まずは信頼できる同僚のところへ行って、自分の考えをぶつけてみよう(Getty Images=写真)

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■あらゆる問題に取り組むことは不可能である

うちの部署の連中はいつも会議に遅れてくる。わが社の産休・育休制度はひどく不十分で、ITシステムは時代遅れだ。こうした職場の問題に腹立たしさを感じるのはよくあることだ。だが、愚痴をこぼすだけでなく行動を起こすとしたらどのようなときだろう。

ひとつ確かなことは、職場のあらゆる問題に取り組むことはできないということだ。人の持つ政治資本の量には限りがある。取り組みたい問題が極めて重要だと確信していても、一度にすべてに取り組んだら信用が損なわれるかもしれない。「ばかげたことで大騒ぎしたら、本当に大事なとき思いどおりにできないかもしれない」と、戦略コンサルタントで“Reinventing You: Define Your Brand, Imagine Your Future”(邦訳『「新しい自分」をつくる法』)の著者、ドリー・クラークは言う。また、「観察眼の鋭い問題解決者とみなされるか、人の気分を落ち込ませる名人とみなされるかは、その間にある1本の線を越えるかどうかで決まる」と、ハーバード・ビジネススクール・プレスの『HBR Guide to Office Politics』の著者で、『How Will You Measure Your Life?』(邦訳『イノベーション・オブ・ライフ』)の共著者、カレン・ディロンは言う。その線がどこにあるかを見きわめることが重要だ。『Rebels at Work: Befriending the Bureaucratic Black Belts and Leading Change from Within』をカルメン・メディナ(後半のケース参照)と共同執筆したロイス・ケリーは、賢い人間は時間とエネルギーを投入する価値がある問題は何かを慎重に見きわめると言う。問題が小さいものだろうと根本的なものだろうと、取り組むべきかどうかを判断する助けになる原則を紹介しよう。

■自分にはどこまで権限があるか?

問題に取り組む前に、成功するだけの信用と権限が自分にあるかどうかを見きわめる必要がある。「変革を起こそうとする人が自分の能力をすでに実証している場合は、人々はその人の要請を進んで受け入れる可能性が高い」と、クラークは言う。上司や同僚と良好な関係を保つために最善を尽くそう。変革の戦いが自分の職務の一環である場合も、やはり戦いやすくなる。

自分の職務範囲に収まるような形で、その問題を説明しよう。それが難しい場合は、自分が実現したい変革が含まれるように自分の職務内容を正式に変える努力をしよう。

問題を指摘するときは必ず建設的な解決策も提示できなくてはいけない。「建設的な形でアイデアを出す人とみなされる必要がある」と、ディロンは言う。問題があると思っているのに改善する方法がわからないという場合は、問題提起する前に少し時間をとって、その問題について調べたり、ほかの人々に話を聞いたりしよう。反逆には代償がともなうのだから、それだけの価値があると確信していなければならない。その問題は自分にとって腹立たしいだけなのか、それとも自分や同僚の重要な仕事を本当に妨げているのかをしっかり見きわめよう。

また、リスクを徹底的に検討しよう。「スターバックスの代わりにダンキンドーナツのコーヒーにしよう、という改革運動に乗り出すとしたら、プラス面は自分の飲みたいコーヒーが飲めることだが、マイナス面は非生産的な狂信者だと思われることだ」と、クラークは注意を促す。ケリーも同じ考えで、「成功する反逆者は、組織にとって何が重要かを把握する高感度のレーダーを備えている」と言う。彼女は問題の重要度を1から10までの基準で評価することを勧め、重要度が6以下なら、やめておくべきだと言う。自分の解決策が自分のグループなり会社なりを目標に向けてどう前進させるかを説明できなくてはいけないと、クラークは言い添える。比較的小さくて最小限の資源で解決できる問題なら、取り組む価値があるかもしれない。

■飛び込む前にアイデアを人に話してみる

変革は難しいことで知られている。飛び込む前に自分のアイデアをテストにかけよう。「信頼できる複数の同僚のところに行って、自分の考えをぶつけてみよう」と、クラークは言う。「彼らがそれには超人的な努力が必要だと思うなら、考え直したほうがよいだろう。逆にそれは成功しそうだと思うなら、心強いデータを得たことになる」。公式なミーティングを開く必要はない。会話の中で自然にその話題が出たときに、自分の考えている解決策を提案してみればよいのである。たとえば、長い会議の後で、「会議に時間をかけすぎているような気がするんだが、もっと早く進めるためにスタンディング・ミーティングにしてみてはどうだろう」と言ってみてもよいだろう。それから、その提案に人々がどう反応するかを見るわけだ。

解決策を話して回ることで、早いうちから支持を集められることがある。味方がいれば非常に戦いやすい。「案を打ち出す時期がきたとき、周りから学んだことを具体的に指し示すことができる。それは、その考えがあなた一人のものではないという証しになる」と、ケリーは言う。幅広い支持を得ていることを示すため、日頃から親しい人以外にも支持を求めよう。

だが、こっそり味方に引き入れようとしているという印象を与えてはならないと、ディロンは言う。目的は同じ考えの人々を集めて、解決案を出し合い、議論することだということをはっきり伝えよう。また、「いつも不平を言っている人や自分自身は戦う気がない人と組んではならない」と、彼女は言い添える。「広く敬意を集めている人々を選ぶことが大切だ」。

上司を引き入れることが助けになることはある。だが、代わりに戦ってもらうことを期待してはならない。「何かを変えたいと思うたび、上司に助けを求めるわけにはいかないはずだ」とディロンは言う。「しっかり練り上げた改革案と、どんな手順で取り組むかという作戦を用意してから上司に話をしよう」。

■なぜ彼女は新たな戦略を実行できたのか?

デロイト・コンサルティングのスペシャリスト・リーダーという現在のポジションにつく前に、カルメン・メディナは政府の保安機関で働いていた。勤めて10年経った1990年代半ば、彼女はその機関のビジネスモデルにはデジタル戦略が欠けていることに気づいた。「これは本当に重大な問題であり、何とかする必要があると思うようになった」と、彼女は語る。彼女はその機関に電子的手段による政策決定者への情報伝達方法を考えてもらいたいと思っていたのだが、ほとんど耳を傾けてもらえなかった。

それでも、カルメンはあきらめなかった。「インターネットがあらゆることを変えるだろうという話をして、かわいそうな友人たちをうんざりさせたことを思い出すわ」と、彼女は言う。その問題が自分の職務の一部なら、戦いをもっとうまく進められるはずだということを彼女は理解していた。そして98年、彼女はその機会を与えられた。「担当する職務リストで新しいポジションができたの。オンラインでの情報伝達方法を考え出すこともその一つだった。リストの最後に置かれていたんだけどね」と彼女は語る。

「でも、私はそれをもっと大きな仕事にしたかった」。彼女は面接で自分がそれをどれほど重要だと思っているかを力説。採用担当マネジャーは彼女に、あなたのおかげで考えるべきことがたくさんできたと言い、ポジションを彼女にオファーした。

デジタル戦略が彼女の職務の一部になってからも、戦いは容易ではなかった。だが最終的に彼女はその機関の仕事の仕方を変える力になった。「戦うときはいつも正しくなくてはいけない。自分の考えは正しいと確信していたわ」と、彼女は語っている。

(エイミー・ギャロ=文 ディプロマット=翻訳 Getty Images=写真)