知識がない人は大損する「ねんきん定期便」正しい見方と落とし穴…ハガキが届いたら一番に見るべき項目【2025年3月BEST5】
2025年3月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。投資・年金部門の第3位は――。
▼第1位 「オルカン、S&P500」だけでは危険すぎる…資産3.7億円を築いた脱サラ投資家が「新NISA」で選ぶ"最強の投資先"
▼第2位 投資した瞬間に「負け確定」…ホリエモンが推す長期投資家が「絶対行くな」という場所、「絶対買うな」という商品
▼第3位 知識がない人は大損する「ねんきん定期便」正しい見方と落とし穴…ハガキが届いたら一番に見るべき項目
▼第4位 新NISAで9割の日本人はカモにされるだけ…荻原博子「絶対投資のアドバイスを受けてはいけない相手」
▼第5位 「オルカン」「S&P500」だけを買うよりずっといい…成功する個人投資家が「新NISAの枠」で必ず買っている有望株

■働き続ける人が増え、年金財政は大きく改善
毎年、誕生月になると送られてくる「ねんきん定期便」というハガキ。年金制度が破綻すると騒がれていた記憶もあるし、見方もよくわからないからサッと見たら捨ててしまおう――そんな方も多いのではないでしょうか。
ねんきん定期便とは、国の年金制度がきちんと運用されていることを伝えると同時に、将来自分がもらえる年金額を知らせるためのもの。私たちが老後の生活設計を考える際のベースとなる、とても重要な通知です。

年金制度に不安を持つ人も少なくありませんが、今のところ国の年金制度は適切に運用されており、私たちの払った保険料は将来ちゃんと年金として返ってきます。確かに日本は世界一高齢化が進んだ国で、人口ピラミッドは頭でっかち。そんな状況で年金制度を維持するのは難しく、少し前まで保険料はどんどん上がり続けていました。
そこで国は、このままでは現役世代の暮らしが厳しくなるばかりだとして、2004年に保険料率の上限を設定し「保険料の範囲内で給付を賄う」ことにしました。働く人が増えれば、入ってくる保険料も増えます。日本ではこのところ60歳を過ぎても働き続ける人や、今までなら専業主婦だったような女性も働きに出るようになったので、それが年金の財政収支改善に大きく寄与しているのです。
そして今後の年金収支を予測し、財政の健全性を確認するのが、5年に一度行われる「財政検証」です。
■もらえる年金額は「現役世代の50%以上」
財政検証には、「所得代替率」という目安が設けられています。所得代替率とは、「現役世代の手取り額」に対して夫婦で受け取る年金の割合を示しており、国は現状6割程度を維持、将来的にも50%を切らないように調整を行っています。つまり国の年金は、夫は会社員、妻は専業主婦というモデルを設定し、将来にわたって50%以上の年金額を支給することを「健全な状態」としているのです。
では、実際の個々人の年金額は一体いくらになるのでしょうか。年金額は年金受給開始年齢までの「年金に加入した期間」と「納めた保険料の額」で決まります。長く加入している人や保険料を多く納めた人は年金も多くなりますが、期間の短い人や保険料が少ない人は年金も少なくなります。
もし年金額が少なくて「たったこれだけ?」と感じる場合でも、年金受給が始まってからでは取り返しがつきません。このような悲劇を招かないために、「今のところ、あなたの年金額はこれくらいですよ。足りなければ自分でなんとかしてくださいね」と知らせてくれるのが、ねんきん定期便というわけです。先ほどの「所得代替率」が学校全体の偏差値だとしたら、自分の年金額は個人の成績表のようなものといえるかもしれません。
では、いよいよ「ねんきん定期便」の見方を解説していきましょう。
■給与明細や記憶と照らし合わせて確認を
ねんきん定期便は、50歳以上の人と、50歳未満の人とでは書式が少し異なります。まずは50歳未満の人から説明します。
50歳未満のねんきん定期便の〈表〉には、棒グラフのような図の中に、「これまでの加入実績に応じた年金額」の昨年と今年の分が載っています。これは、いうなれば現時点で確約された年金額。直近の1年間で将来の年金額がこれだけ増えたように、この先も保険料を納め続ければ年金額は増えていくということです。
仮にこの時点で保険料の支払いをストップしても、これまでに納めた保険料から、年をとったときの年金を計算するとこれくらいですよ、と教えてくれています。つまり「年金ポイント」がこれくらいたまっていますよ、というお知らせだと思えばいいでしょう。
そして50歳未満の人が特に確認すべきなのは、〈表〉の右側「最近の月別状況」という欄。ここは直近の保険料の納付状況を表しています。「国民年金」や「厚生年金」などと書かれているのは加入している年金の種類です。
国民年金の保険料は一律で定額ですが、厚生年金の保険料は給与や賞与の額に比例して変わります。給与は「標準報酬月額」、賞与は「標準賞与額」という端数を丸めた金額に直され、その額に応じた保険料が天引きされます。万が一、ここに漏れや金額の間違いなどがあれば、将来もらえる年金額が少なくなってしまいます。給与明細、もしくは自分の記憶と照らし合わせて確認しましょう。
次は〈裏〉です。「これまでの年金加入期間」の一番右の欄の「受給資格期間」も念のため確認しておきましょう。滅多にないケースだと思いますが、ここが120カ月に足りない場合は年金受給資格を満たせません。120カ月といえば10年。30歳未満の人が120カ月に満たないのは当然ですが、何かの事情で年金に加入しておらず、受給開始まで10年を切ったのに120カ月に満たないという人は、年金事務所に相談してください。挽回のチャンスがあるかもしれません。

