書店員が選ぶ「読むと元気になれる本」(2)
そんなときにあなたの味方になるのが書店員さんたちだ。本のソムリエ、コンシェルジュとしてあなたを本の世界に誘ってくれる書店員さんたち。
そんな彼らに、テーマごとにお勧めしたい本を3冊答えてもらうのが、「わたしの3冊」だ。【「わたしの3冊」バックナンバーはこちらから】
◆『四国八十八ヶ所感情巡礼』

著者:車谷長吉
出版社:文藝春秋
定価(税込み):1260円
古から今に至るまで四国巡礼お遍路さんは、楽天的なお伊勢参りに比べ、やはり襟を正さずにはおれない雰囲気がある。何しろ今の総理大臣も失意の時期、頭をまるめて例の白の装束に身を固めて歩かれたくらいで、それくらい効能あらかたなものなのであろう。もちろん、人によってであるが。
車谷長吉は映画にもなった「赤目四十八瀧心中心未遂」など私小説家として活動しているが、ありがちな昔気質の職人肌というわけでもなくて、いわゆる「愛すべき困った人」という感じがする。本書では奥さんの高橋順子さんと連れ立って、『生きている間には謝罪したいという虫のいい気持ちがあって』徒歩でお遍路巡航を実施する。だが車中での悪態やどこでも便意を催すという奇癖など、ここでも「愛すべき人」であるが、文中に散らばるヒヤッとした観察眼は、さすが身の粉を削っただけのある人だ。
◆『第二阿房列車』
著者:内田百けん(門がまえに月)
出版社:新潮社
定価(税込み):420円
何も用はないけれど、取りあえず汽車に乗って大阪に行ってきたから始まり、三作を数えた阿房列車だが、微苦笑を誘うとすれば本二作目だろう。
いつも一人で旅ができないからお供に「ヒマラヤ山系」という年若い男を連れ、何とは無しに旅行に出かける。だが、そこは野次喜多よろしく平穏無事なわけは無くて、新潟に出かけ地元の新聞記者のしつこい取材に、辟易したこんにゃく問答や、どうでも良い百の問いかけに、糠に釘の返事しかしないヒマラヤ山系など、うやむやのまま旅は進んでいく。
脱力系かと言われればそうかもしれないが、神は細部に宿り給う。小さな出来事の積み重ねに、苦虫を噛み潰した様な、著者の魅力が詰まっているのだ。時は戦後からやっと落ち着き、高度経済成長時代の前夜。百の愛した戦前の匂いが漂う、時代が作った作品といえるだろう。
◆『新編 酒に呑まれた頭』

著者:吉田健一
出版社:筑摩書房
定価(税込み):546円
著者写真を見ても分かる様に、ギロリギロリと世間を見渡し、何より大食漢であるといば、信用できるはずである。
吉田健一といえば酒である。酒樽にどっぷり浸かった旅の話は、何ともいえない香りが漂う。旅の中、駅ごとの停車駅でことごとく、列車のボーイに(新幹線が走る前の時代である)生ビールを買い求めさせ、用意した肴とともにグビリグビリ、食堂車でもチビリチビリ、そして、目的地、例えば京都に着いたならば、まっすぐ馴染みのお茶屋へ向かう。もう何も言うことは無い。まさに真骨頂、落語の「蕎麦の羽織」と同じく、いつのまにか酒と旅が着物の代わりになっている。さて、良い酒は水に似ているという。さらり一服の清涼剤、折に触れて読める良さが、旅の本にはあるのかもしれない。
◇ ◇ ◇
【今回の書店】
■大盛堂書店

渋谷駅ハチ公口、スクランブル交差点を渡ってすぐのところにある書店です。いつも多くのお客さんで賑わっています。
住所:東京都渋谷区宇田川町22-1
TEL:03-5784-4900
FAX:03-5784-6480
■アクセス
各線渋谷駅から徒歩1分。スクランブル交差点そば。
■営業時間
10:30〜21:00
■ウェブサイト
http://taiseido.co.jp/
■イベント情報
新刊ラジオ公開録音イベントを5月2日18時30分より開催!
日時:2011年5月2日(月) 18:00開場/18:30開演
会場:大盛堂書店 3階イベントスペース(渋谷駅6-1出口から徒歩1分)
出演:矢島雅弘(ブックナビゲーター)、石橋遊(執筆集団グループ・ニヒト構成員)、他
内容 :新刊ラジオの公開録音。こんなときだからこそ、思いっきり笑って、元気になれる本を読もう!
矢島さんとバシさんが、がっつーり、おすすめ本を紹介しちゃいます!
来場者全員に、ささやかな新刊ラジオグッズをプレゼント。名作文芸ドラマCDなど、スペシャルなプレゼントもご用意しています!
*詳細はホームページ「イベント情報」を参照のこと
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