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日本の安全神話の足元で、資産や資源を狙う窃盗犯罪の性質が大きく変化。個人の思い付きによる衝動的な犯行ではなく、周到な準備と役割分担を伴う「組織的窃盗団」の暗躍が各地で深刻化している。

狙われる対象は、個人の所有する高級車から農家が手塩にかけて育てた農作物、さらには公共インフラを支える設備にまで及んでおり、その手口は日々巧妙化する一方だ。

特に被害が多発しているのが自動車盗。警察庁が公表した2025年の自動車盗認知件数は全国で6386件に達し、前年の6080件からさらに306件増加するなど、上昇傾向に歯止めがかかっていない。

被害件数を都道府県別に見ると、全国で最も深刻なのが愛知県の1051件。次いで埼玉県の756件、神奈川県の649件、茨城県の540件、千葉県の539件と続いており、都市部や主要幹線道路を擁する広域エリアでの被害が目立つ。

多発しているエリアの特徴としては、国道沿いの店舗駐車場や大型ショッピングセンターの駐車場、自動車販売店、コインパーキングなどが挙げられるが、防犯意識が緩みがちな郊外の住宅地も例外ではない。

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外国人を含む複数の人物が共謀

狙われるのは、レクサスやランドクルーザー、アルファードなどの高級ミニバンやSUV、あるいはプリウスやハイエースといった特定の人気車種。車名別盗難台数の状況では、1位がランドクルーザー(1177台)、2位がプリウス(424台)、3位がアルファード(303台)、4位がハイエース(209台)となっており、特定の車種に需要が集中していることが分かる。

これらの車両を盗み出す際、窃盗団は「CANインベーダー」や「ゲームボーイ」と呼ばれる特殊な電子機器を駆使。一晩のうちに複数台の車を鮮やかに盗み去る事例も報告されており、昨年12月には、富山市や射水市の住宅から高級SUV3台、計2900万円相当を盗んだとしてブラジル国籍の男が逮捕される事件も発生した。

警察の捜査からは、外国人を含む複数の人物が共謀し、全国で窃盗を繰り返す大規模なグループの存在が浮かび上がっている。

盗まれた車両の多くは、警察の追跡をかわすために速やかに「ヤード」と呼ばれる解体施設に運び込まれる。そこでパーツごとにバラバラに解体されるか、あるいは車台番号が偽装された上で、コンテナに詰められて海外へ不正輸出されるという。

国境を越えたグローバル化する転売ルートが完全に確立されており、国内での発見を極めて困難にしているのが実態だ。こうした現状に対し、警察は車庫への防犯カメラやセンサーライトの設置に加え、ハンドルロックなどの物理的な固定器具を取り付けるといった多重の防犯対策を強く推奨している。

シャインマスカットや高級梅など農作物も

一方で、組織的窃盗団のターゲットは都市部の工業製品だけではない。農地が広がる地方都市や農村部では、農作物や農業機械、さらには家畜の盗難が深刻な課題となっている。農林水産省の資料によると、近年の農作物窃盗は、シャインマスカットやイチゴ、高級梅といった高付加価値の商品や、牛・豚などの家畜を狙い、事前に何度も下見を繰り返した上で決行される。

街灯が少なく、夜間に人通りの絶える広大な農地は、犯行グループにとって格好の作業場となってしまう。トラックなどの大型車両を用意し、短時間で大量に回収していく手口は、個人の小規模な泥棒とは明らかに一線を画するものだ。

このようにして強奪された農作物の行き先としては、SNSのフリーマーケットアプリを用いた国内での匿名転売や、一部の不正な買い取り業者への持ち込み、さらには海外への密輸ルートの存在が疑われている。

事態を重く見た各自治体やJAは、「防犯カメラ作動中」や「不審車両110番」といった看板を設置。地域ぐるみの警戒態勢をアピールすることで犯行を思いとどまらせる防衛策を急ピッチで進めている。

銅合金で作られた水道メーターも標的

さらに、目立たないインフラ設備をも標的にする動きも加速。全国の集合住宅などで多発しているのが、真ちゅうや青銅といった銅合金で作られた水道メーターの盗難だ。世界的な銅価格の高騰を背景に、リサイクル資源として高値で取引されるため、レンチ一本でわずか1分足らずの間に取り外されてしまう。

静岡県や山口県では短期間に数百から千数百個規模が盗まれるなど、こちらも組織的な関与が濃厚。空き室の管理の盲点を突いた犯行が多く、入居者が気付いた時には生活に不可欠な水が出ないという深刻な被害をもたらしている。

もはや日本国内のどこであっても無防備でいてよい場所などないと言えるほどの状況だが、この“国境なき略奪”の連鎖を断ち切るためには、個人での防犯機器の導入に加え、地域社会での不審車両の通報体制、そして買い取り業者側のモラルと法的拘束力の強化が不可欠となりそうだ。