覇権主義に抗う「生きた文化」の正体!民俗学における重要キーワード「ヴァナキュラー」とは!?【眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話】

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【「ヴァナキュラー」とは何か】「俗=ヴァナキュラー」という概念

「俗なるもの」を指す言葉

ヴァナキュラーという語は、もともと言語学をはじめとする人文社会科学において、「権威ある正統的な言語」に対する「俗語」を意味するものとして用いられてきました。

そして第二次世界大戦後、建築の世界で、正統的な建築家による設計ではない、一般人による建築を「ヴァナキュラー建築」と称するようになり、この頃、民俗学も一般人による建築を研究対象としていたことから、ヴァナキュラーという語が用いられるようになりました。

やがて、ヴァナキュラーは言語や建築だけでなく、芸能や工芸、食、音楽など幅広い対象を表すために使われるようになっていき、2000年代に入ると、アメリカ民俗学における最重要のキーワードにまで成長。これまで「フォークロア」の語で呼ばれてきた英語圏民俗学の研究対象を指す言葉として、指し示す内容を拡張させて用いられるようになりました。

「ヴァナキュラー」という概念は、書籍10ページで解説の「俗」の4つの定義のいずれか、あるいはその組み合わせからなります。つまり、「民俗」の「俗」は、そのままヴァナキュラーと同義です。これまで民俗学の英語訳は「folklore studies」などとするのが一般的でしたが、こうした動きを踏まえると、今後は「vernacular studies」とするのが適切でしょう。

「俗=ヴァナキュラー」という概念

民俗学の性格は、国や地域によって程度の差はあるものの、基本的に“対啓蒙主義的・対覇権主義的・対普遍的・対主流的・対中心的”なものであり、この特徴を集約したものが「俗=ヴァナキュラー」という概念である。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話』監修:島村恭則

【監修者紹介】
島村恭則(しまむら・たかのり)
民俗学者。関西学院大学社会学部長・教授。1967(昭和42)年、東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。文学博士(筑波大学)。国立歴史民俗博物館教官、韓国・翰林大学校客員教授、東京大学客員教授などを歴任。日本各地で民俗学調査を行うとともに、韓国・中国での調査・研究も行う。
近年は、世界民俗学史をふまえた民俗学理論の研究、とくに民俗学を国際的・学際的な「ヴァナキュラー文化研究」として再編成する議論を展開している。
著書に『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?』(平凡社)、『民俗学を生きる ヴァナキュラー研究への道』(晃洋書房)、『これからの時代を生き抜くための民俗学入門』(辰巳出版)、『昔話の民俗学入門 民間伝承の秘密を読み解く』(創元社)、編著に『現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす』(創元社)などがある。