近藤と談笑する大谷(右は村上)/(C)日刊ゲンダイ

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【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】

大谷も「勝てる要素のある試合」と悔いた 侍J最悪のWBC8強止まり…井端監督チグハグ采配の痛恨

「大谷翔平に絡むと不幸になる」

 アメリカ球界では、こんな皮肉が囁かれていると週刊文春(3月19日号)が報じていた。

 前回のWBC(2023年)。前年に日本人を含めたアジア人打者のシーズン最多ホームラン記録56本を達成して、史上最年少で三冠王を獲得。「神様仏様村上様」とまでいわれた村上宗隆(東京ヤクルトスワローズ)は、日本プロ野球界最高のバッターだった。 

 東京ラウンドでは3番大谷、4番村上を固定。2人で何本ホームランを打つかにファンの関心は集まった。

 だが、「大谷の後の村上には相当なプレッシャーがかかり、村上は不振に陥った。大谷が打てば場内は大歓声、凡打なら大きなため息、その後で打席に立つのは『本当に嫌だった』と嘆いていた」(スポーツ紙記者=文春)。

 今回のWBCでは大谷を1番にして、首位打者、ホームラン王、打点王などを獲得している好打者・近藤健介(福岡ソフトバンクホークス)を2番に据えた。

 井端弘和監督は前回の失敗を教訓にしたのだろう。村上や岡本和真(読売巨人軍→ブルージェイズ)、佐藤輝明(阪神タイガース)のような“大砲”ではなかった。

 前回のWBCで近藤は、打率.346、出塁率は5割という好成績だった。しかし、その近藤も例外ではなく、今回、ヒットを打つ職人が13打数無安打という無残な結果に終わった。

 かくして「大谷の、大谷による、大谷のためのWBC」は終わった。

 では、ワールドシリーズ3連覇を目指すドジャースの“不幸な男”ムーキー・ベッツはどうか?

 ベッツはレッドソックスで2018年にMVPを獲得して、20年にドジャースに移籍した。先頭打者として定着し、大谷が入団する前年は、打率.307、ホームラン39本と活躍していた、走攻守すべてにおいて超一流の選手である。

 だが、大谷が入団してきて1番に定着。その後を打つことになったベッツは、その年が打率.289、ホームラン19本。昨季はシーズン当初にケガがあったが、打率.258、ホームラン20本と、彼にとって不本意な成績で終わっている。

 なぜ、大谷に絡む人間が不幸になるのか? 私は、彼が自分自身でつくり上げてきた「神格化」があるのではないかと考えている。 

 ベーブ・ルースはシーズン中でも夜通し飲み歩くことが珍しくなかったし、多くの女性と浮名を流した。“怪童”といわれた西鉄黄金時代の中西太は、二日酔いで場外ホームランを打った。

“ミスタープロ野球”長嶋茂雄はグラウンド上で魅せる天真爛漫な顔と、帰宅して妻や子供たちに見せる顔は違った。

 大谷がグラウンド上で見せるパフォーマンスは素晴らしい。試合が始まると相手チームや審判に挨拶する。ゴミがあれば拾い、バットボーイにも温かく接する。アウェーでの試合の薄汚いヤジにも平然としている。

 だが、私生活は絶対のぞかせない。したがって、人間的な弱みを全くもたない、ホームランを量産する“カッコイイ”ロボットのようである。あまりの完璧さに、彼に絡む選手たちは大谷を“畏怖”し、萎縮してしまうのではないだろうか。

 俳優の高倉健は映画「昭和残侠伝」以来、死ぬまで「高倉健を演じ通した」といわれた。高倉と何度かベッドを共にした女優が「あの時以外は、いつ見ても筋トレをやっていた」と語っていた。

 大谷にも同じにおいを感じる。

 妻の真美子や幼子は「素の大谷」を見ている。たまに公開される写真は、絵に描いたような幸福な家族に見える。だが、彼も勝負の世界に生きる男である。

 スランプに陥った時、はけ口をどこに求めているのだろう。家庭でも常に冷静で、怒りを吐き出し、妻に八つ当たりすることなどないのだろうか。

 デコピンに聞いてみたいものである。 (文中敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)