原材料高騰下、製品値上げ・賃上げの好循環をどう作るか? 日本商工会議所会頭・小林 健の 大企業と中小企業のパートナーシップで
「やはり、日本の国力をアップするためには産業力の強化が大事であると。日本の企業の99%は中小企業ですから、その方々の生活を向上させないと日本全体の成長もない。そのことを強く強調したいと思います」
全企業の99%強、全労働者数の7割を占める中小企業ということだが、この中小企業の経営にはいろいろな種類、タイプがある。
大企業を中心にしたピラミッドの中に所属する中小企業。これは下請け、孫請けというサプライチェーンの中で活動。他方、独自の技術やサービスを開発し、主体的に動く独立型もある。
そうしたいろいろな種類の中小企業がある中で、中小企業の生産性とは一体何だろう? という小林氏の問題意識。
「中小企業の生産性を考える際、参考となるのは、付加価値に占める人件費の割合、すなわち、労働分配率です。中小企業の労働分配率は75%~80%で非常に高い。したがって、残りの20%ないし、25%で税金を払い、投資をしているわけです」
小林氏は、賃上げ問題を含めて、いろいろな問題がこの中小企業の労働分配率の高さに関わってくると指摘する(インタビュー欄参照)。
ちなみに、大企業の労働分配率は45%前後。この数字を見ても、賃上げをする余裕が中小企業と比べてあることが分かる。
では、生産性をどうやって引き上げていくか。
大企業も中小企業も日本が相当遅れているのはIT、DX(デジタルトランスフォーメーション)として、小林氏は「まずはDXへの取り組みを通じて生産性を高める。これについては、商工会議所も伴走型で支援していきます」と語る。
DX化は世界的な流れであり、当然これはやるとして、日本の場合は、大企業と中小企業の間の『取引の適正化』問題を抱えているということがある。
この『取引の適正化』問題は、三村前会頭時代も大きなテーマとして取り上げられてきた課題。
大企業と中小企業の間の
『取引適正化』問題
小林氏は三菱商事社長時代(2010―2016)に東商副会頭を務めている。この『取引適正化』問題は副会頭時代から腐心しており、次のように述べる。
「高度経済成長の時代は、大企業はコストカットのために、下請け、孫請け企業に相当負担を強いてきました。コストカットが成長の源泉だったのです。生産性向上のためにはコストカットが近道だと考えた企業経営者が多かったのかもしれません」
小林氏は、自分が東商に入って以来、中小企業が大企業のコストカットに追随していく姿を目の当たりにしてきた。
「10年くらい前の円高不況局面でも大企業によるコストカット要請があり、中小企業は相当な努力をして、この要求に応え、日本全体で円高をしのいでいきました。そして、今は逆に円安局面になって、再びコスト負担を押し付けられるのかと、中小企業は非常に辛い思いをしています」(インタビュー欄参照)。
大企業と中小企業間の、この『取引適正化』は、日本の産業構造において相当に根深い問題。
本来、民間同士の取引は自由に任せるのが資本主義の基本である。ところが、現実には大企業の力が相対的に強い。このため、中小企業が大企業に納める製品の価格値上げを訴えようとしても、なかなか通らない。
とりわけ、下請けという関係になると、交渉の場さえないという現実が続く。
今、コロナ禍、ウクライナ危機の影響で、資源・エネルギーや食糧の供給が制約され、世界的にインフレ、物価上昇が進む。原材料コストが上昇し、企業は製品価格にそれを転嫁しようと動く。
