「愛着障害」を見分けるにはここを見る!…キャリア約40年の専門家が見つけた発達障害と区別するための「4つのポイント」
「暴言、暴力をくりかえす」「構うと要求がエスカレート」「注意すると逆ギレ」「褒めたのに怒る」そんな手ごわい“不適切行動”をする子が激増している。その原因が「愛着障害」にあることをいち早く指摘したのが、米澤好史氏だった。わかりにくい「愛着」の概念から、独自の愛着障害論、そして効果的な支援の方法まで、渾身の力で書き切った新刊『愛着障害スペクトラム こどもの気持ち&支援スキル大全』より見どころを抜粋して紹介する。
刺激反応性の違い(どんな刺激にどう反応するかで区別する)
ADHDはどんな刺激に対しても注意が逸れやすく、何に対しても刺激反応は起こりやすいのが特徴です。
ASDがある子は、本人にとってその刺激が好みかどうかにより反応が変わります。特異な認知、こだわりという特徴があり、本人が興味のある特定の刺激のみに反応します。
一方、嫌悪する特定の刺激は忌避します。これが近年よく知られるようになった感覚過敏/感覚鈍麻と、それらの併存という特性(知覚異常)にもつながっています。
(知覚異常とは、たとえばピアノの音を強く嫌がるが、それと似た音質の話し声は気にならない、といった感覚の特異性のことです)
愛着障害は、そのときどきの感情によってどんな刺激に反応しやすいかが異なります。
すなわちここでもムラがあるのです。その子のなかにネガティブな感情が多くある場合や、周囲に刺激が多い状況では反応が強く・多くなりやすく、そうではないときにはあまり反応しません。
状況・対人場面による違い(どんな人、どんな状況で行動が出るかで区別する)
ADHDは行動の障害なので、その特徴はいつでもどんな場合でも生じ、場所、状況、場面、集団かどうか、誰といるか(対人関係)などの要因による違いは見られません。
これに対し愛着障害は、状況、場面、対人関係の違いによって感情のムラが生じやすく、その差がかなりはっきりしています。
たとえば集団のなかでは多動などの行動の問題があらわれやすいのですが、大人とふたりだけでいる場合は、行動の問題はあらわれにくくなります。一対一の場面では「かかわる」相手を明確に意識できるので不適切行動が起こらないのです。ここにもやはり、ムラが見られます。
ASDの行動も、場所、状況、場面、集団かどうか、誰といるかなどの要因によってあらわれ方が異なります。しかし、その違いは認知によるので、同じ場所、同じモノであれば捉え方は同じになることから、ある程度一定の行動を取ることが多く、それが区別に使えます。
片付け・ルールに対する違い(支援の有効性をもとに区別する)
片付け・ルールについては、「片付けができないように見える」「ルールが守れないように見える」現象と捉え直す必要があります。回りくどい書き方ですが、原因に違いがあるのでそう表現せざるを得ません。
ADHDのこどもは実行機能が弱いため、一連の手順を最後まで踏まなければ完遂できない「片付け」のような行動が難しくなります。また、ルールがあっても何かのはずみで衝動的に破ってしまうこともあります(抑制制御の困難)。
ただし、片付けにせよルールにせよ「そうしたほうがいい/守ったほうがいい」ことはわかっているので、手順をわけてスモールステップで遂行させ、できたら都度ほめて行動を強化する「行動支援」を行えば、徐々に片付けられるようになっていきます。
一方、感情の問題を抱える愛着障害に行動支援は通じません。〈片付けたほうが気持ちいい、ルールを守って行動したほうが気持ちいい〉という感情が育っておらず、ほめられても〈次回も片付けよう〉という意欲がわかないからです。このためADHDに有効とされる支援を続けても、支援者からは効果が蓄積されないように見えます。
ASDは認知の障害なので、ルールが本人の捉え方と合致すれば完璧に実施しようとし、そうでないとしようとしない、という特徴があります。「〇〇することが学校のルール、集団の慣習だ」「みんなそうしている」と大人が伝えても、それだけでは動こうとしません。〈〇〇はいいことだからそうしよう〉と、本人が納得して初めて、その行動をするところが特徴です。
無視する、取り上げない支援の効果の違い(「計画的無視」の効果で区別する)
こどもの不適切行動を大人が「無視する」「取り上げない」支援がよく知られるようになってきました。応用行動分析や認知行動療法などでよく使われる「計画的無視」という手法ですが、その効果の違いも識別の手がかりになります。
無視によって行動の問題が減るのは、こどもにとって面白みのある「大人の反応」という刺激(報酬)が得られなくなるからです。すなわち、不適切行動をしても見返り、報酬がなくなるから、その行動をしなくなるわけですが、ADHDの場合はこの無視する・取り上げない対応が有効です。
愛着障害の不適切行動は、こどもの感情の動きに影響されるので、無視・取り上げない対応が効きません。
計画的無視は「行動」を無視しているだけですが、こどもは「感情」を無視されたと受け止めてしまいます。だから無視されたことによりネガティブな感情が強くなり、不適切行動はエスカレートし、頻発するようになります。
また、そもそも無視する対応では、関係性をつくる支援にはなりませんから、愛着障害の支援にはならないのです。
ASDでは無視する・取り上げない対応によって行動は変化しません。大人の反応を報酬と捉えるか、それとも無視されたと捉えるかは本人次第ですが、ASDのこどもは、そもそも大人からの反応に気づいていない場合もあれば、気づいていたとしても、本人にとってはそれほど重要ではない場合が多いので効果が出ないのです。
