デニーズが売りの"生パスタ"をやめたワケ
■131種類のうち70種類が変更
3月13日、ファミレス「デニーズ」が、過去最大規模となるグランドメニューの改定を実施した。見直したのは131種類のうち70種類。ハンバーグやパスタなど既存のメニュー27種類の品質を向上させ、43種類の新規のメニューを投入。デニーズではこれまで、一度に改定の対象になるのは全体の2〜3割程度にとどまっており、5割超となるのは異例の規模といえる。外食産業はいま、需要拡大が続いている。メニューを大幅刷新することで、この需要を取り込もうという考えだろう。
■セブンのおにぎりと同じもち麦を使用
主力商品のひとつであるハンバーグでは、「All Beef ハンバーグ〜たまねぎソース」を新たに投入した。素材には、牛肉の世界三大品種のひとつであるアンガス種を使用。肉の比率をこれまで以上に高め、うまみを感じる仕立てにしたという。食感は従来のしっかりしたものから、ふっくらしたものに変更した。このほかのメニューでも、素材を切り替えたり、味わいや食感などを変えたりと、大胆な見直しを行っている。
デニーズがセブン&アイ・ホールディングス傘下である強みも発揮された。たとえば、新メニュー「ローストビーフとケールの24品目彩りサラダ」にはもち麦が使用されているが、これはセブン−イレブンのおにぎりで使うもち麦と同じものだ。ワインはセブンのプライベートブランド「セブンプレミアム」のものを導入し、299円(税別)から199円(税別)に値下げした。
飲食店において、顧客を飽きさせずにリピートしてもらうために、定期的なメニューの改定は非常に重要だ。同じメニュー、同じ味が延々と続けば、いずれ飽きが来てしまう。次の来店を促すためにも、新商品を絶えず投入し続けていく必要がある。
また、消費者が好む味付けや食感、風味などは時代とともに変わるため、メニューを微調整する必要もある。ちょっとした変更で、売れ行きが大きく変わるケースも少なくない。実際デニーズでは、2014年にパンケーキの“ふわふわ感”を増したところ、売れ行きが4〜5倍になったという。
■メニュー改定を小規模にするガスト
面白いことに、競合のファミレス「ガスト」を運営するすかいらーくは、去年からメニューの改定規模を抑える方針を掲げている。店舗作業の簡素化を図るためだという。デニーズとは対照的な動きだ。
すかいらーくでは、約10万人もの従業員が働いており、オペレーションの習熟度向上が課題となっていた。メニュー改定で客数を伸ばすよりも、従業員の習熟度向上を優先する方針だ。
すかいらーくの売上高は、堅調に推移している。17年12月期は前年比1.4%増の3594億円だった。一方、人件費などを含む販管費が売上高に占める割合は61.7%で、前年から1ポイント上昇した。これは、店舗オペレーションの効率が悪化していることを意味する。そこでメニュー改定の規模を小さくして作業量を減らし、売上高販管費率を抑えたいというわけだ。
ガストは現在、全国で1400店弱を展開し、ファミレス業界における店舗数ランキング1位だ。対するデニーズは全国に400店弱。店舗数ランキングは5位で、存在感が十分大きいとはいえない。ガストとの間には、1100店弱のサイゼリヤ、700店強のジョイフル、600店弱のココスが立ちはだかっている。
前述の通り、目下、外食市場は盛り上がりを見せている。日本フードサービス協会によると、17年の外食売上高は前年比3.1%増と3年連続で前年を上回っているという。デニーズとしては、この需要を取り込み、競合店に対抗するための手段として、大幅なメニュー改定を選んだのだろう。
■価格据え置きで生パスタから乾麺に
ただ、この変化は客離れのリスクもはらむ。パスタメニューで使用する麺を、生パスタから乾麺に切り替えたのは、不安材料だ。
セブン&アイ・フードシステムズでは、切り替えの理由を「生パスタ・乾麺の流通量、取引メーカーからの情報、社内での調査など、総合的に調べたところ、市場ニーズは乾麺のほうが高かった。また、ソースとの相性も乾麺のほうがいい」と説明する。
とはいえ、「生パスタが食べられるから」とデニーズを選んでいた人が、乾麺に変わったことで来店しなくなるリスクはある。一般的に、乾麺よりも生パスタのほうが単価は高く、家庭ではあまり食べる機会がない。モチモチとした食感を好み、外食では生パスタを食べたいという人は少なくないのだ。
もうひとつ、価格の問題もある。パスタメニューの価格は基本的に据え置きになった。「いかと青じそのたらこソース」は、改定前と同じ799円(税込862円)のままだ。一般に単価が低い乾麺に切り替えたにもかかわらず値段が変わらなければ、消費者が割高感を覚える可能性はある。セブン&アイ・フードシステムズは、価格を下げなかった理由として「乾麺に変更したことでできた原資を、パスタと絡めるソースの原材料の品質を上げることに活用した。例えば『卵にこだわった濃厚カルボナーラ(税込916円)』では、ソースに使用する卵を『エグロワイヤル』という高品質な原材料に変えた」と説明する。
飲食店、特にファミレスにおいてメニュー改定は、価格帯を変えるタイミングでもある。単純な価格帯の引き上げでは客離れにつながるリスクがあるため、提供する量を減らしたり素材の質を落としたりして対応する外食店は少なくない。消費者は、案外こうした変化に敏感だ。
今回デニーズが実施したパスタの変更は、「麺の質を落とした」と捉えられるリスクをはらんでいる。代わりに「ソースの質を上げた」という部分で、どれだけリカバーできるのか。この点は注視していく必要があるだろう。
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店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)

