麗澤大学経済学部教授の八木秀次氏

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"安倍後継"と捉えられる高市政権だが、それだけでは本質を見誤りかねない──。ともに首相として選挙で自民党を"一強"へ導いた「安倍晋三氏と高市早苗氏」の"違い"を分析するからこそ、高市政権の強みや危うさが浮き彫りになる。保守政治家としての両者の違いについて、麗澤大学経済学部教授の八木秀次氏に聞いた。

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 保守政治家として天皇や皇室制度にどう向き合うかという面で、高市さんと安倍さんには違いがあるように思われます。

 高市さんは「皇室大好き」と仰っており、強い関心を持っているのは間違いないでしょう。しかし、国会質疑を見ると皇室制度と、それをめぐる議論についてどこまで詳しくご存知なのかは疑問があります。

 2月27日の衆院予算委員会で、高市さんは安定的な皇位継承について質問されると、有識者会議の報告書(2021年)に触れて「男系男子に限ることが適切とされている」と答弁したが、その報告書は「女性皇族が婚姻後も身分を保持する」「旧宮家の男系男子を養子として迎える」という2案への検討を求めたもので、将来的な皇位継承策にはあえて踏み込んでいない。答弁はややミスリードで後に木原稔・官房長官が訂正しました。

 台湾有事をめぐる答弁もそうでしたが、高市さんは自分の言葉で話したいという思いが強く、そのために機微に触れる部分について言いすぎる時もあれば、細かな点で間違う時も出てきてしまう。

 その点、安倍さんは皇室の存続問題に早くから危機感をお持ちでした。私もレクチャーしたことがありますが、非常に詳しい。それでも機微に関わる質問に答える時は、官僚が用意した紙を読み、慎重な対処をしていました。人間は誰でも森羅万象を承知しているわけがない。自分だけの考えでは間違うこともあります。だから安倍さんは官僚を頼りましたが、高市さんは自分で全部背負おうとするところが見えます。

 気になるのは、高市政権の重点政策で教育に力が入っていない点です。高市さんが尊敬する英国のサッチャー首相は教育政策に力を入れていたし、安倍さんも「教育再生」を掲げた。しっかりとした国にするためには、国民の教育が大切です。

 高市さんの現状を見ると、日々かなり大きなテーマが浮上して、その対処でやりたいこともできない状況にあるとお見受けします。安倍さんは、信頼する部下に任せる手法を取っていました。任せられたほうは、やる気を出すし、忠誠心も高まる。高市さんは基本的に自分で抱え込んでしまう傾向が強いがゆえに余裕がなく、高市色すら出せずにいるように見えます。

【プロフィール】
八木秀次(やぎ・ひでつぐ)/1962年、広島県出身。早稲田大学大学院認定退学後、保守主義の立場から幅広い言論活動を展開。第2次安倍内閣では教育再生実行会議委員を務めた。現在は麗澤大学経済学部教授。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHP研究所、2013年)など。

※週刊ポスト2026年4月17・24日号