『スクライド』谷口悟朗監督からALS罹患の津久井教生さんへの手紙「出会いは『機動武闘伝Gガンダム』だった」
20年以上愛される「スクライド」ストレイト・クーガー役の津久井教生さん
発売されていて
そのクオリティーの高さに
すごいなぁ〜って思っていた
ストレイト•クーガーのフィギュア
自分で組み立てるバージョンが
私の元に届きました♪
嬉しくって笑顔と真顔バージョンの
写真を撮ってしまいました〜♡
キャラクターがフィギュアになるのは
やっぱり声優として嬉しいですね♪
4月9日、Xにこんなポストをしたのは、声優の津久井教生さん。津久井さんといえばNHK・Eテレの番組から1992年4月に誕生し、子どもたちを中心に多くの人に愛されてきたキャラクター・ニャンちゅうの声を30年以上つとめたことでも有名だ。そして2001年に放送され、そのあと映画にもなった人気アニメ『スクライド』でのクールな面もありつつコミカルなお笑い担当でもあるキャラクター、ストレイト・クーガー役も演じていた。
2019年にALSの告知を受け、しばらくは奇跡的に声が出るといわれながらニャンちゅうほか、多くの仕事を続けてきた。2021年には「スクライド」が放送から20周年を迎え、そのイベントにも登壇していた。遠隔でイベントに出演した様子は、津久井教生さんの動画で確認することができる。
周年でいえば、2022年にはニャンちゅう30周年を迎えた。そして2022年の10月に、同じ事務所の羽多野渉さんにニャンちゅうの声をバトンタッチすることを公表。その2ヵ月後に気管切開し、現在は声が出ないながら、視線入力とAI生成の「津久井さんの声」で発信を続けている。
そんな津久井さんが2020年から「FRaUweb」にて続けた連載をベースに、視線入力での書き下ろし原稿を加えた著書『ALSと笑顔で生きる 声を失った声優の「工夫ファクトリー」』が4月27日に発売となる。
「ALSになるとはどういうことなのか」「介護される人の本音は」「気管切開や胃ろうをした人の感想」といったことは、なかなか当事者の生の声を聞くことができない。本書はそういう生の声に加え、声優養成所で長く教えてきた津久井さんが「声の出し方」のノウハウも詰め込んだ、実用エッセイでもあるのだ。
2026年3月23日に公開となった映画『パリに咲くエトワール』や大ヒット映画『ONE PIECE FILM RED』も手掛けてきた『スクライド』の谷口悟朗監督が、本書を読んで津久井さんへのメッセージを寄せてくれた。
谷口悟朗監督から津久井さんへのメッセージ
表現に生きるとはどういうことか。
これは、軽やかに見えながら、それが持つ過酷な一面を力強く突きつけてくる一冊だ。
もしあなたが、何かを心から求め、形にしようともがいているのなら、本書は単なる「他者の記録」ではなくなるはずだ。そこには、いつかの自分、あるいは今の自分が重なる「避けがたい何か」が流れている。
私がアニメ演出家として声優・津久井教生さんと出会ったのは、1994年の『機動武闘伝Gガンダム』の時だった。津久井さんは敵役を本当におもしろそうに、エネルギッシュに演じていた。その後も私の監督作『スクライド』でストレイト・クーガーという重要な役を担っていただき、さらには津久井さんが主宰する「絵空事計画」で朗読劇を学ばせていただくなど、長年にわたり何かとお世話になってきた。
そんな津久井さんが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
声優という仕事は、単にマイクの前で声を出すだけのものではない。
企画や台本の意図を深く理解する読解力、そして集団作業に不可欠なコミュニケーション能力を前提とした上で、初めて「演技としての声」が必要とされる。
演技としての声は、口先だけのものではいけない。日常的に話す声でもない。「自然な芝居」と聞くと何もしないことだと勘違いする人がいるが、必要なのは「自然だな」と聞こえる演技なのだ。
その演技には欲求があり、行動があり、そしてその先に声がある。そしてその声は、必ず身体に支えられていなければならない。
声優にとって、この身体こそが、肉体的な表現者としての唯一無二の楽器である。
では、その楽器が、ある日突然、思い通りに動かなくなったら……
表現者は、そこで終わってしまうのだろうか。
表現とは、内なるマグマを外へと放つ行為だ。
本書は、「声」に代わる、津久井さんにしか成し得ない「新たな表現」を模索していく記録であり、後輩たちへの切実なメッセージでもある。
世の中はままならない。思い通りにはならないものだ。
しかし、だからといって諦めるのではなく、抗いながらも明るく楽しむ。
その日常こそが、新しい表現者としての津久井教生さんの姿なのだろう。
谷口悟朗
