【初めてのスマホ】「スマホでの盗撮が流行っているらしい」17年間服役のわいせつ常習犯が犯した愚行
盗撮と侵入を繰り返す
「(女性の)無防備な姿を見たり、鍵や個人情報を入手することで、支配したような気持ちになっていました」
女性の部屋に侵入して裸を盗撮したり、部屋の鍵を盗んだりを繰り返した57歳の男は、裁判で動機をこう述べるのだった。’26年5月11日、東京地裁で東京都台東区の清掃業・鈴木将博被告(57)の第4回公判が開かれ、結審した。
鈴木被告は’25年11月4日、性的姿態等撮影と住居侵入の疑いで警視庁綾瀬署に逮捕された。’25年7月に都内のアパートの敷地内に入り、窓の隙間から住人のAさんの裸をスマートフォンで動画撮影した疑いだ。
「実は鈴木被告は’25年10月に一度、逮捕されています。Aさんの部屋に侵入して、体を触るなどのわいせつな行為をしようとした不同意わいせつ未遂などの疑いです。その後、処分保留で釈放されましたが、鈴木被告のスマホからAさんを含む女性3人の裸を撮影した動画が発見されたことで再逮捕となったのです。そしてその後、逮捕・起訴を繰り返すことになりました」
公判で明らかになったのは、「鍵が開いていたから部屋に入った」「窓の隙間から女性の裸が見えたので動画を回した」という、夜間に徘徊しながら場当たり的に犯行を繰り返す鈴木被告の「常習性」だった。
検察官が読み上げた起訴状や冒頭陳述などによると、被害者は起訴された順にA〜Dさんの女性4人。
’25年7月、鈴木被告は2回にわたってAさんが住むアパートの敷地内に侵入し、窓の隙間などからAさんの裸を動画撮影。同年8月には無施錠だったBさんの部屋に侵入して鍵を1本、盗んでいる。そして同年9月、今度は宿泊施設の窓の隙間からCさんの裸を動画撮影。さらに’24年11月、Dさんの部屋に侵入して鍵を盗んだ後、Dさんの裸を動画撮影している。
逮捕直後は黙秘していたが、鈴木被告はこれら性的姿態等撮影と住居侵入、窃盗の3つの罪を公判のなかで「間違いありません」と認めている。
刑務所の中で聞いた“スマホの情報”
Bさんへの犯行は、BさんとBさんの妹の運転免許証を撮影した画像がスマホ内に保存されていたことから発覚。家宅捜索で発見されたBさんの部屋の鍵には、鈴木被告によってBさんの氏名が書かれたタグがつけられていたという。
Bさんの供述調書には嫌悪感や恐怖がつづられていた。
「鍵を替えずにいたら、犯人に自宅に入られ、さらに被害に遭っていた可能性があったかと思うととても怖いです。犯人がわざわざ私の名前を書いたタグを付けたのかと思うと、本当に気持ち悪いです」
鈴木被告は強姦4件などの罪で’06年から17年間服役していた。’23年11月30日に仮出所したが、それから1年足らずでDさんの事件を起こしている。「出所後、なぜ短期間で事件に及んでしまったのか」という弁護人の質問に、鈴木被告はこう答えた。
「仕事のストレスや、出てきてからの何とも言えない孤独感で、悪い習癖が出てしまいました。夜に1人で出歩くようになって、事件に及んでしまったんだと思います」
「悪い習癖」とは窓から室内を覗いたり、無施錠の家があればとりあえず入ることだという。Dさんの事件では部屋に入って鍵を盗んだ際、偶然、裸を目にしたので動画撮影したと説明した。そして冒頭のように「支配したような気持ちになった」と述べたのだった。
「合鍵を使って再侵入とか、そういう計画を立てていたわけではありません。被害者の方々の家の鍵を盗んで持っていて、再侵入しようと思えばいつでも入れる状態に自分があるっていうことに、支配しているような感覚を覚えるということです」
鈴木被告は出所して初めてスマホを持ったという。前回、収監されたのは20年も前で当時はまだスマホが普及していなかったからだ。「刑務所の中でも、スマホでの盗撮が流行っているとか、ある程度の情報は耳に入っていた」と鈴木被告は述べた。しかし、どのタイミングで女性の裸を動画撮影しようと思いついたかは「ちゃんと覚えてない」と供述した。
「自分でも不思議です」
論告求刑で検察官は「本件各犯行はいずれも性的な目的で行われたものであり、この点は前科と共通しています」と指摘。「常習性が認められることに加え、性犯罪に対する規範意識が著しく鈍麻していると言わざるを得ない」などとして「懲役5年」を求刑。
一方、弁護人は「性犯罪という、同種の犯行を繰り返した点は非難せざるを得ない」としながらも、「被告人は深く反省している」「今後、専門のクリニックで治療することを約束している」などとして、「専門的な支援で再犯防止に取り組む機会を与えたうえで、実際に社会に復帰して、被告人自身がその罪の重さと向き合い、再犯を防止していくことが必要だと考えています」と述べ、「懲役1年6ヵ月が相当」だと述べた。
公判で、鈴木被告は犯行に至った経緯を「たまたま鍵が開いてて中に入ってしまって、たまたまそういう(女性が裸になっている)場面だったので、録画してしまった」と繰り返していた。
検察官が「犯行時に“また刑務所に入ることになるかも”という考えはよぎらなかったのか」と質問すると「なぜ、そう考えなかったのか自分でも不思議です」と答えた。
「外部のサポートの力を借りて、今度こそ悪い習癖を断ち切りたい」と約束した鈴木被告。出所してわずかの間に再犯を繰り返した彼に、司法はどのような判決を下すのだろうか。
判決は5月27日に言い渡される予定だ。
取材・文:中平良
