人気を博す中日戦力外の選手たち

 これが本当に戦力外なのか。中日で自由契約となった選手たちが、今オフのストーブリーグを盛り上げている。

 今オフ、第1次通告期間に辻孟彦、井上公志、矢地健人、小田幸平、田中大輔、中田亮二、森越祐人、井藤真吾、堂上剛裕、宋相勲。10月30日には新たに吉川大幾、川崎貴弘を加えた計12人を自由契約とする大なたを振るった。

 特に立浪和義の後継者として「背番号3」を託された高卒4年目・吉川の退団は大きな波紋を呼んだ。

 宮崎のフェニックスリーグに参加中、谷繁監督に練習態度を叱責されて名古屋に強制送還となり、直後に落合GMから戦力外に。以前から2軍監督に説教を受けるなど、練習態度が問題視されることがあった一方で、1年後に入団してきた高橋周平ら後輩に対し、兄貴分として面倒見の良さも見せていた選手だ。

 プレー面でも一昨年から俊足を生かすために両打ちに挑戦するなど、将来が期待された有望株。それを裏付けるように、2週間後には巨人入りが決定した。

すでに5選手の“再就職先”が決定

 新天地に移るのは吉川だけではない。

 同じ巨人には、勝負強さが光る堂上剛が育成枠で入団。田中がオリックス、矢地がロッテ、森越は阪神と契約を結んだ。20日に行われた第2回12球団合同トライアウトを待たずして、5人の再就職先が決定。2年連続Bクラスに沈んだチームの構想を外れた選手が、異例の人気を博している。

 なぜ、「元中日」ブランドが重宝されるのか。

 中日から他球団に移ったあるスタッフは「中日の選手は本当に野球を知っていた 。同じことを今のチームで伝えても、なかなか理解できない」と漏らしたことがある。落合GMが監督として率いていた時代、12球団担当スコアラー制を導入し、ミーティングの段階から質の高い野球をたたき込んできた。戦力面はもちろん、そうした選手が、周囲へ及ぼす影響も無視はできないはずだ。

 主力で立場が違うとはいえ、昨年は自由契約となった井端が巨人に移籍し、リーグ3連覇に貢献した。オレ流の薫陶を受けた選手たちが、来季も復活を目指す中日の大きな壁となりそうだ。