滅びゆく「ヤクザ」の奥の手…組織の壁を超えた「奇妙な連携」の裏事情

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1月29日21時頃、東京都台東区の路上で、現金計約4億2300万円が入ったスーツケースが奪われた事件で、警視庁暴力団対策課は14日、事後強盗の疑いで、特定抗争指定暴力団山口組系組幹部狩野仁琉(21)、職業不詳小池恒児(47)両容疑者ら7人を逮捕した。

逮捕された7人のうち3人は、山口組、住吉会、極東会と異なる暴力団の傘下組織に所属している。警視庁は、山口組系幹部の狩野容疑者が中心になって知人らを集めたとみている(時事通信 3月14日)。 

最近、他家名、すなわち、異なる暴力団組織の構成員が協働して、犯罪を敢行する例がみられる。こうした傾向の背後には、どのような事情があるのだろうか。

暴力団対策における3つのターニング・ポイント

東京弁護士会の齋藤理英(さいとう りえい)弁護士によると、「平成以降の暴力団対策を語るうえで、重要なターニング・ポイントが3つあると言う。

それは、平成4年に施行された「暴力団対策法」。次に、平成19年に公表された「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(いわゆる「平成19年政府指針」)、最後に、平成22年から23年にかけて全国で制定・施行された「暴力団排除条例」である。

この意見には筆者も同感である。平成は、暴力団政策の大転換期と言っても過言ではない。とりわけ、最後の暴力団排除条例は、一般人に暴力団排除を義務化したことで、裏社会のサービス業を担う暴力団にとっては、決定的な一撃となった。以降、組織の弱体化に拍車が掛かる。

齋藤弁護士は、「このような施策と、自治体や企業、民間諸団体のたゆまぬ努力の結果、いまや我が国においては、暴力団排除の意識が『社会通念』といえるほどに社会一般に深く浸透し、『暴力団・暴力団員にとって生きづらい社会』が実現し、社会全体で暴力団と対峙することの重要性も再認識されるに至りました」と述べる。

暴力団員及び暴力団準構成員の総数(以下、「暴力団構成員等」)は、平成23年ころから減少し、平成23年時点でその総数が7万300人であったのに対し、令和5年末時点での総数は2万400人に、翌令和6年末には、全国の暴力団構成員等の数は、約1万8800人となっている。

暴力団の検挙人員は過去最少

暴力団による犯罪もデータ上では減少しているようにみえる。

「特殊詐欺や闇バイト強盗など「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の資金調達につながる犯罪で、2024年の1年間に検挙された人員が1万105人に上ったことが3日、警察庁のまとめで分かった。一方、暴力団構成員らの検挙人員はこれを下回る8249人で過去最少だった」という(時事通信 2025年4月3日)。

暴排は進展しても反社排除は進展していない

現在の犯罪は、暴力団よりもトクリュウ型犯罪で検挙される者が多くなっている。もっとも、暴力団員もシノギが厳しいため、偽装離脱や非組員化により、匿名で犯罪に従事している。

だから、暴力団関係者がおとなしくなって、トクリュウの犯罪が猛威を振るっているわけではない。

「むしろ、離脱による「共生者」の創出、暴力団との共生関係も成り立たせるという側面(警察の取り締まりを逃れるために組と関係のない者として仕立て上げてシノギをさせ、暴力団としては、摘発されれば関係ないと切り捨てる構図)や、逆に暴力団と関係のない犯罪者たちとの連携を強めている側面(犯罪者の連携においては、元暴力団員であるかは関係がなく、奇妙な連携が自然に成立するという)という2つの相反する面が生じている……結果、『暴排は進展しても反社排除は進展していない』状況になっている」のだ(SPN JOURNAL「暴力団離脱者支援を巡る動向と今後の課題」2022年5月10日)。

なお、トクリュウは、匿名・流動型犯罪グループであり、暴力団や準暴力団という属性要件ではなく、「犯罪を行う」という行為要件に該当するため、その検挙者の属性は様々であり、未成年や一般人、外国人も含まれる可能性が否めない。

【後編を読む】かつてあった「暴力団の絶対ルール」が形骸化…裏社会の人手不足で生じる「異常事態」

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