大河初出演(公式HPより)

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「逆に怖さを感じない」

 俳優の仲野太賀(33)が主演するNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の追加キャストとして、ロックバンド「Alexandros」のベーシスト・磯部寛之(43)が、四国の有力大名・長宗我部元親役で3月15日の放送回から登場した。

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 同バンドは2015年にメジャーデビューし、「ワタリドリ」「閃光」などのヒット曲がある。すでに、ボーカルの川上洋平(43)は映画「きょうのキラ君」(17年)でカメオ出演ながら俳優デビュー。その後、広瀬すず(27)主演のTBS系ドラマ「夕暮れに、手をつなぐ」(23年)などに出演している。

 同バンドでは川上に次ぐ俳優デビューとなる磯部。いきなりの大河への抜擢とあって、「正直申し上げて、スカイダイビングでセスナ機から飛び降りた際、その高度(4000メートル)が高すぎて、逆に怖さをあまり感じなかったことを思い出しました」と、独特の表現でコメントを寄せた。

大河初出演(公式HPより)

「バンドマンというと、若い頃から音楽に打ち込み、メジャーデビューをつかみ取った人が大半です。そんな中、磯部さんは大学卒業後、メーカーに就職。ほどなく福岡に転勤となりましたが、バンド活動のため、毎週末に福岡と東京を往復する生活を続けるも、体力的・金銭的に限界を感じたこともあって3年で退職したという経歴の持ち主です。そうした経験も含め、戦国時代好きならほぼ誰でも知っている元親役をどう演じるか注目されます。すでにネットでは甲冑姿を絶賛する声があがっていました」(放送担当記者)

 今でこそ、当たり前のようになったバンドマンの俳優デビュー。古くは、「寺内タケシとブルージーンズ」など、複数のバンドにボーカルとして参加した故・内田裕也さん、フォークグループ「海援隊」のボーカルだった武田鉄矢(76)。ロックバンド「ARB」の石橋凌(69)、「ザ・ロッカーズ」の陣内孝則(67)、「チェッカーズ」の藤井フミヤ(63)らが俳優デビュー。いずれも主役級俳優に昇り詰めた。

「内田さんは主演映画『コミック雑誌なんかいらない!』(86年)で複数の映画賞を受賞。武田さんは代表作とも言えるフジの月9ドラマ『101回目のプロポーズ』(91年)の続編『102回目のプロポーズ』が同局で4月1日から放送されます。石橋さんは、妻の原田美枝子さん(67)、次女の石橋静河さん(31)と、俳優一家。陣内さんはトレンディードラマ全盛期の月9ドラマ『君の瞳をタイホする!』(88年)で主演を務め、フミヤさんは主演したTBS系ドラマ『硝子のかけらたち』の主題歌『Another Orion』がヒット曲に。フミヤさんは俳優業をセーブしていますが、武田さん、石橋さん、陣内さんはいまもコンスタントに映像作品をこなしています」(ベテラン芸能記者)

 その後、人気バンドが続々とヒットチャートを席巻したが、俳優として継続的に活躍するメンバーは出てこなかった。

 そんな中で、ビジュアル系ロックバンド「MALICE MIZER」を脱退後、ソロデビューしたGACKT(52)はすっかり俳優業になじむことになった。

「近未来SF映画『MOON CHILD』(03年)では、自ら原案のストーリーを映画化しました。L'Arc〜en〜Cielのhyde(年齢非公表)を俳優デビューさせて共演し、カルト的な人気作品になります。NHK大河ドラマ『風林火山』(07年)では上杉謙信役に抜てき。二階堂ふみ(31)とダブル主演した映画『翔んで埼玉』(19年)は興行収入37.6億円のヒット作となりました。バンド時のイメージとのギャップが俳優業には生きたようです」(同前)

親しみやすさがウリに

 かつてのバンドといえば、音楽界で一大ジャンルを形成したビジュアル系に代表されるように、髪形や服装に強烈な個性を放ち、他のバンドと一線を画すのが当たり前だったが、徐々に変化が見られるという。