■アナログ時代の間違いが訂正されていないことも
それでは50歳以上の人のねんきん定期便に移りましょう。50歳以上の人はいよいよゴールが近づいてくるので、〈表〉の棒グラフのような図には、1年間に受け取れる年金の「見込額」が記載されるようになります。これは現在の加入条件のまま60歳まで継続した場合の見込額なので、今後の働き方や加入状況次第で細かい金額は変わるかもしれませんが、ほぼ実際に近い数字だと思っていいでしょう。
また、この図で説明しているのは、年金の受給開始時期を遅らせると年金額が増えますよ、ということです。年金の受け取り開始年齢を遅らせることを「繰り下げ受給」といいます。年金支給開始年齢を過ぎていれば、好きな年齢から受け取りを開始できますが、ここでは例として70歳まで遅らせた場合と75歳まで遅らせた場合の金額の試算が載っています。この金額をにらみつつ、「いつから年金を受け取ろうか」など、老後の生活設計を立てるといいでしょう。
50歳以上の人の〈裏〉には、「老齢年金の種類と見込額(年額)」という欄があります。該当しない人は「*****」となっているので、何のことかわかりにくいと思いますが、これは男性で1961(昭和36)年4月2日以降の生まれ、女性で66(昭和41)年4月2日以降の生まれの人から廃止される「特別支給の老齢厚生年金」の見込額です。ここに記載があれば65歳前に特別支給の老齢厚生年金がもらえます。注意が必要なのは、「自分は繰り下げ受給をするつもりなのでまだ受けなくていい」と思っていても、特別支給の老齢厚生年金は繰り下げ受給ができないということ。請求せずに5年がたつと権利が消滅してしまうので、気をつけてください。

ねんきん定期便には「封書」で届くパターンもあります。封書が届くのは35歳、45歳、59歳になる月。ハガキと違うのは、勤務先の名前やそこで支払った保険料など、これまでの年金加入履歴がすべて載っていることです。
今は「年金Gメン」が目を光らせていますが、昔は規模の小さい会社では社会保険料を納めていないこともありました。また昭和や平成の初期まで年金記録はアナログでした。それをデジタル化する際に名前の読み方や性別などを間違うケースもあり、いまだにそれが訂正されていないことがあるので、加入履歴は必ず確認しましょう。

