料理家・管理栄養士として活躍する長谷川あかりさん。少ない材料でつくれて、意外性のあるレシピがSNSで支持を集めています。長谷川さんの料理に共通するのは、「だれかのため」ではなく、「私が食べたい」という気持ちも大切にしていること。今回は忙しい日々でも無理なく続けられる、料理やレシピの工夫について聞きました。

「私が食べたい」と思える、自分のための塩味ベースの料理

家族の好みに引っ張られがちな日々の食事のなかで、長谷川さんのレシピは「自分のために料理をしてもいい」と思わせてくれる力があります。

【写真】キャベツと豚肉の豆乳鍋

「私の料理のモチベーションは、“自分の食欲”がベースです。『この料理だったらつくりたい』とか『味が気になる』とか。そんな気持ちが出発点なんです」

多くの人に好まれる味を目指すと、どうしても白ご飯に合う甘辛味に寄りがち。一方、長谷川さんが提案するのは、料理単体で食べたときに、素材の輪郭が立ち、心と体が落ち着く“塩味ベース”の料理です。

「おそばやお刺身も、いつもはつゆやしょうゆで食べるけれど、たまに塩で食べたくなる。そんな感覚に近いかもしれません」

コンビニがおいしい今、あえて家で料理する意味

「手間のかかる料理は、無理に家でつくらなくていい」

これも、長谷川さんが大切にしている考え方のひとつです。

「今のコンビニやスーパーのごはんは、本当にレベルが高いですよね。安くておいしいものに簡単にアクセスできる時代だからこそ、家で料理する意味は変わってきていると思います」

デミグラスソースのハンバーグのような“お店みたいな料理”。それを家で再現するよりも、いま価値が高まっているのは“家でしか食べられない味”だといいます。

「手間がかかって、少量つくるのに向かない料理は、無理に家で再現しなくてもいいかもしれません。お総菜として買えるものは買う、と決めた方が、料理はずっとラクになります」

疲れているときこそ救われる「限界丁寧ごはん」

長谷川さんが提案しているのが、「限界丁寧ごはん」という考え方です。

「忙しい日々のなか、料理があと回しになってしまうこともあります。いちばんつらいのは、“やりたいけれど、やりたくない”という中間の気持ちがあるとき。口では『面倒くさい』と言いながら、心のどこかで罪悪感がある状態です。そういう方に向けて、『限界でも、ほんの10分だけ時間をいただけませんか。少し面倒な作業もあるけれど、それ以上の心の高揚や癒やしが絶対に返ってきます』というメッセージを込めて“限界丁寧ごはん”という言葉をつくりました」

“超簡単”ではないものの、10分だけ手をかけることで、気持ちがきり替わる。

「すごく疲れて今すぐ寝たいけれど、10分だけお風呂に入ってみよう、という感覚に近いかもしれません。だから、レシピには意外性やおもしろさを加えて、『これだったらギリギリつくってやってもいい』と思える工夫をしています」

自分をいたわる料理が、負のループを断ちきる

簡単でありながら、豆乳や塩こうじといった体にいいものも取り入れられる。深夜に帰宅する日でも、「これならやってみよう」と思えるのが、長谷川さんのレシピの魅力です。

「カップラーメンよりは少し手間がかかるけれど、食べ終わったあとに『今日はすごくいい生活をしたな』と思って眠れる。市販品に頼りながら、料理の“心地のいい手間暇”だけを残す。そのあんばいを大切にしています」

料理は、ただ簡単にすればいいわけではありません。

「空気のように当たり前にこなしつつ、趣味のような好奇心も満たせる。その両立をどうつくっていくかは、これからも考えていきたいテーマです」

自分らしく料理を楽しむヒントがつまった長谷川さんのレシピ。ぜひ試してみてくださいね。

※ この記事は2026年1月にvoicyチャンネル「明日のわたし研究所 by ESSE」で放送した内容を再編集して記事化しています