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既存モデルから受け継いだ要素は一切ない

自動車ブランドを新規にゼロから立ち上げることと、既存ブランドの再構築との間には、どんな違いがあるのだろう。難題であることと、より多くの顧客を獲得したいという目的は、一致するといっていい。

【画像】好印象の中心に巧みなデザイン 次世代ジャガー「X900」 EタイプとサルーンのXJ12も 全109枚

他方、活用できる従来のイメージの有無が、決定的な違いの1つといえるだろう。それが実在するのか、一時的なものなのか、単なる思い込みなのかは別として。


ジャガーX900 4ドアGTと並ぶ、同社が管理する象徴的なクラシック・ジャガーたち

これはコードネーム「X900」、別名タイプ00、もしくは4ドアGTのデザインで、ジャガーが向き合った課題だった。正式なモデル名は、クルマ自体の発表までお預けだが、技術的にはまったく新しい。

既存モデルから受け継いだ「素材」は一切なく、ジャガーらしさを感じさせることは、偶然では得難い。あらゆる技術的な取り組みで、実現されるものといえた。

主観的な要素の具体化に務めた技術者たち

そこで主要な技術者は、2021年の開発初期の段階で、「スピリット・オブ・ジャガー」と呼ばれるテストを実施した。ジャガーの動的特性を明確に洗い出し、真のジャガーらしさを解き明かすことが目的だったという。

スタイリングやドライビングポジション、そこから見える景色。最初の50mで感じ取れる第一印象。操縦系の感触や乗り心地、操縦性に至る、クルマのすべてを。


ジャガーX900 4ドアGT(タイプ00/プロトタイプ)

プロジェクトを率いる技術者、ジョン・ダーリントン氏がリーダーを務めるチームは、ジャガー・デイムラー・ヘリテージ・トラストから、象徴的なクラシック・ジャガーを持ち込んだ。何度も試乗し、議論を重ね、主観的な要素の具体化に務めたという。

EタイプとXJとの比較で探るジャガーらしさ

今回は、それを筆者が確認する番。ジャガー・ランドローバー(JLR)のテストコースには、2台のジャガー Eタイプ・ロードスターが停まっている。片方はシリーズ1で、エンジンは3.8L直6。もう一方は、V12エンジンのシリーズ3。存在感は揺るぎない。

さらに、初期のジャガーXJが2台。このブランドを立ち上げたウィリアム・ライオンズ氏が、直接監修した最後のモデルといえる。サルーンのXJ12はシリーズ1のロングホイールベース版で、ショートホイールベースのクーペは、XJ-C V12。大人なクルマだ。


ジャガーX900 4ドアGT(タイプ00/プロトタイプ)

そんな4台と並んで異彩を放つのが、カモフラージュされたX900。トリプルモーターで総合1000馬力以上がうたわれ、車重は2.5tほど。ブランドの系譜と、どのような結びつきを持つのか、期待を高めずにはいられない。

開発時の起点はEタイプにあった

自分が真っ先に向かったのは、Eタイプ。約20年前にジャガーが主催したイベントで、まったく同じシリーズ3を運転させてもらったことがある。開発時の起点はEタイプにあったと知れば、X900がロングノーズなことも腑に落ちる。

Eタイプのボディは、エレガントに曲線を描く。限りなく低い運転席へ座ると、グラマラスなボンネットを見下ろせる。クルマの中心へ、自分が収まったような感覚は、無二といっていい。美しい彫刻の一部になったかのようでもある。


ジャガーX900 4ドアGTと並ぶ、同社が管理する象徴的なクラシック・ジャガーたち

ステアリングホイールは大径だが、ウッドリムは細く、太もも回りには余裕がある。ボンネットに切られたエアアウトレットは、ダッシュボードの目の前。V12エンジンの唸りが直接耳へ届き、臨場感は半端ない。

スポーツカーからグランドツアラーへの進化

シリーズ1の方が、コクピットはタイト。ペダルが並ぶ足元の空間はやや狭く、ステアリングホイールへ当たりそうな位置へ、膝が来る。モス社製の4速MTは、時々変速が渋い。だが、直6エンジンは素晴らしく滑らかに回り、心地良い音色を奏でる。

敏捷さではシリーズ1が上だが、大らかなクルージングが得意なのは、12気筒のシリーズ3。ホイールベースが長く、ペダルやステアリングなどの操縦系は格段に軽く扱いやすい。トルクフルで、流暢に飛ばせる。変速をサボっても問題ない。


ジャガーX900 4ドアGT(タイプ00/プロトタイプ)

予想以上にラグジュアリー。シリーズ1や2より生産数は少ないものの、シリーズ3のEタイプは、ジャガーの遺伝子へ永続的に受け継がれる特性を与えたように思う。スポーツカーから、グランドツアラーへ進化したモデルとして。

この続きは、次世代ジャガー「X900」(2)にて。