神座の「人を選ぶ甘いラーメン」ついに再評価の流れ来る…個人店に負けぬ「スープのこだわり」で過去最高売上更新
大阪を代表するラーメンチェーン「どうとんぼり神座」がここへきて急速に勢力を拡大している。同チェーンを運営する株式会社理想実業が3月18日に発表した2025年度のグループ連結売上は215億円を突破。これで4年連続の過去最高売上更新という形となる。
創業以来、長きにわたって関西圏を中心に人気を集めてきた神座だが、他のラーメンチェーンと比較すると、どちらかと言えばこれまでは“地味”な印象だったようにも思える。それでも、競争が激しく、倒産や廃業も少なくないラーメン業界で、今日にいたるまで生き残っているのには「確固たる理由」があるはずだ。
神座を支える原動力とは何か――。
なぜ「あの甘さ」が病みつきになるのか
あらためて、馴染みのない読者のために「どうとんぼり神座(かむくら)」(以下、神座)がどのようなラーメンチェーンが簡潔にお伝えする。
神座発祥の地は店名にもある通り、大阪・道頓堀。遡ることちょうど40年前の1985年、創業者の布施正人氏が実に1年半以上の歳月をかけて、“神座の味”の原型となるスープを完成させる。「これは商売になる!」と確信した布施氏は、同年にセントラルキッチンを開設を、そして翌1986年7月に神座1号店を開業した。
1号店はわずか4坪9席しかない、こぢんまりとした店舗だったというが、すぐに評判を呼び、順調に店舗数を増やしていった神座。気付けば40年目という節目を迎える今年で、国内125店舗(関西圏85、関東40)、海外2店舗(ハワイ)を展開するまでに至っている(2026年3月時点)。
そんな神座の看板メニューといえば、その名も『おいしいラーメン』760円〜(税込)。基本の具材は、白菜、豚バラ肉、そしてチャーシューの3つ。これに煮卵やネギ、キムチなどのトッピングがあるほか、卓上の「ニラ薬味」で味変をするのが“神座スタイル”と言えよう。
この『おいしいラーメン』の特徴を一言で述べるなら、他にはないあっさりとした、飽きの来ない「甘さ」だろうか。
いかにもジャンキーで、健康を害してしまいそうなドロドロ系スープやこってりスープとは一線を画す、白菜などの野菜の旨みが溶け込んだ味付けのスープ――「甘いラーメン」と聞くと違和感を覚える人もいるだろうが、食べていくうちに、この味がクセになり、病みつきになってしまう、というわけだ。
一子相伝のスープを守る「ソムリエ」たち
事実、神座を象徴する黄金色に輝くこの「スープ」には、他のラーメンチェーンはおろか、個人経営のラーメン店も顔負けの“こだわり”が随所に詰まっているという。
前述の通り、神座のスープは創業者である布施氏が試行錯誤の末に完成させてもので、いわば秘伝のスープだ。通常、独自のレシピを開発して、営業秘密として徹底管理をしても、時間とともに外部流出してしまいがちなのがチェーン店の常と言える。ところが神座は創業から40年経った今なお、スープの詳細を知るのは布施氏と、息子である現社長の2人のみと、門外不出を徹底的に貫いているのだ。
ここで一つの疑問が浮かぶ。経営者である彼らは厨房に立つことがなく、それでいてラーメンのスープは、その日その日で出来、不出来が起きやすいとも聞く。では、どのように巨大な店舗網を持つチェーン店でありながら、秘伝のスープを継承し続け、かつ、いつ何時でもクオリティを均一に維持できているのだろうか。
それを支えているのが、神座独自の社内資格制度「スープソムリエ」だ。ラーメン店なのに、職人ではなくソムリエとしているのは、おそらく布施氏がかつてフレンチレストランのオーナーシェフだったことに由来するのだろう。
神座によれば、このスープソムリエの資格は、厳しい実技試験と筆記試験の両方をクリアした者だけが持てるようで、現在では各店舗の厨房にいるスタッフほぼ全員が資格を有しているという。また、ソムリエにも7段階のランクが存在し、最難関の「スープソムリエ管理官」はわずか数名しかいないという徹底ぶりだ(ちなみに、ランクが上がるとコックタイの色も変わっていく)。
白菜は「スープに合う」独自のサイズに
なお、スープソムリエの制度は、従業員の動機付け、スキルアップにつながっていることも付け加えておきたい。これにより、神座は人的資源緒価値を最大限に引き出すこと、そして組織文化の形成を促していると推察できる。
傍から見て「どの店も同じ味のチェーンなのに、調理技術でランク分けする必要があるのか」と訝しむ人もいるかもしれない。しかし、この制度があるからこそ、神座は競争激しいラーメン業界において、持続的な優位性を確保しているというわけだ。
さて、スープの質を維持するのに、スープソムリエが「人」として重要であるなら、同じくらい「食材」も大事になってくるが、そこも神座は抜かりない。『おいしいラーメン』の味の決め手である白菜を見れば一目瞭然だ。
『おいしいラーメン』一杯あたりに使われる白菜は、実に150グラム以上。これだけ大量に使用していながら、味のブレが起きにくいのは、徹底した生産管理に秘密がある。なんでも、生産者の土壌管理まで行い、基準に合った白菜だけを仕入れるほか、カット時にはAIを駆使して、独自規格である「スープに合うサイズ」に調整しているのだというから驚きだ。
他所が簡単には模倣できない、こうした一連のこだわりがあって初めて、神座のスープは生まれている。よくよく神座で提供されるラーメン丼(どんぶり)を見てほしい。そこには「SOUP WITH NOODLES」の文字がひっそりと書かれていることに気付くはずだ。
主役はスープにあり――。この意志が脈々と受け継がれていく限り、神座はまだまだ成長を続けていくはずだ。
【後編記事】『おいしいラーメン「かむくら」業績V字回復は“お家騒動”のおかげ…?代替わりで起こった「老舗チェーンの変化」』へつづく。
【つづきを読む】おいしいラーメン「かむくら」業績V字回復は”お家騒動”のおかげ…?代替わりで起こった「老舗チェーンの変化」
