女性狂言師・和泉淳子「長女・慶子が〈第30代日本さくらの女王〉の任務を終えた。日本大使館広報センターJICC主催で狂言講演も」
小学校の教科書で『附子』という狂言にふれた人も多いのでは。伝統芸能である狂言の歴史は、歌舞伎より古く室町時代に遡り、およそ650年。その歴史のなかで初めて女性狂言師となった和泉淳子さんが、狂言の面白さや日本文化、家族のことなどを綴ります
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前編より続く
二つ目の別れ
前編記事で、「長男のお弁当作りとの別れ」をお話しさせていただいたが、桜にまつわる二つ目の別れは、娘の日本さくらの女王の退任セレモニーだ。
2024年2月、第30代日本さくらの女王に選出された慶子(舞台では和泉流狂言師・和泉慶子)が無事2年の任期を終えて31代目の女王にバトンを渡した。

各国の桜の女王たちと(写真提供:淳子さん 以下すべて)
思い返せば2025年の春は、ワシントンD.C.の桜まつりに慶子に母として同行。桜まつりのフロートにアメリカの桜の女王と一緒に乗りパレードを行うのを見守った。そして、日本大使館広報センターJICC主催で10世三宅藤九郎、和泉和秀と共に狂言公演に出演する好機にも恵まれた。
アメリカのお客様は、笑いの表現もダイナミックで、「棒縛」という2人の召使いが盗み酒をするお話では、両手を棒に縛られた太郎冠者が、器用に酒蔵の戸を開けたり、工夫してお酒を飲む場面でワォっと歓声が上がった。
会の最後には、ワークショップとして狂言の笑いの中でも、「福の神」の笑いを満員の会場全体でトライ!
深呼吸の様な深い息を吸い、福を授ける、皆の幸せを祈念する思いをのせて発声していく。舞台上と客席の境が自然と解けて一体となる。嬉しい笑顔が溢れた。
他にも、ジョージワシントン大学、ジョージタウン大学の日本語学科を訪れ、授業をさせていただき、ミニキャンパスツアーも催していただき学校の空気感を生で感じ短い滞在ながら、充実した旅となった。3ヵ月くらいD.Cで過ごしていたかったなぁ…とぼやいていたのが昨日の様だ。
あれから1年経ったとは、信じがたい。
そして今年はニュースでも放映されている通り、建国250年を記念して日本から250本の桜が贈られる。

講義&ワークショップ終了後、ジョージタウン大学にて
春から新しく始まることも
さて、別れがあれば始まりがあるもので、人は同じところに留まり続ける事は事は出来ない。仮に物理的に同じところにいたとしても昨日と今日とでは違うものだ。少しでも何か良い方向に進んでいる事が大切だと私は常日頃思っている。
行動まで至らなくても、自分と対話し思考の中で方向性や、やりたい事とやるべき事が描けるだけでも、考え始める前の自分とはすでに違っていて、前に進んでいると私は思う。
狂言師の一生は修業の道である。でもその修業は、技を磨いている時だけでは無く日常の中で鍛えられる部分も多くある。この春私は、また新しい鍛錬の場を与えていただいた。昨年より本郷にある東京大学の教育学部で非常勤講師として狂言の授業を受け持っているのだが、今年は「狂言の実践と型の身体表現」として、狂言のみの授業を新しく展開する事になった。
そんな私の心に浮かぶのは、師匠直伝の狂言師としての心構え「素直な心」で「生涯精進」。
桜吹雪の中、共に良いスタートをきれますように!
