『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』©2025 PARAMOUNT PICTURES.

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 5月第3週の動員ランキングは、『名探偵コナン 隻眼の残像』が週末3日間で動員34万6000人、興収5億1600万円をあげて5週連続1位。公開から31日間の累計動員は843万4000人、累計興収は122億100万円。ちなみに、前作『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』の同期間の累計興収は128億7600万円。前作比で約5%のダウンは誤差の範囲と言ってもいいが、それでも国内最大規模のヒットシリーズでは6億7500万円のショートとなる。4作連続での歴代シリーズ最高興収の更新に向けての雲行きが怪しくなってきた。

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 2位に初登場したのは、5月23日公開とアナウンスされながら、その6日前の5月17日から先行上映がスタートしたトム・クルーズ主演の人気シリーズ第8作目、『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』。土日2日間の成績は動員28万1000人、興収4億4900万円。数字を照らし合わせれば明らかなように、もし土曜日ではなく金曜日に公開されていれば、初登場1位となっていたはず。いや、そもそも先行上映なのに、どうして興行通信社はそれを週末のランキングに入れているのだろうか? 過去、先行上映分を正式な公開週の週末成績に上乗せして「大ヒットスタート」感を増幅させてきた時代を経て、近年では週末3日間の数字と先行上映分を合わせた数字が並記されて公開週に発表されてきた。

 映画興行を分析する本コラムがスタートしたのはちょうど10年前。10年もやってると、その間に何回か大きなルール変更に翻弄されることもあった。映画興行にまつわる近年の最も大きなルール変更は、それまで外国映画は金曜公開、日本映画は土曜公開が通例だったのだが(さらに時代を遡れば外国映画も土曜公開だった)、2018年度以降、東宝と松竹が自社配給作品を原則金曜公開にシフトしたことだ。やがて東映や角川も追従し、以来、特例を除いて日本映画も金曜公開が定着。それに応じて、興行通信社の動員ランキングも土日2日間から週末3日間の数字で発表されるようになった。つまり、それまで外国映画は週末ランキングで不利な条件で競わされていたわけだが、むしろその悪条件が取り払われてから、加速度的に全体のシェアを落とすことになったのは皮肉な話だ。他にも、2020年度から、チケット代が異なることもあってこれまで別枠で集計されていたODS作品も年間興収ランキングで統一して集計されることになるなど、細かいルール変更はいくつかあった。

 結論から言うと、今回の『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の先行上映に関しては、「公開日前週の金曜日ではなく土曜日に公開」「ウィークデイに入ってからも先行上映が継続」とイレギュラーなことがあまりにも多いので、これをもって「先行上映分をその週の週末ランキングに計上」というのが今後も通例化するかどうかは不明。というか、正式な公開日となる今週金曜日からスクリーン数は増加するものの、「ウィークデイに入ってからも先行上映が継続」している時点で、今回の事例は事実上「5月23日から5月16日に公開日が急遽6日前倒しされた」と捉えるべきだろう。当初の公開日に合わせてMOVIE DRIVERの動画を準備していた身としては「だったらもっと詳しく事前に教えてよ」と愚痴の一つも言いたくなるのだが、次週、実写外国映画としては今年初めてとなる1位の獲得に期待したい。

(文=宇野維正)