「今はビジュアルよりも、楽曲や音楽性重視。極端な言い方をすれば、高校の同級生や、大学のサークルでバンドを組んで、そのまま社会人になって両立しているケースも珍しくありません。そのため、所属しているバンドを知らなくても、出ているドラマや映画が好きで見た視聴者が親近感を抱きやすく、演じている役にハマればそのまま受け入れられる傾向にあるようです」(大手レコード会社の宣伝担当者)

 特に、2010年代に入ってから俳優デビューしたバンドマンたちに、その傾向が強くみられるという。まずは「RADWIMPS」の野田洋次郎(40)だ。主演映画「トイレのピエタ」(15年)で俳優デビュー。美大を卒業するもフリーターとして生活を送る中、突然倒れ医者から胃がんで余命3か月であることを告げられた主人公を演じた。

「製作サイドは『もともと露出がないから厳しいのでは』と、ダメ元でオファーしたようですが、脚本を気に入った野田さんが快諾。そのおかげで、いずれも大物でRADWIMPSのファンだった大竹しのぶさん(68)と、宮沢りえさん(52)も出演オファーを快諾したそうです」(映画業界関係者)

 この作品で野田は「第39回日本アカデミー賞」、「第70回毎日映画コンクール・スポニチグランプリ」両新人賞を受賞。その後、NHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「エール」(20年)、三浦しをんさんの原作小説をドラマ化しNHK BSなどで放送された「舟を編む〜私、辞書つくります〜」などに出演している。

 14年から18年までおおみそかのNHK・紅白歌合戦に連続出場していた「SEKAI NO OWARI」のFukase(40)は、菅田将暉(33)主演の映画「キャラクター」(21年)で俳優デビューし、狂気的な殺人鬼の役を演じた。

 昨年まで「日本レコード大賞」を連覇するなど、日本の音楽界をけん引する「Mrs. GREEN APPLE(ミセス)」の大森元貴(29)は、もともと子役として活動。ミセスでデビューしてからは、人気グループ「timelesz」の菊池風磨(31)とダブル主演の映画「#真相をお話しします」(25年)で再び俳優に挑戦し、「あんぱん」(同)で朝ドラ初出演を果たしている。さらに同バンドの藤澤涼架(32)は、主演の山田裕貴さん(35)がベートーヴェンの秘書を演じた映画「ベートーヴェン捏造」(25年)でショパン役を演じ俳優デビュー。放送中のTBS日曜劇場「リブート」では裏社会の組織の構成員役でレギュラー出演している。

 そして、俳優デビューした新たな逸材が、抜群の歌唱力が知られている「SUPER BEAVER」の渋谷龍太(38)。北川景子(38)が薬物の密売に手を染めるシングルマザー役を演じた映画「ナイトフラワー」(25年)で、密売グループの元締役を演じ俳優デビュー。その好演で在京スポーツ紙7紙の記者が選ぶ「第68回ブルーリボン賞」の新人賞を受賞したのだ。

「渋谷さんは首元までタトゥーを入れた、なかなかイカついビジュアルですが、なんと山田洋次監督(94)作品の大ファン。『ブルーリボン賞』では、監督賞を受賞した山田監督と語り合っていたそうです。山田監督の次回作に起用されるかもしれません」(先の業界関係者)

バンドマンを起用する意味

 ところでドラマや映画など、映像作品に売れているバンドのメンバーを起用する狙いやメリットはどこにあるのだろうか?

「音楽界では名の知れた存在なので、WEBニュース記事で話題になると、ファンがSNSなどで拡散してくれるので宣伝効果は絶大です。また当人たちは演技の世界では新人で、監督や演出家の指示に素直に従うのも好感を持たれる理由のようです。しかし最も大きな理由は、ステージで鍛えた度胸があり、そのアーティストがこれまで培って来た経験や感性で、製作側の予想をいい意味で裏切ってくれることだそうです」(先の記者)

 まだまだ音楽界には、俳優として隠れた逸材がいるかもしれない。

デイリー新潮編集部