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ポルシェを苛立たせたマンタイの昇華能力

992型のポルシェ911 GT3 RSが、発表された時のこと。ドイツ南西部、ツッフェンハウゼンで活動する技術者の仕事は、中西部のモイシュパトへ拠点を置くレーシングチーム、マンタイによる開発を苦しませるだろうと想像した。

【画像】280km/hでダウンフォース1.0t以上 911 GT3 RS マンタイ 公道ベストな911 S/Tも 全122枚

そもそも、GT3 RSを崇高なサーキットマシンへ昇華させる、規模の小さいマンタイ・レーシングの能力へ、ポルシェは時に苛立ってきた。GT部門を率いる、アンドレアス・プロイニンガー氏を中心に。


ポルシェ911 GT3 RS マンタイ・キット(英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ファクトリー仕様では不可能な技術を、マンタイは911へ展開することが可能だった。巨大なリアウイングに、本気度の高いサスペンションやギリギリの車高。ポルシェのGT部門も劣らぬ技術を有していたが、量産メーカーとして認可の取得が展開を拒んだ。

本気度を知らしめる開発度のGT3 RS

だが992型「RS」の構想中に、タガが外れたのかもしれない。巨大なウイングは、ル・マンを戦う911 RSRの開発が絡んでいるのでは、と憶測した人もいたほど。

ボンネットの荷室は潰され、モータースポーツ直系といえる専用ラジエーターが鎮座。サスペンションのウイッシュボーンは、ダウンフォースを生成する断面を得ていた。本気度を知らしめる開発度といえ、複雑な認可手続きへ対応できた証拠でもあった。


ポルシェ911 GT3 RS マンタイ・キット(英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

観察するほど、マンタイ・レーシングが手を加える余地はなさそうだった。プロイニンガーの徹底したアップグレードに、スキはないように思えた。

それでも、英国シルバーストン・サーキットのピットレーンに、最新のGT3 RS「マンタイ」は降り立った。ポルシェが過半数の株式を保有し、ニュルブルクリンクを開発拠点とする、同社のワークショップから。

無数の空力アイテムで見事な変貌ぶり

その変貌ぶりは見事。ボディのあちこちに空力アイテムが追加され、窓を塞げそうなほど大きなサイドプレートが、DRS(ドラッグ・リダクション・システム )付きの巨大なカーボン製リアウイング両端に備わる。

ラジエターの熱い気流がウイングへ導かれないよう、ルーフには何枚もフィンが並ぶ。大きく張り出すフロントスプリッターは、ステーで支持される。リアホイールにはエアロディスク。後方には、巨大なディフューザーが突き出ている。いずれもカーボン製だ。


ポルシェ911 GT3 RS マンタイ・キット(英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

通常のGT3 RSへ組まれるビルシュタイン社製ダンパーは、専用スプリングとセットのKW社製ユニットへ置換。ポルシェが仕上げたPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)へ統合され、ステアリングホイール上から調整できる。

ブレーキラインも専用品。タイヤは、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで10秒縮められるという、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2 Rを履く。

280km/hで1.0t以上のダウンフォース

果たして、ダウンフォースは280km/hでの走行時に1.0t以上。それでいて、空気抵抗は増えていないという。通常のGT3 RSでも、860kgも生成されていたのだが。

マンタイ・キットのお値段は、英国では9万9999ポンド(約2100万円)。911 カレラを、別に1台購入できる金額といえる。そして、世界で最もアグレッシブなメーカー・オプションでもある。


ポルシェ911 GT3 RS マンタイ・キット(英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ポルシェとの深い関係性が築かれて10年が過ぎ、初めてGT3 RSの注文時に選択できるようになっている。コンフィギュレータで、選び忘れなければ良いだけ。従来のように、マンタイへ別途連絡する必要はない。新車保証も維持されるそうだ。

この続きは、ポルシェ911 GT3 RS マンタイ(2)にて。