エベレストのルートを塞ぐ氷河/Gelje Sherpa

(CNN)世界最高峰エベレストのベースキャンプ。標高5300メートルを超える地点に、シェルパを含む数百人の登山者が集結している。春の登山シーズンの幕開けとともに山頂を目指す登山者たちだが、一つ問題が浮上している。巨大なセラック(氷河の塊)が山頂までのルートを塞いでいるのだ。

現状、登山者たちはセラックが徐々に崩落して道が開けるのを待つしかない状況に陥っている。

「アイスフォール(氷瀑<ひょうばく>)・ドクター」と呼ばれる高山作業の専門家たちはすでに数週間前から現地入りし、悪名高いクンブ氷瀑でのセラックの位置をマッピングする作業に従事している。氷河が急峻(きゅうしゅん)な地形を形成するクンブ氷瀑は、エベレストルートの中でも最も危険なセクションの一つとされる。

シーズン開始時、通常であれば「ドクター」たちが、登山者たちのためにロープや梯子(はしご)などの装備を設置してルートを「整備」する。しかし今年は、不安定なセラックのため、まだそれができていない。

「ドクターたちはあらゆる手段を尽くしている。最新技術、3D画像、ドローン(無人機)など、あらゆるものを使って、セラックが実際に崩落するタイミングや可能性、そして安全に登頂できる状態になるかどうかを正確に把握しようとしている」。エベレスト登頂を目指す登山者のガイドに携わるAGAアドベンチャーズの共同オーナー、アドリアナ・ブラウンリー氏はそう語った。

「塩を使うなど、いくつかのアイデアが出ているが、自然の成り行きに任せるしかない」「山がノーと言えば、それはノーだ」。ブラウンリー氏はそう付け加えた。

こうした理由から、ベースキャンプは日に日に登山者が増える状況となっている。ルートが最終的に開通した場合、山頂付近は登山者でごった返す恐れがある。

CNNはネパール観光省と、アイスフォール・ドクターを監督するサガルマータ汚染管理委員会にコメントを求めた。

「とにかく山を尊重する」

警戒すべき理由は十分にある。過去にはセラックが致命的な災害を引き起こしてきたからだ。

2014年にはクンブ氷瀑の肩部にあった巨大なセラックが崩落し、雪崩が発生。登山シーズンに向けてルート整備をしていた10人以上のシェルパが犠牲となった。当時、これはエベレストにおける単独事故として最悪の惨事だった。翌年、地震によって再び雪崩が発生し、同様の悲劇が繰り返された。

それからわずか数年後の2019年秋、登山家のギャレット・マディソン氏は、クンブ氷瀑で発生した別のセラックによって危険な状況になったため、エベレスト登山を断念した。

事態は氷塊の上をただ歩けばいいというほど単純なものではない。AGAアドベンチャーズの共同創設者で、以前はアイスフォール・ドクターとしても活動していたゲルジェ・シェルパ氏は、集団で氷瀑を歩くとその振動でセラックが不安定になる可能性があると説明する。

シェルパはクライアントを山頂まで案内しながら、装備や物資の運搬も手伝うことが多い。そのため、危険な状況下でも急いだり走ったりすることはできない。

気候変動もまた、リスクを高めている。シェルパ氏は24日、ベースキャンプからCNNの取材に応じ、「私がアイスフォール・ドクターだった頃は問題がなかった。氷瀑内部の温暖化が今ほど進んでいなかったからだと思う」と語った。

ベースキャンプの人々は、セラックが自然に崩壊することを期待している。崩壊時期は不明だが、ブラウンリー氏は慎重ながらも楽観的な見方を示す。「状況は良くなっているように見える。この後のことは時が経ってみないと分からないが」

セラックが崩落した後も、次の課題が生まれる。すべての登山者が同時にルートを登り始めることで起きる混雑を回避しなくてはならない。

4月15日現在、ネパールは春季シーズン向けのエベレスト登山許可証を297枚発行している。国内の全山岳地帯で発行された許可証の合計は700枚となっている。

AGAアドベンチャーズのブラウンリー氏も、登山隊全体に不安感が漂っていることを認める。しかし最も重要なのは、登山会社同士が協力し、戦略を立てることだと強調。「そうすれば、行列ができる事態は可能な限り避けられる」と述べた。

「こういうことは起こり得る。一番大切なのは、とにかく山を尊重することだ」(ブラウンリー氏)