賞味期限を少し過ぎた牛乳や数日前に作ったおかずが腐ってないか調べるため、匂いを嗅いで確かめた経験がある人は多いはず。しかし、人間の鼻は確かに鋭敏ではあるものの、必ずしも腐ったかどうかを完璧に判別できるわけではありません。新たにカリフォルニア大学バークレー校の研究チームが、人間よりも正確に腐った食品を判別できる「電子鼻」を開発しました。

Scalable multiplexed machine learning gas sensor chips for food classification | Science Advances

https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aec7965

Electric 'nose' can smell when your food's gone bad

https://techxplore.com/news/2026-06-electric-nose-food-bad.html

腐った食品を嗅ぐと、明らかに異常な酸っぱい匂いが感じられることもありますが、食中毒菌の中には匂いを放たないものも存在します。実際にアメリカでは、毎年数百万人もの人々が加熱不十分な食品や腐敗した食品に繁殖する食中毒菌により、病気になっているとのこと。

そこで、カリフォルニア大学バークレー校の電気工学およびコンピュータ科学の博士課程学生であるカーラ・バセル氏らの研究チームは、腐った食品やアレルゲンである食品の匂いを判別できる「電子鼻」を開発しました。

以下が実際に開発された電子鼻です。



電子鼻の中央には16個の微小なガスセンサーアレイが配置されており、各センサーはわずかに異なるガス化合物の組み合わせに反応します。バセル氏は、「これらはデジタル味蕾(みらい)であると考えられます。チップ上の各センサーは提示されたさまざまなガス分子に対し、それぞれ固有の反応を示します。これら16個のセンサーにはそれぞれ異なる感応膜が塗布されており、センサー表面とガス分子間の化学反応を電気信号に変換することで機能します」と説明しています。



研究チームは、イチゴ・ブルーベリー・バナナ・クルミ・ヘーゼルナッツ・カシューナッツ・ピーナッツという7種類の食品について、食品の匂いに対するセンサー応答プロファイルを認識するモデルを機械学習を用いて訓練しました。さらに、新鮮な状態の鶏肉・牛乳・卵や、これらを室温で24時間または48時間放置した際の匂いも認識するように訓練したとのこと。

こうして開発された電子鼻の精度は、平均的な殻をむいたクルミの約100分の1に相当する、0.05gのクルミを嗅ぎ分けられるレベルだと報告されています。しかし、サラダやケーキにクルミなどが入っている場合や、腐った食品が他の食品と一緒に冷蔵庫に入っている場合など、その他のガスが混在する環境での精度はまだテストされていません。

バセル氏は、「このアイデアはガスセンサーの相対的な選択性と、機械学習のパターン認識能力を組み合わせることで、それぞれの食品にどのガスが関連しているのかを特定するというものです。その結果、人間の鼻よりもはるかに感度が高く、はるかに客観的なセンサーチップが実現できます」と述べました。

電子鼻の概念は1980年代から存在していましたが、さまざまな種類の感応膜を1つのチップ上に集積することに課題がありました。今回の電子鼻では、わずか数nmの厚さの層を形成できるカーボンナノチューブを導電材料に使用することで、この課題を解決したとのこと。カーボンナノチューブ製のセンサーを使用することで、室温でも高い感度を示すようになり、ガス感応材料の選択幅が広がったそうです。

以下のDは人工鼻に搭載された各センサーを撮影した光学画像で、Eはそのうちの1つを拡大した画像です。



バセル氏は、「スマートフォンで操作できるセンサーを搭載した『スマート冷蔵庫』は、この種の技術の素晴らしい応用例になると思います。冷蔵庫が『ブロッコリーがもうすぐ腐るから、食べた方がいいよ』とか、『鶏肉は今日が賞味期限だよ』と教えてくれたら、どれほど素晴らしいでしょう」と述べました。