「シュローダー日本株ESGフォーカス・ファンド」の運用責任者であるシュローダー・インベストメント・マネジメント運用部 日本株式チーム ファンドマネジャーの豊田一弘氏(写真)に、同社のESG投資の実際について聞いた。

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 コロナショックを契機として、国内でもESG投資についての関心が急速に高まってきた。英ロンドンに本拠を置くシュローダー・グループは、欧州を中心に世界的な潮流となってきたESG投資についてエキスパートと目され、その企業分析手法やエンゲージメント(企業と投資家との建設的な対話)等が注目されている。国内ファンドでは、「シュローダー日本株ESGフォーカス・ファンド」が、シュローダー・グループのESG投資のノウハウを活かした代表的なファンドになる。同ファンドの運用責任者であるシュローダー・インベストメント・マネジメント運用部 日本株式チーム ファンドマネジャーの豊田一弘氏(写真)に、同社のESG投資の実際について聞いた。

 ――「ESGは日本株投資の収益の源泉である」ということですが、その理由は?

 ESGは、環境の「E」、社会の「S」、ガバナンスの「G」ですが、私は、ESGの本質は、ステークホルダー・マネジメントではないかと考えています。企業は、株主をはじめ、あまたのステークホルダーに囲まれながら経営を行っています。適切な関係性をステークホルダーとの間で構築できる企業が、ESGの観点で優れた企業であると捉えることができると思います。

 伝統的な企業評価の尺度は、利益やキャッシュフローを重視した尺度ですが、ESGの評価というのは、利益やキャッシュフローを生み出すもとになるもの、すなわち、ステークホルダー・マネジメントの妥当性を評価したフレームワークであるといえます。

 「環境」、従業員を含めた「社会」、そして、「ガバナンス」で、様々なステークホルダーと適切な関係性を構築できる企業が、長期的に利益を伸ばすことができると考えられ、その意味で、ESGは長期投資に欠かせない指標であると考えます。

 企業をとりまくステークホルダーとは、顧客や仕入れ先である供給者、従業員、地域社会、そして、広い意味での環境や規制当局などです。企業を取り巻くステークホルダーとの関係そのものが企業の付加価値と考えられ、ステークホルダー・マネジメントとは、この付加価値を持続的に拡大させることにあります。

 たとえば、従業員にしわ寄せがあると、一時的には利益を出せるかもしれませんが持続的に利益を作り出していくことは難しいといえます。コロナ禍について考えると、仕入先を支援している企業があります。仕入先の支援によって自社の利益を犠牲にしますので、短期的な利益はマイナスにみえますが、仕入先への配慮が行き届いている企業は中長期では利益を拡大させることができると捉えるべきだと思います。

 ESGは短期的な収益の奪い合いということではなく、中長期の視点で収益を拡大させるために、今現在の利益をどのように分配すればよいのかという風に捉え直すツールであると考えています。

 ――コロナウイルス感染拡大と日本企業のESGの取り組みは?

 ESGにとって、コロナ禍は大きな意味合いを持っています。「E」の側面では、2020年はCO2削減量が7%程度になるといわれていますが、これは第二次世界大戦後、最大の削減量になります。この7%は、地球の平均気温が工業化以降に1.5度以上の上昇にならないようなCO2の削減量に相当します。世界的な外出自粛のなかで実現した7%削減ですので、これを継続することは非常に困難だといえます。

 このような中で、役員報酬のKPI(重要業績評価指標)にCO2の削減量を取り入れたエネルギー企業が出てきました。役員報酬のKPIにCO2の削減量を取り入れている企業は、ほとんどありません。マネジメント(経営陣)のコミットメントという点で大変すばらしい取り組みであると思います。