@AUTOCAR

写真拡大 (全3枚)

まるでダース・ベイダーのような見方

ここまで話が進んでいるとは! 台湾の鴻海科技集団(以下、ホンハイ)が4月9日に都内で開いた『ホンハイEV戦略説明会』で公開された内容に、来場した自動車業界関係者やメディア関係者は驚かされた。

【画像】4月9日に都内で開催された『ホンハイEV戦略説明会』の様子 全13枚

登壇したのは、ホンハイでEV関連のチーフストラテジーオフィサーを務める関潤(せきじゅん)氏。日産に33年間従事し、執行役・副COO(チーフオペレーティングオフィサー)となった後、ニデック(旧・日本電産)のCEOとなり、2023年からホンハイに移った。


都内で開催されたホンハイEV戦略説明会には、300人を超える参加があった。    桃田健史

会の冒頭、関氏は「なぜ、このタイミングでこうした機会を設けたか?」について説明した。それによると、きっかは昨年12月の日本経済新聞社による報道だという。

本田技研工業(以下、ホンダ)と日産自動車(以下、日産)の経営統合に向けた協議の中で、ホンハイが日産に買収をしかけたことで日産が危機感を持ち、ホンダとの話し合いが加速したという内容だ。

これを受けて、その後に正式発表されたホンダ、日産、三菱自動車(以下、三菱自)の経営統合に向けた協議が始まってからも、メディアや自動車産業界からはホンハイについて「まるで(米映画スターウォーズの)ダース・ベイダーのような見方をされた」と関氏は表現した。

電機メーカーのシャープを傘下に収めたこともあり、そうした流れが自動車産業界にも及ぶのではないか、という憶測だ。つまり、自動車産業、また日本全体に対する敵として見られたということである。

だが、それは誤解であり、また日本ではホンハイは知名度がまだ低いという認識を持ったため、今回の説明会開催を決めたという。

売上30兆円規模のグローバル企業

説明会の内容としては、事業紹介、台湾について、EV市場、EV戦略、開発中のEVの紹介という順で話が進んだ。

まず、事業紹介では、年間総売上32兆円、時価総額24兆円という優れた財務実績を強調した。これだけの規模で事業が行える背景には、グローバルEMS市場のほぼ半分にあたる、46.1%(2023年実績)という高いシェアを持つからだ。EMSとは、電子機器の受託製造を指す。つまり、B2B(事業者間取引)である。


ホンハイEV説明会で登壇する、関循氏。    桃田健史

具体的にはスマートフォン、タブレット、デスクトップコンピュータ、サーバー、ゲームなどの機器などがある。顧客については、アマゾン、アップル、グーグル(親会社はアルファベット)、マイクロソフト、任天堂、ソニーなど、錚々たる企業の名前が並ぶ。一般的には、iPhoneを製造している会社として、ホンハイの存在が語られることが多い。

もともとホンハイは、コネクターを製造するメーカーだったが、電機関連商品がグローバルで広がる中で、EMSというビジネス手法を積極的に取り入れて順調に業績を伸ばしてきた。

ところが、2017〜2019年頃にかけて売上が横ばいとなった。こうした状態からの脱却を目指して、中期経営戦略『3+3』を打ち出した。

最初の『3』は産業を指す。自動車、デジタルヘルス、ロボティクスの3領域。次の『3』は、テクノロジーのことで、AI(人工知能)、半導体、そして衛星通信などの次世代通信技術だ。このうち、自動車ではEVに特化する。

多様なEVベースモデルが存在

グローバルEV市場を俯瞰すると、すでに競争が激化している高価格帯EVと、低価格帯での乗用と商用のEVでビジネスチャンスがあると、ホンハイでは見ている。

これらEV領域に対して、ホンハイはふたつのアプローチで望む。ひとつは、iPhoneのように、顧客(自動車メーカー)が企画、設計した商品をホンハイが製造する方法。もうひとつは、ホンハイが企画、設計したベースモデルを顧客(自動車メーカー)に購入してもらい、その製造もホンハイが行うという手法だ。当面は、後者を事業の中心として、将来的には前者のパターンに持ち込みたいという。


ピニンファリーナがデザインした『フォックストロン・モデルB』。    フォックストロン

こうした説明をした上で、ホンハイが提案する各種ベースモデルを紹介した。ホンハイの説明順で言えば、CセグメントSUVの『モデルC』。2023年12月から生産しており、2025年にアメリカに輸出する。

次いで、イタリアのピニンファリーナがデザインしたBセグメントの『モデルB』もでる。2025年に台湾で投入し、2026年には日本メーカー向けでオセアニアに投入する。

さらに続いて、『モデルD』もピニンファリーナ・デザインで、こちらはMPV(マルチパーパスビークル)。『モデルE』は高級セダン。そして『モデルA』は小型EVで20社ほどと連携予定で、日本には2026年に導入。

商用車では、すでに台湾で導入済みの大型バス『モデルT』や、日本にも導入予定の小型バス『モデルU』がある。このほか、今回は画像がなかったが、ピックアップトラックと大型バンの用意もあるという。こうした各モデルについて、日本の自動車メーカー各社との協議が続いていることも明らかにした。

まさに『100年に一度の自動車産業大変革』を感じさせる、ホンハイのEV戦略。はたして成功するのか、今後も取材を継続していきたい。