有毒植物で深刻な汚染地からレアアースを回収する試み
毒を食らわばレアアースまで。
ジスプロシウムという名前に聞き覚えあります? ピンとこない人がほとんどだと思います。私にはまったく覚えがありません。元素番号66番のレアアースで、みなさんがこの記事を読めている理由のひとつだったりするかもしれませんよ。
ジスプロシウムは、磁力にすごく敏感なのが特徴。おかげでコンピューターのハードディスクに欠かせない部品となっています。さらに、風力タービン用の発電機や電気自動車(EV)の駆動モーターなどにも使われています。
植物でレアアースを回収する技術
世界におけるジスプロシウム供給の大半は、中国南部やミャンマーにあるイオン吸着型粘土鉱床から、環境にかなり負担をかける方法で採掘されています。
しかし今回、ノースカロライナ州立大学の生化学者チームが新しい測定技術を発表しました。チームは、北米原産の一般的な植物からのレアアース回収を可能にする、より迅速で利便性の高いレーザー測定システムを開発したとのこと。
この方法が広まれば、貴重なレアアースの調達が経済と生物圏の双方にとって有益な「ウィンウィン」な話になるかもしれません。
同大学の生化学者であるColleen Doherty氏は、声明のなかで「一部の植物種は、汚染された土壌からレアアース元素を取り込み、その組織内に濃縮する能力を持っています」と説明しています。
同氏はさらに、レアアースは実のところそんなにレアではないと指摘し、「ただ単に、純粋な形で自然環境中に高濃度で存在するのがレアなだけなんです」と述べています。
深紫外線が照らすヨウシュヤマゴボウ
Doherty氏のチームは、北米由来の雑草種であるヨウシュヤマゴボウ(別名アメリカヤマゴボウ)を用いて、通常は深刻な汚染地として指定されているスーパーファンド用地のような土地からレアアースを回収する能力を調査しました。
チームは、重金属を大量に含むことが多い一般的な廃棄物である酸性鉱山の排水汚泥にヨウシュヤマゴボウを植えました。
「この『植物による採掘』の技術を最大限に活用するために、私たちは対象の植物に含まれるレアアースを検出し、その濃度を測定する方法を見つけたいと考えました」とDoherty氏は述べました。
そこで目をつけたのが、蛍光分光法でした。この手法は、深紫外線レーザーを用いた高速スキャンを行ない、植物から放出される光の波長を測定することで、植物内部の化学成分を特定します。この方法の利点は、比較的無害なところ。
たとえば、誘導結合プラズマ質量分析法のような従来の方法みたいに、植物サンプルを文字通り灰になるまで燃焼させて成分を特定するような乱暴なことはしないそうです。
Doherty氏によると、蛍光分光法は非常に迅速に実施できるそう。同氏はまた、「植物を破壊せずに検査できるため、同じ植物を繰り返し検査できる点が非常に魅力的です」と説明します。
そして、この継続的な非破壊式のモニタリングによって、「レアアースの濃度が最適になるタイミング」で植物を収穫できるようになると指摘しました。
また、学術誌Plant Directに掲載された研究論文によると、蛍光分光法は収穫時期の決定以外にも役立つとのこと。
「代替となる非破壊的なスクリーニング手法」を開発することで、「レアアース元素の蓄積で最も高いポテンシャルを持つ植物の特定に役立つ」とチームは記しています。
重金属を栽培せよ
植物を用いて土壌から金属を抽出するという概念(技術的には「Phytomining: ファイトマイニング」と呼ばれる。「植物を用いた採掘」の意)そのものは、別に新しいものじゃありません。少なくとも1970年代から存在していたといいます。
しかし、最近はヨーロッパやアフリカで大規模なプロジェクトが行なわれているにもかかわらず、この概念を実現可能にするためには、依然としてノースカロライナ州立大学のプロジェクトのような基礎的な研究開発が多く必要とされています。
Doherty氏の共同執筆者のひとりで、ノースカロライナ州立大学の電気・コンピュータ工学者であるMichael Kudenov氏によると、研究チームは持続可能な技術やその他の先進的な電子機器に使用されるレアアースについても、応用する可能性を探り、一定の進展が見られたといいます。
Kudenov氏は、声明のなかで「実験装置に小さな変更を加えるだけで、この手法はエルビウムやネオジムにも効果があるとかなり強い確信を持っています」と述べています。
ネオジムは多くのハイブリッド車や電気自動車の部品として使用されています。
同氏はさらに、「テルビウムやユーロピウムといったレアアースに対しても、この手法が有効であると確信できるだけの予備的な研究も実施してきました」と付け加えました。
テルビウムは、フラットスクリーンや海軍ソナー、光ファイバーなどに使用されています。
Doherty氏は、この技術の可能性について、声明で次のように語っています。
私たちは、製造業にとっても、環境にとっても、この手法が本当の意味で大きな違いをもたらすことができると楽観視しています。
スーパーファンド用地は、深刻な汚染が未処理のまま放置されているケースが多く、浄化が必要とされながら、作業は遅れがちです。周辺の地域社会は汚染による健康被害などが問題になっています。汚染地の浄化とレアアースの回収を抱き合わせにして、そこから得た経済的利益を地域社会に還元できれば、一石三鳥になります。
そして、その「有毒な土地」を浄化する主役が、根にも実にも葉にも毒を持っているヨウシュヤマゴボウなのがなんとも示唆的です。
Source: Nature, ノースカロライナ州立大学, EPA, USGS, Wiley, NewScientist, Fast Company, Dhit

