『ぼくたちん家』©︎日本テレビ

写真拡大

 12月14日に放送された『ぼくたちん家』(日本テレビ系)の最終話。でっちあげたような夢を現実に変えていくために、“恋と革命”の物語を始めた玄一(及川光博)とパートナーの索(手越祐也)、そしてほたる(白鳥玉季)を含めた3人は、いつでも帰ることのできる“かすがい”となる場所を見つけることができた。

参考:及川光博×手越祐也×白鳥玉季、『ぼくたちん家』撮了 「終わってしまうことが寂しい」

 中学校を卒業したらギター職人になりたいという夢を見つけたほたるのために、車で一緒に長野県に向かう玄一と索。ギター工房に到着すると、主人の岸部康夫(井上肇)に中を案内されることに。ギターの制作風景に目を輝かせるほたるの姿を見て、あらためて彼女は本当に好きだと思えるものに出会えたのだと、時間差で嬉しさが込み上げてくる。

 本格的にギターを作れるようになるまでに10年以上はかかると言われても、迷わず「働きたいです! よろしくお願いします!」と大きな声で宣言するほたる。聞かれてもないのに彼女の良いところをいくつも答えようとする玄一のお節介なところも、それを聞いて恥ずかしさを覚えつつ、呆れた表情にちょっとした嬉しさを滲ませるほたるも微笑ましい。

 自分の夢を見つけたほたるだけでなく、登場人物それぞれが自分なりの生き方を実現するための一歩目を踏み出し始める。全国各地のキーホルダー集めを断念して、自首する決意を固めたほたるの母・ともえ(麻生久美子)は、アパートの大家・井の頭(坂井真紀)に呼ばれた警察官の松(土居志央梨)に大金を横領した本当の理由を話す。

 ともえの「結局、私はただ辞めたかっただけかもしれません。母親も経理の契約社員も全部ぶっ壊して、全部辞めたかっただけ」という思わぬ告白に、松も井の頭も「最低ですね」と率直な感想を伝える。それでも「私ももっとお節介すればよかった。そうすれば、もっと早く最低ねって言ってあげられたかも」と悔しがる井の頭。思えば彼女はずっと、いわくつきな人々を遠ざけることなく、彼らの複雑な事情に自ら進んで首を突っ込んでいた。この物語が常に朗らかな空気をまとっていたのは、カラッとした彼女の存在が大きかった。

 パートナー相談所の百瀬(渋谷凪咲)は井の頭アパートに住んでいる自分が一番好きだと自覚して、「私の“恋と革命”はここにいる自分から始めます」と決意を語り、ともえの言葉に影響されて旅に出ることにした井の頭の代わりに、大家代理を務めることに。男らしさの呪縛から解放された仁(光石研)は岡部(田中直樹)の不動産屋でドライバーとして採用され、索の元カレの吉田(井之脇海)は普通の社会に馴染むためにつけていた魔法の指輪を現実でも外す覚悟を決める。なんだかみんないい感じだ。

 そして、玄一と索の“恋と革命”もいよいよ佳境を迎える。提出することのできなかった吉田との結婚届をサービスエリアのゴミ箱に捨てようとする索を制した玄一は、ギター工房にて購入したお揃いのパーカーを着て、不動産屋の岡部が始めた「物件迷子さんインタビュー」にゲイカップルとして登場する。これもまた、“恋と革命”のための大事な一歩だ。

 そんな2人が灯した“恋と革命”の光に照らされた人物がいた。それが、前回のラストにも登場していたギター工房の主人・康夫の孫・和樹(柊木陽太)。彼は工房を見学するほたるに「周りのみんなと違うと、居心地悪いって思わない?」と問いかける。それは彼自身が徐々にゲイであることを自覚し始めていたものの、誰にも相談することができずに思い悩んでいたからだった。

 和樹は「物件迷子さんインタビュー」にゲイカップルとして登場していた玄一と索のペアルック姿を見て、わざわざアパートまで2人に会いにきたうえで、自らがゲイであることをカミングアウトする。「みんなと違う自分が本当に嫌で」と涙ながらに告白する彼を心配しつつも、優しい眼差しで見守る玄一と索。「ずっと誰かに話したかったんです。だから、辛いけど嬉しいです」と“ハーフ&ハーフ”の涙を流す和樹の姿は、2人にとっても過去の自分を見ているかのような気持ちだったのかもしれない。

 ほたるに証人になってもらい、“恋と革命”を実践するために彼らが区役所に提出した婚姻届は、結果として、現状の社会では受理されることはなかった。でも、“今はまだ”なだけで、未来では可能になっているかもしれない。実際、対応していた区役所の職員は「今日、おふたりがいらっしゃったことはきちんと伝えます」と玄一と索に約束する。彼らの“恋と革命”が起こした行動には、ちゃんと意味があった。ほたるがトーヨコの友達と学校で撮影したものの、卒業アルバムには載ることのなかった写真が、4人の忘れられない思い出として手元に残ったように。

 ほたるからの最後の留守番メッセージは母親ではなく、玄一に宛てたものだった。遠く離れていても、本当の家族じゃなくても、今の気持ちを届けたいと思える人とほたるは出会えたのだ。

「お母さんがいなくなるまで、トーヨコとか、離婚したお父さんとか、ゲイの人たちとか、ニュースで見るような事件とか、生き物たちとか、全部私とは関係ないって思ってました。でも違うなって。この世の中に私に関係ないものなんてないのかもって。そうやって思ってたら、私も優しい人になれるかな」

 成長したほたるが紡いだ言葉と、心から「ずっと一緒にいましょうね」と笑い合う玄一と索がひとつ屋根の下で一緒に暮らせることが、当たり前の世界になるように。無自覚な偏見やステレオタイプがすぐになくなることはないけれど、未来への希望が込められた物語を見届けた自分の意識から、まずは変えていきたい。

(文=ばやし)