■年金は最大で「月30万」、まずは「未納」を確認
もし誤りが見つかっても、年金受給権が発生してから5年が経過すると申し立てても無効になってしまうこともあるので、気になるところがあれば早めに年金事務所に聞きましょう。
もしも封書を紛失してしまったという人は、ねんきん定期便記載の「ねんきんネットの『お客様のアクセスキー』」を使って、「ねんきんネット」にアクセスしてみてください。これまでの加入履歴や、将来の年金額を試算することも可能です。

さて、ご自身のねんきん定期便を眺めてきた人の中には、「年金って思ったより少ないな」という思いが浮かんだ人もいるでしょう。しかし公的年金は「防貧(ぼうひん)」を目的に設計されているので、ある程度の生活レベルを想定して給付されるものです。例えば24年度の平均的な支給月額は国民年金が6万8000円、厚生年金が9万4483円、合わせて月約16.2万円となっています。
この年金額は財政状況により変動しますが、国民年金については40年満期で納めた場合で、年額80万円(月額6.6万円)程度で直近推移しています。厚生年金は平均標準報酬額と加入期間の月数で計算されますが、厚生年金の標準報酬月額の最大値は65万円で、それ以上給料をもらっていても保険料は上がらず、将来の厚生年金額も増えません。同様に賞与は150万円・3回が上限となりますから、会社員が仮に現行の制度で40年間最高額の保険料を納めたとして月22万円程度が最高額です(フルの国民年金と合わせて約30万円が限界値)。
それでは、実際に年金を増やす方法としてはどんな方法があるでしょうか。iDeCoなど任意加入の年金に加入する方法もありますが、まずは公的年金という屋台骨をしっかりさせるのが先決です。
そのためには、まず自分の給料と加入月額を増やすこと。ただしこれは自分ではどうしようもない部分も大きいので、まずはねんきん定期便を見て、保険料未納の期間がないかどうかをチェックしてください。未納は基本的に2年前までならさかのぼって納めることができます。また学生であっても20歳を過ぎると国民年金に加入する義務がありますが、学生は収入がないため、払っていた人は少数派かもしれません。学生時代に学生納付特例を受けていた方も、将来の年金額には反映されないので給付額を増やすには10年間さかのぼって納めることが必要です。ただし3年以上前になると延滞税のように追加料金がかかります。だからこそ早めに気づくことが大事なのです。
ただし60歳を過ぎても国民年金の未納部分を払う方法はいくつかあるので、安心してください。まず60歳以降、国民年金に任意加入する方法があります。あるいは60歳を過ぎても会社で働く場合は、上限はありますが、厚生年金が自動的に未納の不足分を埋め合わせて支払ってくれます。これは今だけの特例で「経過的加算」といいます。
また夫婦二人なら、奥さんも働きに出て厚生年金の保険料を納めるという方法もあります。
■請求すればもらえる「加給年金」とは
そして年金を増やすには、何といっても受給開始時期を繰り下げることです。年齢を繰り下げれば下げるほど支給額は上がります。例えば70歳まで繰り下げれば、65歳からもらった場合と比較して、1.42倍になります。
ただし働きながら厚生年金を受給すると、年金が減額されることがあります(在職老齢年金)。このあたりの兼ね合いについては、一度年金事務所に聞いてみたほうがいいでしょう。
さらに「ねんきん定期便」には書かれていませんが、厚生年金には請求すればもらえる「加給年金」というものがあります。家族手当のような年金で、65歳になった時点で年下の配偶者がいる場合(1カ月だけ年下でもOK。配偶者は夫でも妻でも可)や、扶養している子供がいる場合に支給される上乗せの年金のことです。これも繰り下げ受給をするともらえなくなるので注意してください。この場合は国民年金部分だけ繰り下げて、厚生年金は繰り下げない、という手もあります。
年金の保険料は税金のように戻ってこないことを前提に、仕方なく払うものではありません。実は年金は、「10年受給すれば、過去に払った保険料のぶんはもとがとれる」と言われています。繰り下げ受給をすれば、もっと短い年数でもとをとれます。
年金は「もらうもの」ではなく「自分でつくるもの」と思って、「ねんきん定期便」を活用してください。

■ねんきん定期便を「チェックしていた人」と「していなかった人」の残念すぎる違い
ファイナンシャルプランナーをしていると、実にいろいろな方が相談にいらっしゃいます。皆さん共通の関心事は「老後資金をいかに確保するか」ということですが、そのために努力している人と、そうでもない人がいます。その違いはねんきん定期便の扱い方に顕著に表れるようです。
「国が送ってくる書類は書き方が不親切で、読む気がしない」「遠い未来の年金より目の前の仕事で忙しい」
そう言いたくなる気持ちもわかります。しかし、ねんきん定期便をしっかり読み込んでいる人と、ろくに見ないで捨ててしまう人とでは、長い間に「天国と地獄」ほどの差が開いてしまうというのが私の実感です。
あるときこんなお客様がいました。「どうせ年金なんてアテにならない」と思い込み、ねんきん定期便が来ても放置してきた独身の女性です。しかし自分で老後資金を積み立てていたわけでもなく、実際に還暦が近づいてから支給される年金額を知り、「これではとても暮らしていけない」と私のところに駆け込んできました。
その方には仕事をできる限り続け、年金受給をギリギリまで繰り下げることをアドバイスしました。しかし、「こんなことならもっと早くから、ねんきん定期便を読んでおけばよかった」と後悔されていました。
また別の方は、ねんきん定期便に記載されている年金の見込額を「月額」だと勘違いしていました(実際は年額です)。その方は年金に加入していた期間が短く、見込額も低かったため、早とちりしてしまったのでしょう。
またある方は結婚で姓が変わってからの年金記録がごっそり抜け落ちていたことに気づかず、あやうく大事な年金が大きく減額するところでした。
これは極端なケースですが、日本に住んで税金さえ納めていれば、ほかに何もしなくても、年をとれば自動的に年金がもらえると信じていた人もいました。「ねんきん定期便が届いていたのでは?」と聞くと、「届いていたかもしれないけれど、まだ若い自分には関係ないと思っていた」そうです。
定期便をファイリング、40代から毎年チェック
そうかと思えば、毎年のねんきん定期便を穴があくほどチェックし、すべて捨てずにファイリングしている几帳面な方もいらっしゃいます。この方は現在60代の男性ですが、まだ40代のころからねんきん定期便が届くたびにチェックしていたそうです。
その甲斐あって、過去の転職期間中に保険料未納期間が4カ月分あることに気づき、あとから国民年金保険料を納めることができました。おかげで国民年金の加入期間はすべて埋まり、満額の受給が約束されています。この方の場合、古いねんきん定期便も捨てずにファイルしているので、「年金額が年々少しずつ増えているのを見るのが楽しみだった」とのことでした。
ネットで年金について調べる人も多いと思いますが、いい加減な情報も少なくありません。不明点や不安な点があれば、ねんきん定期便を持って年金事務所に行くことをお勧めします。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2025年1月31日号)の一部を再編集したものです。
(初公開日:2025年3月27日)
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山中 伸枝(やまなか・のぶえ)
ファイナンシャルプランナー
アセット・アドバンテージ代表取締役。心とお財布を幸せにする専門家、ファイナンシャルプランナー(CFP)、確定拠出年金相談ねっと代表、一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務。2002年にファイナンシャルプランナー(FP)として独立。著書に、『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)、『ど素人が始めるiDeCoの本』(翔泳社)などがある。
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(ファイナンシャルプランナー 山中 伸枝 構成=長山 清子)
