まるで不死鳥のような星形成領域「AFGL 5180」 ハッブル宇宙望遠鏡が観測
こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した星形成領域「AFGL 5180」。ふたご座の方向、約6500光年先にあります。

赤外線の観測データを赤色やオレンジ色に着色することで現れた複雑な雲と、その隙間からあふれ出す無数の星々の輝き。この画像は、宇宙空間に漂うガスと塵(ダスト)が高密度に集まり、新たな星々が生み出されている星形成領域のひとつを捉えています。
画像の中心付近のひときわ明るく輝いている場所では、太陽の8倍以上の質量がある大質量星が、周囲の物質を大量に取り込みながら成長しつつあります。ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によると、この若い星は強力な一対のジェット(細く絞られたガスの高速な流れ)を噴出しており、画像の右上と左下に向かって周囲の物質を激しく吹き飛ばすことで、雲の中に空洞を作り出しているといいます。
生まれたばかりの星が放つ光の大部分は、この空洞を通り抜けて地球まで届いています。暗黒の雲を切り裂くように漏れ出たその輝きを、ESAは「嵐の雲を突き抜けて海面を照らす灯台の光」にたとえています。
塵のベールを透視する赤外線観測
「星のゆりかご」とも呼ばれる星形成領域には、ガスとともに星の材料となる塵が豊富に存在しています。ただ、塵の多さは観測する上では大きな壁となります。可視光線は塵に吸収・散乱されやすいため、星形成領域の内部を覗き込むのが困難なのです。
そこで活躍するのが、赤外線を用いた観測です。赤外線は塵にさえぎられにくい性質があるため、分厚い雲の奥深くに隠された若い星々の姿を捉えることができます。ハッブル宇宙望遠鏡によるAFGL 5180の観測では「WFC3(広視野カメラ3)」による可視光線と赤外線での観測が行われており、その内部構造を従来よりも鮮明に描き出すことができました。
このような星形成領域に広がる雲の中には、はるか昔に太陽系がどのようにして形成されたのかを解き明かすための手がかりが隠されていると考えられています。遠く離れた星のゆりかごを観察することは、私たち自身のルーツをたどる旅でもあるのです。
冒頭の画像はESA/Hubbleから2021年3月8日付で公開されました。
本記事は2021年3月10日公開の記事を再構成したものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
関連記事ダイナミックな星形成領域 ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた輝線星雲「干潟星雲」の中心部3世代の星々が作り出した光景 ハッブル宇宙望遠鏡が観測した星形成領域「LHA 120-N 11」若き星々が集う星形成領域 ハッブル宇宙望遠鏡が観測した“ペルセウス座”の「NGC 1333」参考文献・出典ESA/Hubble - Through the Clouds
