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住宅価格の上昇が続くなか、「ペアローン」の利用が広がっています。一方、収入の変化や離婚といった想定外の出来事により返済が困難となるなど、ペアローンにはいくつかの注意点も存在するようです。40歳共働き夫婦の事例をもとに、ペアローンのリスクと予防策についてみていきましょう。

住宅価格高騰で注目される「ペアローン」

近年、都市部を中心に住宅価格の上昇が続いています。こうしたなか、共働き世帯の増加もあり、ペアローンを組む夫婦が増えていることはご存じでしょうか。

ペアローンとは、1つの住宅に対して夫婦それぞれが別々に住宅ローンを契約する方法です。双方が主たる債務者となり、互いに相手の連帯保証人となります。

三井住友トラストの調査では、1990年までは6.8%とごくわずかだったのに対し、2021年以降住宅ローン契約者の23%がペアローンを利用しているようです。共働き世帯の増加に伴い、今後も利用者はさらに増えていくと見込まれています。

[図表1]単独ローンとペアローンの利用比率 出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「『高額』『長期化』しやすいペアローン」※回答者:住宅ローン利用経験者、「わからない、覚えていない」は除く

ペアローンのメリット・デメリット

ペアローンのメリットは、単独で住宅ローンを組むよりも借入可能額を増やしやすい点です。またこれに加えて、夫婦それぞれが住宅ローン控除の対象となることから、共働き世帯の税負担の軽減につながる仕組みである点が注目されています。

しかし、ペアローンはどちらか一方が返済できなくなった場合、もう一方がその分の返済義務を負う点がデメリットです。収入減少や離婚など、将来の変化によっては大きなリスクとなる可能性があるでしょう。実際、このペアローンを巡るトラブルは後を絶ちません。

7,000万円のマンションを購入した30代夫婦

会社員のアスカさん(仮名・40歳)は、夫ダイチさん(仮名・42歳)と中学生の娘との3人暮らしです。世帯年収は1,200万円(アスカさん:400万円、ダイチさん:800万円)あります。

夫婦は娘の中学進学を機に引っ越しを考えていましたが、候補エリアの家賃の高さになかなか踏ん切りがつかなかったといいます。

不動産価格の高騰を実感した二人は悩んだ末、「どうせこんなに高いお金を払うなら、せめて資産として所有したい」と、マンションを購入することに。

運よく理想に近い物件を見つけましたが、ダイチさんの単独ローンでは厳しそう……そこで、知り合いや金融機関に助言を仰いだ結果、夫婦はペアローンを組むことにしたそうです。

住宅ローン控除に惹かれた夫婦だったが…

こうして、アスカさんが2,000万円、ダイチさんが5,000万円をそれぞれ借り入れ、約7,000万円の新築マンションを購入したそうです。

毎月の返済額は、アスカさんが約5万5,000円、夫が約14万円です。世帯収入からみれば無理のない水準で、さらに住宅ローン控除の効果も見込めることから、順調なスタートを切ったかにみえました。

「夫婦それぞれが住宅ローン控除の対象になるなんて。もっと早く知りたかった」

新しい家に心躍る3人。しかし、そんな幸せな生活は、長くは続きませんでした。

ペアローンの破綻

入居から数ヵ月後、仕事を終えたアスカさんが用事のためいつもと違う道から帰宅しようとしたところ、知らない女性と親密そうにしているダイチさんを発見。後日入念に証拠を集めて問い詰めたところ、ダイチさんの不倫が発覚したのです。

話し合いの末、夫婦は離婚することになりました。

夫婦の貯金300万円は慰謝料という形で全額アスカさんが受け取り、マンションについては従来どおり夫婦それぞれが自分のローンを支払い続ける形で、アスカさんと娘がそのまま住み続けることに。

離婚という大きな出来事はあったものの、日々の暮らしは落ち着きを取り戻し、これからもなんとかやっていけるかにみえました。

しかし……

元夫から突然の電話

家を購入してもうすぐ2年が経とうとしていたある日、元夫から電話が。

「いきなりごめん。……本当に申し訳ないんだが、ローンが払えそうにない」

突然の告白に、アスカさんは動揺を隠せません。

「どういうこと? 約束したじゃない!」

実はダイチさん、離婚後に会社を辞め、フリーランスとして独立していました。会社員時代から懇意にしていた取引先があり、勝算あっての独立だったそうですが、その取引先の業績不振に伴って、契約が打ち切られてしまったというのです。

大得意先を失ったダイチさんの年収は300万円ほどに。年収300万円で毎月14万円のローン返済を続けるのは現実的ではありません。

このままでは返済が立ち行かないと判断した2人は、熟考の末マンションを売却することにしました。

悲劇はまだ終わらない

ところが、不動産業者から提示された価格は予想以上に低く、このままでは約600万円の残債が残ってしまいます。これではローンを完済できないため、原則として売却は成立しません。

二人の貯金を充当すればギリギリなんとかなるものの、今後の生活や子どものことを考えると避けたい選択です。

想定していなかった事態が次々と起こり、選択肢はどんどん狭まっていきます。

「こんなことならペアローンなんて組まなきゃよかった……」

アスカさんは、現実を前に立ち尽くすしかありませんでした。

「ペアローン」で後悔しないために

その後、売却時に発生する残債はダイチさんの両親が負担するということで話がまとまり、問題はひとまず解決へと向かいました。

今回紹介したケースは親の資金力によって事なきを得ましたが、すべての人が同じように解決できるわけではありません。

ペアローンは借入額を増やしやすく、住宅ローン控除の面でもメリットがある一方、今回のようにどちらか片方の収入が減少した場合、返済負担が途端に重くなる可能性があります。

そのため、ペアローンを利用する際には、どちらかの収入が減った場合でも返済を続けられるかどうか、事前に資金計画を立てておくことが重要です。住宅購入では、目先のメリットだけでなく、将来起こり得る変化まで見据えた慎重な判断が求められます。

辻本 剛士

神戸・辻本FP合同会社

代表/CFP