ふくらはぎの痛みを放置するとどうなる?深部静脈血栓症のリスクと合併症を医師が解説
深部静脈血栓症によるふくらはぎの痛みを軽視して放置すると、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。早期の対応が予後を大きく左右するため、どのようなリスクが生じうるかをあらかじめ理解しておくことが重要です。肺塞栓症への進展や慢性的な下肢症状の残存、血栓の拡大といった観点から、放置した場合の影響をご説明します。
監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
ふくらはぎの痛みを放置するリスク
深部静脈血栓症によるふくらはぎの痛みを軽視して放置すると、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。早期の対応が予後を大きく左右するため、リスクを理解しておくことが重要です。
肺塞栓症への進展
深部静脈血栓症の最も重大な合併症が肺塞栓症です。足の静脈にできた血栓が剥がれて血流に乗り、肺の動脈に詰まることで起こります。肺塞栓症は突然の呼吸困難や胸痛、動悸、失神といった症状をもたらし、重症例では命に関わることがあります。特に、大きな血栓が肺の主要な動脈を塞いだ場合、循環不全や心停止に至る危険性があります。さまざまな報告がありますが、肺塞栓症は深部静脈血栓症を発症した方の数%~十数%程度に起こるとされており、早期の治療が重要な合併症です。
慢性的な下肢症状の残存
血栓が形成されると、静脈弁が損傷を受けたり静脈壁に炎症が起こったりして、血栓が溶けた後も静脈機能が完全には回復しないことがあります。これを血栓後症候群と呼び、慢性的な下肢のむくみや痛み、皮膚の色素沈着、潰瘍といった症状が長期間持続します。こうした後遺症は日常生活の質を低下させるだけでなく、再発リスクも高めます。適切な治療を早期に開始することで、血栓後症候群の発症リスクを減らせることが報告されています。
血栓の拡大と症状の増悪
治療を受けずに放置すると、血栓が静脈内で徐々に大きくなり、血流の閉塞が進行します。その結果、腫れや痛みが増強し、皮膚の栄養障害が起こって潰瘍形成に至ることもあります。また、血栓が下大静脈といった体幹の大きな静脈にまで広がると、治療がより複雑になり、回復に時間を要するようになります。初期段階で対処すれば比較的短期間の治療で改善が期待できるため、症状に気づいた時点で早めに受診することが大切です。
まとめ
深部静脈血栓症は、ふくらはぎの痛みや片足だけが腫れるといった特徴的なサインを見逃さないことで、早期発見が可能です。こうした症状に気づいた際には、自己判断でマッサージをしたり放置したりせず、速やかに医療機関を受診することが重要です。適切な診断と治療により、肺塞栓症といった重篤な合併症を予防し、後遺症のリスクを減らすことができます。日常生活では長時間の同一姿勢を避ける、十分な水分を摂取する、リスク要因を把握しておくといった予防対策を心がけることで、血栓形成のリスクを下げることができます。気になる症状がある場合は、循環器内科や血管外科を受診し、専門的な評価を受けることをおすすめします。
参考文献
日本循環器学会「肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」
国立循環器病研究センター「静脈血栓塞栓症(急性肺血栓塞栓症、深部静脈血栓症)」
厚生労働省「エコノミークラス症候群の予防のために」
