ドナルド・トランプ大統領がオーナーを務めるトランプ・オーガナイゼーションが立ち上げた携帯電話事業「トランプ・モバイル」が、ついに最初のスマートフォン「T1」を一部メディア向けに送付し始めました。今回、アメリカに拠点を置くNBCニュースがT1を手に入れ、修理業者のiFixitに提供して詳細な調査を行いました。

Inside Trump Mobile - YouTube

Teardown Confirms the Trump Phone Is a Gold-Painted HTC U24 Pro - iFixit

https://www.ifixit.com/News/117789/teardown-confirms-the-trump-phone-is-a-gold-painted-htc-u24-pro

Trump Mobile T1 phone nearly identical to HTC device: analysis

https://www.nbcnews.com/tech/gadgets/trump-mobile-t1-phone-nearly-identical-htc-device-analysis-rcna349293

T1は当初「アメリカ製(Made in the USA)」として発表されましたが、数日後にその表現が削除され、「アメリカの価値観を念頭に設計された(Designed with American values in mind)」という表現に置き換えられました。最終的にNBCの下へ届いた箱には「Assembled in the USA(アメリカで組み立て)」という表示が貼られていたとのことです。

T1は2025年に発表されたときから「(2024年に発売された)HTC U24 Proにソックリ」との指摘がありましたが、実際に分解したところソックリどころかほぼ同じ仕様だったようです。

以下画像の左がHTC U24 Pro、右がT1。



これらをCTスキャンにかけてみたところ。T1はフラッシュの位置が少し上ですが、そのほかの見た目はほとんど同じであることが分かったそうです。



スクリーンのピクセルを工業用顕微鏡で確認すると、Samsungが特許を取得した「ダイヤモンドレイアウト」と呼ばれる配列が両機種に採用されていることが判明します。



続いてiFixitは分解を開始。



上がT1で、下がHTC U24 Pro。フレキシブルケーブルが延長されただけで、他はほとんど変わっていないとのことです。



スピーカーは同じで、配置も同じ。わずかに違いがあるとすれば筐体の穴のパターンだけです。



メインボードもカメラの構成も同じです。ただ、メモリとストレージを搭載したマルチチップパッケージに違いがあり、T1はMicron製、HTC U24 ProはSKハイニックス製だったそうです。iFixitは「この違いはささいなもので、おそらくサプライチェーンの制約、関税、その他さまざまな理由で異なっているのだろうと考えられます」と述べました。



極めつけは、HTC U24 Proの基板をT1の基板と取り換えても動作したという点です。T1の特徴であるトランプ・モバイルのディスプレイ画面が一般的なHTCのディスプレイ画面に置き換わって起動したとのことで、NBCのキャスターは「フランケンシュタイン電話だ」と表現しました。



1点、バッテリーだけが大きく異なりました。T1のバッテリーはフィリピン製で、容量は19.35Wh、最大充電速度は30Wです。一方のHTC U24 Proは中国製で、容量は17.23Wh、最大充電速度は60Wでした。最大充電速度の違いは同梱されている充電器にも反映されていて、T1は30W充電器が付属するのに対しHTC U24 Proは60W充電器が付属します。



iFixitは「バッテリーの原材料は中国が圧倒的な優位性と製造能力を確保しているため、家電製品用のバッテリーはほとんどが中国製です。T1にフィリピン製のバッテリーが使われているということは、T1が大量に販売される可能性が低いことを示唆しています」と推測しました。

またiFixitは「T1はフロリダのチームによって組み立てられていると発表されていますが、これはT1がアメリカ製であることを意味しません。連邦取引委員会(FTC)は、製品に『Made in America』と表示するために満たさなければならない要件について非常に明確な基準を設けていますが、一方で『Assembled in the USA』と表示するための要件については、それほど明確ではありません」と付け加えました。

トランプ大統領は相互関税政策を強めてアメリカ国内の製造力向上を図り、その目標の1つとして「iPhoneの国内製造」を模索していると伝えられていますが、実際は供給の問題や人件費・設備投資費の問題で全てをアメリカで賄うのは困難だとされています。

「アメリカ製iPhone」は完全に机上の空論だとの指摘 - GIGAZINE



T1はそんなトランプ大統領の野心を反映した「アメリカ製」のスマートフォンになるはずでしたが、トランプ・モバイルはどの部品がアメリカで組み立てられているのかという質問に回答しておらず、今回の分解調査でも、部品が国内で組み立てられたのか、あるいは加工されたのかは明確には分かりませんでした。

ちなみにHTCは台湾に拠点を置く企業ですが、一部のHTC U24 Proの箱には「Made in China」のラベルが貼られており、台湾の国家通訊伝播委員会(NCC)の認証データベースにはHTC U24 Proの製造元として中国・広東省に拠点を置く広東遠昌電子有限公司(Guangdong Yuanchang Electronics Co., Ltd.)が記載されているとのことです。

HTC U24 Proの価格はおおむね580ドル(約9万3000円)前後で、T1は(バッテリー以外)同じスペックで499ドル(約8万円)です。

iFixitは「少なくとも今のところは、トランプ・モバイルは法外な値段を請求しているわけではありません。同スペックのHTC U24 Proと比較しても適正な価格で、T1を得て失うのは60Wの急速充電とあなたの尊厳だけです」と指摘。内容については「台湾企業が中国企業を利用して製造させたものです。私たちが確認したあらゆる証拠は、T1がHTC U24 Proと同じ工場で製造されたことを示しています」と述べ、「トランプ大統領のスマートフォンは金色に塗装されたHTC U24 Proであることが確認された」と結論づけました。