痛風対策で「イクラは控えています」の落とし穴。魚卵より恐るべき“意外な飲み物”とは
診察室で、健康診断などで「高尿酸血症」を指摘された男性(ほとんど男性です)からよく聞く言葉です。
痛風は、血液中に増えた尿酸が結晶になり、関節に強い炎症を起こす病気です。足の親指の付け根が赤く腫れ、靴下が触れるだけでもつらく文字通り、風が当たるだけで痛い。あの痛みを思えば、「とにかくプリン体は避けなければ」と考えるのは自然なことです。また尿酸値が高い状態を放置すれば、動脈硬化が進行し心筋梗塞などの重大な心血管疾患リスクが上昇するため、痛風発作後はもちろん、慢性的な高尿酸値への対応が重要であるのは間違いありません。
◆卵と魚卵は、イメージほど「高プリン体」ではない
そもそもプリン体は、細胞の核(核酸)や、エネルギー物質(ATP)などに含まれる成分。ですので、細胞がぎっしり詰まった食品や内臓、また水分が飛んで成分が凝縮された乾物、だしになるような旨味の強い食品に多い傾向があります。
では、鶏卵はどうだろうか? 実は、鶏卵は、全体で1つの巨大な細胞のようなもので、肉や魚のような「細胞の集合体」ではない。そのためプリン体は非常に少なく、食品中のプリン体を調べたデータでは、なんと鶏卵は100gあたり0.0mgでした。少なくとも、痛風対策のために卵を最優先で避ける理由は乏しいと言えます。
魚卵も、ひとまとめに「危険」とみなすのは危険。同じデータでは、イクラは100gあたり3.7mg、すじこは15.7mg、数の子は21.9mgでした。高尿酸血症や痛風の食事療法では、食事由来のプリン体は1日400mg未満が一応の目安とされています。この数字で見れば、イクラや数の子を少し食べた程度で、それだけが大きな問題になるとは考えにくいことが分かります。
ただし、魚卵は全部同じではありません。タラコは120.7mg、明太子は159.3mgで、イクラより多めです。とはいえ、毎日山盛りで食べるなら危険ですが、通常の食べる量を考えれば、これも危険視しすぎる必要はないように思えます。
むしろ注意したいのは、白子やレバー、煮干し、かつお節、干物のような食品。たとえば白子は100gあたり305.5mgと高値でした。同じ魚介系でも、こちらのほうがよほど警戒すべきです。
◆尿酸値は食事だけで決まるわけではない
もちろん、「では食事は関係ない」というわけではありません。
実際、約4万7000人の男性を12年間追跡した研究では、肉や魚介類の摂取が多い人の痛風リスクは1.4〜1.5倍に増える一方、乳製品の摂取が多い人は痛風発症のリスクが半分にまで低下しました。特にスキムミルクなどの低脂肪乳製品でその影響が顕著でした。逆に、いわゆるプリン体の多い野菜や総蛋白摂取は、明確なリスク上昇にはならないことも分かりました。
ただ、「尿酸値は食事だけで決まる」と考えるのは正確ではありません。世界的な医学誌『BMJ』に掲載された約1万7000人の解析では、63種類の食品を考慮しても、尿酸値の個人差を説明できたのは4.29%だった一方、遺伝子(体質)による影響は23.9%であり、つまり尿酸値が高い、低いは、食事より体質による影響が圧倒的に大きいことが分かります。
尿酸値という数字は、食事だけでなく、遺伝、腎機能、体重、飲酒、環境など複数の要因で決まります。「痛風は食生活が乱れている人に生じる」と考えるのは短絡的な考えかもしれません。
ちなみに同じ解析では、ビール、蒸留酒、ワイン、ソフトドリンク、肉類などは尿酸値が高い方向に、卵、スキムミルク、チーズなどは低い方向に関連していました。
