この製品値上げは欧米をはじめ、各国で相次ぐ。コスト上昇に伴う製品価格の引き上げという新価格体系の構築ということだが、日本ではそれが一向に進まない。

 海外の動きはどうか?

 実際、国産の醤油だが、キッコーマンは戦後間もない頃から、海外販売、そして50年前から欧米での生産を開始。今や売上高の7割強を海外で販売し、全利益の4分の3を海外であげている。グローバル企業で、海外では生産コストアップ分を反映した製品値上げをすでに実施済み。

 名誉会長の茂木友三郎氏は日本生産性本部会長を務め、日頃、日本の生産性向上に腐心している。その観点で茂木氏が語る。

「値上げが海外はできる。米国も欧州もきちっとできる。コストが上がっている事情をしっかり説明すれば、流通業者も消費者も納得する。コスト上昇があっても、日本はそれに抵抗する。これは日本経済をひん曲げていると思いますね」

 産業向けで個人消費関連にもなる段ボールメーカーの首脳は2022年4月に第1回目の値上げ意向を表明、「顧客にもよりますが、大体、半年ぐらいかけて少しずつ浸透していった。まさに2回目をやらなければいけない所に追い込まれていますが、今度は結構抵抗が強くて……」と苦笑する。

 顧客の紙卸(問屋)まで値上げの話が浸透したとして、そこから先の飲料メーカーや食品製造会社に卸す段階で抵抗が根強く、実現できないでいる。

 物価は上がっているのに、賃金は上がっていないという現実の中で、消費者の抵抗は強く、新価格体系の構築もままならない。

 物価は上がっているのに、賃金は上がらないという現実が2022年まで続いた。


『取引適正化』は
賃上げ問題と直結する
 賃金を上げて、物価高騰を吸収する経済をどうつくり上げていくか?

 賃金引き上げで所得向上を図る。そのことが消費を高めることにもなり、引いては企業間の取引も適正化されることにつながる。結果的に経済全体が上手く循環するということである。

 この賃金引き上げは、菅義偉・前首相時代に〝最低賃金引き上げ〟という形で始まっている。

 三村・前東商会頭は、菅内閣の『成長戦略会議』にメンバーとして参加。同会議のメンバーの大半が「賃上げすべき」としたとき、「賃上げは必要だが、中小企業には賃上げ余力が乏しい」と発言。

 中小企業の場合、付加価値の80%程度は人件費として支払われているという現実の中で、どう解決策を見出していくか。

 元来、付加価値を高めるには、コストダウンという手法と製品価格の引き上げという2つのやり方がある。後者は、原材料価格の引き上げを製品価格に転嫁できるということ。それが全体に浸透していくには、経済合理的な土壌作りが広まる必要がある。

「日本全体が活性化するためには、99・7%を占める中小企業が活性化しないといけない」

 小林氏はこう語り、「大企業と中小企業との取引を適正化すること。要するに、サプライチェーン(供給網)全体で利益もコストも適正に分かち合う」という方向でソリューション(解決策)を見出していくことが大事と強調。

 大事なのは、『取引適正化』問題は、今の賃上げ問題と直結しているということである。

『取引適正化』を実現していくために、東商は〝パートナーシップ構築宣言〟をすでに行っている。

「『パートナーシップ構築宣言』には国の後押しもあり、宣言企業数は増加しています。すでに1万7千社以上の企業に参加してもらっていて、これはわたしが商工会議所の会頭に就任して、第一に力を入れていこうと。サプライチェーン全体でコストを負担し、利益をシェアしていって、共に成長していこうという考え方が大切です」