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日本の大型タンカー「IDEMITSU MARU」が、ホルムズ海峡を通過しました。原油を積んだ日本関係の船舶では、初めてとみられています。ここからは、イラン側の思惑について、中東情勢に詳しい慶応大学・田中浩一郎教授に、そして、交渉に関与した日本政府の動きについて、政治部官邸担当・渡邊翔記者に聞きます。

■通航料もとらず…イラン側はなぜ海峡通過を許可?

まず、海峡通過の経緯を整理します。「IDEMITSU MARU」は、サウジアラビアで原油200万バレルを積んだ後、日本時間27日深夜、海峡方面へ移動を始め、イランの許可を得た上で、29日未明には海峡を通過し、オマーン湾に“脱出”しました。日本には5月中旬に到着予定だということです。

田中教授、イラン側は通航料もとらずに許可を出したということですが、なぜ、許可を出したと考えられますか?

中東情勢に詳しい慶応大学・田中浩一郎教授
「ひとつは、アジアの国々で、まあ日本もそうなんですけれども、イラン側といろんな形で連絡をとっていった国に関しては、これまでもタンカーの航行が認められていたケースがありました。それに該当するんだとも思います。また、日本の立場というんでしょうか、これまでいろんな形でイランとつながりを維持してきたということもプラスに働いていると思いますし、また、出光興産という、かつて70数年前にイランからの石油製品を輸入したようなケースも、ここでは大きく取り上げられたんだとみています」

歴史的なつながりも、今回のこの「IDEMITSU MARU」の通行には影響があったとみているということですね。

■「日章丸事件」駐日イラン大使館がSNS投稿 思惑は…

森圭介アナウンサー
「1953年の日章丸事件について、駐日イラン大使館がSNSに投稿した文言の中で『友情の証し、遺産だ』と、これ『IDEMITSU MARU』が通過するタイミングで投稿しているんですが、どういった思惑があると思われますか?」

田中浩一郎教授
「日本とイランとの間の長い間の友好関係とされるものにアピールしたい、ということだと思うんですね。また、この出光の船、日章丸がかつてイランから石油製品を運んで帰ってきたんだということは日本とイランの関係を語る上で、日本の関係者にも一番よく知られている事案でもありますので、それを使うことによって、イラン側は、日本に対していろんな意味で優遇や配慮をしているんですよということ。あるいは、70数年前にイランがある意味でいうと助けてもらったので、今回は日本に対しても便宜を図ります、そういうことをやはり訴えたいんだと思っています」

■“日本船”残り約40隻も海峡通過できる?

桐谷美玲キャスター
「ペルシャ湾に残っているおよそ40隻の日本関係の船舶も、この『IDEMITSU MARU』と同じように海峡を通過できるようになると考えていいでしょうか」

田中浩一郎教授
「そこについては、まだ何ともいえないと思います。この『IDEMITSU MARU』だけでなく、他の国の船舶に関しても、より多くの船が航行を認められているというような環境であれば、日本の関係している船舶もおおむね航行が自由になったとみなすことができると思うが、現状ではまだそれほど広がっていないようなので、まだ様子をみていかなければいけないのではないかと思います」

■イランとの交渉に日本政府関与 水面下の動きは

続いて、政治部・渡邊記者に日本政府の動きについて聞きます。

――イランとの交渉に日本政府が関与したと。水面下ではどのような動きがあったんでしょうか?

日本政府はこれまで、高市首相とイランのペゼシュキアン大統領との電話会談も含め、さまざまな機会を捉えてイラン側への働きかけを続けてきました。

政権幹部のひとりは「ずっと話をしていた、その交渉の成果だ」と話しています。また、複数の関係者が「イラン側が『IDEMITSU MARU』を選んだ」という趣旨の話をしています。出光は日本とイランの友好関係の歴史を象徴する企業ですから、そのタンカーが「通過第1号」になったことも、両国の調整をうかがわせます。

――ホルムズ海峡は今、アメリカ側も海峡を「逆封鎖」している状態だと思います。日本政府はトランプ政権とも調整したんでしょうか?

そもそも、アメリカが封鎖の対象にしているのは「イランの港を出港する船」なので、「IDEMITSU MARU」は該当しません。ただ、アメリカとイランが敵対する中ですから、日本政府関係者は「もちろんアメリカとも調整・連携した」と話しています。

――そして、ペルシャ湾内に留め置かれているそのほかの日本船舶ですが、今後、同じようにホルムズ海峡を通れるようになるんでしょうか?

政権幹部のひとりは、「IDEMITSU MARU」だけが特別だったわけではないとの認識を示しています。つまり、今後も日本関係船舶がホルムズ海峡を通過できる可能性があるとみているということです。

この幹部は、ホルムズ海峡から原油が再び輸入できる道が開ければ、「国内の雰囲気も変わってくるだろう」と話しています。経済への不安も和らぐのでは、という見方ですね。ただ、停戦合意が破られるなどすれば、事態が振り出しに戻ります。日本としては引き続き、予断を許さない状況が続きます。

ここまで渡邉記者に伝えてもらいました。

■「IDEMITSU MARU」だけ…イラン側の考えは

――田中教授、政権幹部のひとりの「IDEMITSU MARU」だけが特別だったわけではないという話もありましたが、この点、田中教授はどう受け止めますか?

田中浩一郎教授
「もちろんそうあってくれればいいんですけれども、何よりも正常化ということを目指す、あるいはそう考えるのであれば、ペルシャ湾の中に留め置かれている船が外に出てくるということだけではなく、外で滞留している、ペルシャ湾の中に入れない状態になっている船も中に入って、そして原油やLNGなど他の貨物なども積んで、改めて自由に出てくることができるんだという、この出入りが保証されて初めて正常化といえます。果たしてそこまでの状態に今近づいたのか、まだちょっと模様眺めのところはあると思いますし、何よりも停戦が破られてしまった時に、また元の木阿弥になるのではないかという、そういう懸念はまだ残っているといえます」

――最後にもう一つ、田中教授、今アメリカとイランの交渉というのはなかなか先行きが見通せない状況にあります。そういった中で今日本のこの船舶、原油を積んだものを通したというのはどう捉えたらいいでしょうか。

田中浩一郎教授
「人道的な配慮もやはりあるんだと思うんですね。船舶に関係している船員などが長い間、湾の中で留め置かれていることで、かなり無理をしていると思います。これをまあ部分的に解放するという意味もあるでしょうし、原油やLNGなどを受け取っている国にも色々なところで物品が足りなくなったりしてショートを起こしていますので、それを危機的な状況にまでは至らせないぐらいのところで、一定の猶予を与えているという感じにもみえます」

――田中教授の中では、このイランとアメリカの情勢というところでは、先行きはどのようにみていますか?

田中浩一郎教授
「まだまだ予断を許しません。やはりアメリカ側が攻撃態勢を強化している、特に原子力空母が3隻態勢になっている時は、我々、中東専門家の間では必ず戦争になるといわれていますので、まあもう既に戦争にはなっているんですが、大規模攻撃が改めて開始されてもおかしくない、この状況はまだ変わってないとみています」

――ありがとうございました。ここまで、慶応大学・田中浩一郎教授、そして渡邊翔記者とお伝えしました。