(※写真はイメージです/PIXTA)

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内閣府男女共同参画局の調査によると、女性の8割以上、男性の7〜8割が「家事や育児が女性に集中していること」が、女性の活躍が進まない要因の一つだと考えているといいます。こうした認識が広がる一方で、家庭内の役割分担は大きく変わっていないケースも少なくありません。都内で暮らすダイスケさん(仮名・45歳)も、その一人です。年収1,000万円の会社員で、妻のミカさん(仮名・42歳)と小学生の長男との3人家族。一見、安定した家庭に見えますが、ダイスケさんの何気ない一言が、夫婦関係を揺るがすことになりました。

「一馬力で家族を養っている」が自慢の夫

「うちは俺が稼ぐから大丈夫だろ」

そう語るのは、都内のメーカーで働く会社員のダイスケさん(仮名・45歳)。年収は約1,000万円。妻のミカさん(仮名・42歳)、小学4年生の長男との3人暮らしです。

ダイスケさんは北陸地方の出身で、長男として育ちました。父は外で働き、母は専業主婦として家庭を支える。そんな家庭環境のなかで、「一馬力で家族を養うのが当たり前」という価値観を自然と身につけてきました。

実家に帰れば、両親からは「ダイスケは大したもんだ」と褒められる。自分の役割に疑問を持つことは、これまでほとんどありませんでした。

一方、ミカさんは結婚前、正社員として働いていましたが、出産を機に退職。以降は家事と育児を一手に担いながら、パートで年収120万円ほどを稼いでいます。実際にはミカさんの収入もあるものの、ダイスケさんの意識としては「ほぼ一馬力」で家庭を支えているつもりで、家事や育児にはほとんど関わってきませんでした。

「世帯年収」で見えた友人一家との“差”

転機となったのは、学生時代の友人たちとの飲み会でした。

友人たちの多くは共働きで、夫の年収はダイスケさんより低いものの、妻も同程度に稼いでいるため、世帯年収ではダイスケさんの家庭を上回っているケースがほとんどだったのです。

「子どもの習い事も増やしているし、旅行にもよく行っているみたいで……正直、余裕がありそうに見えました」

長男の教育費もこれから本格的にかかるタイミング。どこかで焦りを感じていたダイスケさんは、帰宅後、何気なくこう口にしました。

「お前もフルタイムで働いてくれれば、もっと楽できるのに」

42歳妻が爆発したワケ

その一言に、ミカさんの表情が変わりました。

「私だって、正社員を辞めたくなかった」

これまで強く不満を口にしたことのなかったミカさんが、堰を切ったように話し始めます。

「でもあなた、仕事ばかりで家庭のことに興味なかったよね? お義母さんも当然のように『ミカさんは結婚したら仕事をお辞めになるんでしょう?』って言っていたよね。あなたはまるで他人事だった。私、それ、まだ忘れてないから。子供も2人目を作らなかったのはなるべく身軽にしておきたかったから。いつでも別れられるようにね」

家事も育児も義実家とのやりとりも、ほぼ一人で担ってきた10年。その積み重ねが、一気に噴き出した瞬間でした。妻から「離婚」の一言が出たのは初めてでした。ダイスケさんは、その夜は一晩中、眠れませんでした。

「それはお前が悪い」友人の一言

後日、この出来事を友人に話したダイスケさん。しかし返ってきたのは、厳しい一言でした。

「いや、それはお前が悪いだろ」

さらに、友人はこう続けます。

「うちも共働きだけど、妻は管理職でかなり大変だよ。だから時々、家事代行も頼んでいるし、子供の塾の送り迎えは俺がやってる。お前のところは全部奥さん任せで、残業も思いっきりできて、こうして飲みにも来られてるんだろ?」

そして最後に、こう付け加えました。

「少しは感謝したほうがいいと思うぞ。しかもミカさんはもともと仕事が好きなタイプだっただろ。本当にいつか捨てられるかもな」

その言葉に、ダイスケさんは何も言い返せませんでした。

女性活躍が進まない理由の一つに「家事・育児の負担」

2023年に内閣府男女共同参画局がまとめた調査によると、2022年の就業者数は女性が3,024万人、男性が3,699万人でした。女性の就業者数は、2012年からの10年間で約370万人増加しています。

かつては、出産・育児期に女性の就業率が大きく低下する「M字カーブ」が指摘されてきましたが、近年はその傾向が緩やかになりつつあります。

一方で、女性の年齢階級別の正規雇用比率は、25〜29歳の59.7%をピークに低下し、30代・40代では非正規雇用の割合が高くなる傾向が見られます。

同資料では、「出産を機に退職したり働き方を変えたりしたあと、育児期を経て非正規雇用として就業するケースが多い」と指摘。また、女性の8割以上、男性の7〜8割が「家事・育児などが女性に集中していること」が、職業生活における女性の活躍が進まない理由の一つだと考えている、としています。

お金で評価されない労働を担ってきた妻

ダイスケさんの家庭は、収入だけを見れば決して低い水準ではありません。

しかし今回の出来事で浮き彫りになったのは、「収入」では見えない負担でした。

家事、育児、学校対応、日々の生活管理、そして厄介なダイスケさんの義実家とのやりとり。ミカさんはこれらを一人で担い続けてきました。

しばらくの沈黙のあと、ミカさんは静かに言いました。

「息子も小4だし、中学受験にも興味があるみたいなの。私も紹介予定派遣で働こうと思っている。そうなったら、あなたにも家事をお願いすることになると思う」

少し前のダイスケさんであれば、この言葉を受け流していたかもしれません。

しかし今回は違いました。

「今まで、君の負担も君がどうしたいかもちゃんと聞いてこなかった。悪かったと思っている。これからは、一緒に話し合って決めていきたい」

その言葉に、ミカさんはすぐに答えませんでした。しかし、これまでとは違う“会話”が始まったことだけは確かでした。

[参考資料]
内閣府男女共同参画局「女性活躍・男女共同参画 に関する現状と課題」