宮舘涼太という現代の“必殺仕事人” 『タミ恋』で表現する無機質と温もりの“二面性”
宮舘涼太は、「自分に求められている役割」を正確に読み取り、それを確実に遂行する稀有な存在だ。
参考:Snow Man 宮舘涼太のエレガントなスーツ姿や“キョトン”顔が 『タミ恋』場面写真公開
ドラマや映画では、静かな気迫を纏い、見る者を魅了していく。Snow Manとしての音楽活動では、鋭いダンスと艶のある声で観る者を惹きつける。バラエティでは振り切ったコントも、場を整える裏方的な立ち回りも自在にこなす。その場に必要な「顔」を、臨機応変かつ常に「最良の状態」で差し出せるのが、宮舘の凄みである。
大人数のグループの中で、自分の立ち位置を的確に見極め、任された役目を淡々と果たしていく姿は、まさに現代の「必殺仕事人」だ。
近年は、俳優としての存在感も一段と増している。2024年の『大奥』(フジテレビ系)で演じた松平定信は、倫子(小芝風花)への秘めた想いと、家治(亀梨和也)への嫉妬が入り混じるといった複雑な役どころを演じた。映画『火喰鳥を、喰う』では、どこかサイコパスの香りを漂わせる超常現象専門家・北斗総一郎を演じ、役者としての幅をさらに広げてみせた。
そして4月4日より放送がスタートした『ターミネーターと恋しちゃったら』(テレビ朝日系)では、連続ドラマ初主演を務めている。
本作は、400年後の未来からやって来た高性能ヒト型ロボットが、大手出版社「文鳥出版」に勤務する漫画編集者・神尾くるみ(臼田あさ美)を守るために奮闘するヒューマンSFラブコメディ。宮舘は、神尾を守るために送り込まれたロボット・時沢エータを演じる。
エータは、くるみの勤務先に配属される。「はじめまして、時沢エータです」と丁寧に頭を下げるその姿は、手をピシッと揃えた所作から、ひとつひとつの動きに至るまでどこか人間離れしており、ロボット特有の動きを細部まで再現していることが伝わってきた。
その後、漫画編集者として奮闘するくるみは、担当するベテラン漫画家・榎モカ子(山崎静代)から「編集者として信用できない」と突き放され、心が折れそうになる。仕事一筋で生きてきたからこそ、仕事で評価されない辛さは深く、くるみはエータに「自分がからっぽになってしまった」と、打ち明ける。
エータは、そんなくるみに対し「あなたには、これまでの確かな経験があります。からっぽではありません」と優しい声色で告げる。
くるみを見つめる瞳は、無機質なロボットのものとは思えないほど、実に柔らかい。ロボットとしての精密さと、人間のような優しさ。その2つが重なり合うことで、ただのアンドロイドではなく、くるみの心に寄り添う唯一無二のキャラクターへと変わっていく。
宮舘は、恋愛コメディのような軽やかな演技も難なくこなす一方で、その振り幅は驚くほど大きい。むしろ「正義感に満ちた王子様」というイメージを裏返したとき、彼はダークヒーローとしても見事にハマるのではないだろうか。その予感が的中したのが、映画『火喰鳥を、喰う』での北斗役だった。
本作では、元カノ・夕里子(山下美月)への未練と執着に狂い、周囲を翻弄していく北斗を怪演。再会した夕里子を前に「相変わらず、綺麗だ……」と呟くその声は、どこか危うく、底の見えない狂気を孕んでいる。その後も、北斗の奇妙な言動に戸惑いながら、物語は静かに深みへと進んでいく。怪しいはずなのに、どこか艶を帯びたその声に引き寄せられ、気づけば私は、宮舘が演じる「北斗」という深い闇を秘めた存在に、ゆっくりと足を取られていた。
とりわけ、久喜(水上恒司)に向かって「宮舘の王子様キャラを完全に消した」状態で、「お前、邪魔なんだよ……」とうめくように迫るシーンには王子様の面影は一切なかった。愛する人への執念だけがむき出しになっている姿を見た瞬間、その鬼気迫る様子に、思わず背筋がゾクリとした。
執念というものは、実に恐ろしい。とくに恋愛にまつわるものは。王子様のようなキャラクターと「執着」は相反すると思っていたのに、宮舘が見せたねっとりとした執着の演技は、驚くほど自然で、そして妙にハマっていた。
ドラマ『大奥』で演じた定信は、じっとりとした執着心の奥にうごめく「狂気」を静かに滲ませていた。倫子に「この城から出て行っていただきます」と追い詰められた瞬間、丸く見開いた目とは裏腹に、口元をひきつらせて放った「はははは!」という乾いた笑いは、今でも耳にこびりついている。
その後、定信は「もし世継ぎに選ばれていたら、倫子と自分は上手くいっていたのか」という切ない恋心を一瞬だけ覗かせる。狂気を孕んだ瞳のまま、ふっと影を落とすその横顔は、不遇な背景が滲んでいて、なんだか切なくなった。
宮舘の魅力は、どれほど狂気じみた役を演じても、ふとした仕草の端々に漂う「品」が消えないことだ。悪役であっても、どこかに気品の残り香があるせいか、観ている側は不思議と安心してスクリーンに身を委ねられる。実は、長く作品を見続ける上で「安心して見られる存在」であることは、役者として大きな強みだ。老若男女を問わずファンを惹きつける理由も、まさにその点にあるのだろう。
第1話のラストでは、鍋をこぼしたくるみのピンチを救うため、エータが壁を突き破り、むき出しになった「青く光る腕」を見せる衝撃的なシーンが描かれた。第2話の予告では、エータが「彼女は私にとって、最重要人物です」と穏やかな口調で周囲に告げる様子や、指を高速で動かすシーンなどが映し出される。その姿には、「ヒーロースペック高めだ……」と思わず声を漏らす人物もいたほどだ。
どうやら次回も、くるみに新たなピンチが訪れそうだ。そのときエータは、どんな方法で彼女を救い出すのか。ロボットらしさと人間味の狭間で揺れ動くエータの行動から、ますます目が離せなくなりそうだ。(文=みくまゆたん)
