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「山で置き去りにされたことがある」

米CNNが4月27日、「アルパイン・ディボース(山への置き去り)」と呼ばれる現象を報じ、SNS上で大きな反響を呼んでいる。

CNNによると、ハイキングや登山の途中で、パートナーが、体力や経験で劣る女性を危険な場所に残して立ち去るケースが相次いでいるという。オーストリアでは、登山家の男性が、恋人の女性を雪山に置き去りにして凍死させた事件をめぐり、男性に重大な過失があったことを認め、今年2月に有罪判決が言い渡された。

日本のSNSでも、こうした報道をきっかけに、「山道に置いていかれたことがある」「車のない場所で帰れなくなった」「それが原因で離婚した」といった女性の体験談が次々と投稿されている。

自力で帰れない場所や、生命・身体に危険が及ぶ場所に人を置き去りにした場合、法的責任は生じるのだろうか。清水俊弁護士が解説する。

●ケガしたり死亡したりすれば重い刑事責任問われる可能性

置き去りにしたことで、相手がケガしたり死亡した場合には、二人の関係性や登山の実力差、当時の状況に応じて、過失致死傷罪から殺人罪まで、非常に重い刑事責任を問われる可能性があります。

たとえば、山中に置き去りにした相手が死亡した場合、その場所の状況や、相手の健康状態などにより置き去り行為が殺人の実行行為だと評価されれば、殺人罪の成否が問題となります。

その場合、殺人の故意(殺意)が必要となりますが、相手を死なせる積極的な意思がなくても、「このまま置いていけば死ぬだろうが、それでも構わない」という「未必の故意」があれば殺意として認められます。

仮に殺人罪が成立しないとしても、相手が単に登山の経験が浅いだけでなく、疲労や体調不良で自力歩行や、他の人の助けなしでは生存できないような状態に至っていた場合、要保護状態にあったにもかかわらず、あえて置き去りにした場合には保護責任者遺棄致死罪の成立も考えられます。

●故意でなくても過失が問われる可能性

殺人や保護責任者遺棄といった、いわゆる故意犯が認められない場合でも、過失(不注意)による責任は免れません。

たとえば、業務上過失致死傷罪です。「業務」とは、「社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為」と比較的広く解釈されており、娯楽や趣味であっても、「他人の生命・身体に危害を加える恐れ」があれば「業務」に該当します。

そのため、プロの登山家やガイドや登山サークルのリーダーなど、他の人を引率する立場で年間に何度も登山を繰り返している経験者が初心者を置き去りにしたような場合には業務上過失致死傷罪が検討されます。

そうした業務性が認められない場合でも、過失致死傷罪や重過失致死傷罪の成否が問題となります。

置き去りにすれば遭難することが予見できたにもかかわらず、適切な措置を怠った不注意により相手を死傷させた場合の罪です。

わずかな注意を怠れば死傷に直結するような環境下での置き去り行為は、注意義務の違反が著しいとしてより重い重過失致死傷罪に問われる可能性があります。

【取材協力弁護士】
清水 俊(しみず・しゅん)弁護士
2010年12月に弁護士登録、以来、民事・家事・刑事・行政など幅広い分野で多くの事件を扱ってきました。「衣食住その基盤の労働を守る弁護士」を目指し、市民にとって身近な法曹であることを心がけています。個人の刑事専門ウェブサイトでも活動しています(https://www.shimizulaw-keijibengo.com/)。
事務所名:横浜合同法律事務所
事務所URL:https://www.yokogo.com/