機感を抱いているようだ。

 ところが、マクロ経済分析は内容が漠然としていて、他人事のように聞こえてしまうのが難点だ。うっかりすると「ゆでガエル」になってしまう。

 産業の空洞化はいつから始まり、どこの業界のどの企業が海外移転に積極的なのか。空洞化を進めた張本人は誰なのか。そうしたことを具体的に明らかにしていかないと、いま一つ危機感が伝わらない。

 そこで今回は『原価計算工房ver.6』を駆使して「ミクロ経済分析」を展開することにより、〔図表 3〕に掲げる仮説を一つずつ検証してみることにする。この『原価計算工房ver.6』は原価計算やコスト管理を行なうために、米マイクロソフト社製「SQL Server 2008 R2」を用いて筆者一人で開発しているものであり、ミクロ経済分析にまで応用するのは余暇活動の一環である。多少は得手勝手な解釈で話を進めさせていただく。

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