クレーム対応だけじゃない。80歳のおばぁちゃんに感謝されることもあった元携帯ショップスタッフに聞いたショップとの上手な付き合い方
今回、携帯ショップで働いていたAさん(仮名)に元ショップスタッフとしてお話をしていただいた。Aさんは30代前半でおととし寿退社された方だ。ショップ勤務歴は約6年というから、スマートフォンが登場し、ブーム絶頂期での混雑、混乱の時期をショップで働かれていたことになる。
彼女の話から携帯ショップスタッフの本音と、携帯ショップを上手く利用できる方法をひも解いてみよう。
●ショップで困ったことを聞いてみると
Aさんは地方のキャリアショップで働かれていた。先ずどんなショップで働かれていたのか聞いてみた。
「ショップごとに違うと思いますが、私はオフィス街にあるショップでしたので平日のほうが土日より忙しい店舗でした。端末の販売より料金収納業務が多い店舗です。休日などはオフィス街の店舗の方が空いているので、スムーズな受け付けが期待できます。」
そんなショップ勤務で、過去にあった困ったケースを聞いてみた。
「iPhoneのお客さんで困った方は何人かいらっしゃいました。特に多かったのがパソコンを持ち込んでiTunesとの同期を教えてくれというお客さんです。今でこそクラウドで電話帳を移したり、保存したりする方法がありますが、ちょっと前まで個人でやるにはPCで移すかiTunesで同期するかしか方法がありませんでした。作業は、お客さんのパソコンに何か不具合をおこしたらいけないとヒヤヒヤしていました。」
iCloudの登場が2011年10月。それまでのiPhone 3G/3GSといった機種ではPCと接続してiTunes同期するのがデータバックアップの唯一の方法だった。キャリアとしては独自にフィーチャーフォンからiPhoneへのデータ移行ツールをCD-ROMとして無料配布していた時期もあったが、こちらもPCを使う事を前提としていたのだ。

PCを持ち込むiPhoneユーザーも過去にはいたらしい
●クレーム対応も業務なのだが
「一部の家電量販店等では修理受付業務ができない店舗もあります。そういったことで、他店で買った端末のクレームを言ってくる方もいらっしゃいます。『こんな話は説明されなかった』とかですね。同じキャリアの商品のクレームはもちろん業務として受けますが、(他店の場合)その時の説明の趣旨などの詳細がわからないので実際は困ります。本当に他店の説明漏れかもしれませんし、お客さんの勘違いの場合もありますので。クレームや修理はキャリアショップの業務として受け付けるんですが、本音を言うとあまり良い気持ちではないですね」
iPhoneをはじめとしたApple製品は原則としてAppleから認定された技術者のいる正規代理店でのみ修理受付できることになっている。販売店によってはiPhoneの修理受付ができない店舗もあるのだ。
「中高年の方では、電話帳の登録作業をお願いされることも多かったですね。新しい電話番号を聞くとその度に来店されるといった感じです。ですが、それも業務なのでお断りはしません。」
高齢者の方がフィーチャーフォンからスマートフォンへの機種変更というケースでは、使い勝手を考慮してシニア向けのスマートフォンを勧めることも多いそうだが、「年寄り扱いするのか」と怒られる事もしばしばあるとのこと。

シニア向けスマホを勧めて、高齢者からクレームされることも
●どこまでがショップでフォローできるのか
ショップスタッフ時代、Aさんはアプリに関しても悩みがあったという。
「ショップスタッフは研修などで教育は受けますが、何万とあるスマートフォンの全てのアプリを知っているわけでもないです。ですから自社アプリやサービス以外の事はお客さんの方が詳しかったりします。」
実際にアプリの対応では、こんなこともあったそうだ。
「ダウンロードしたアプリに不具合があるのでショップにクレームに来られたお客さんもいらっしゃいました。『お前のところで買ったスマートフォンで不具合がおきているんだから何とかしろ!』と言われるんです。ですが、それはキャリアが開発・提供しているアプリでもありませでした。そのアプリの不具合に関しては提供元でないと対処できませんので、ショップでは対応できませんでした。あれは今でもホトホト困った思い出ですね。」
一部のユーザーにはGoogle PlayやApp Storeでダウンロードしたアプリも全てキャリアのサービスだと思っている人や、キャリアで面倒みてくれると思う人もいるのだ。
例えば昨年11月に某メッセンジャーアプリでサービス障害が発生した。
30分ほどの障害ながら、一時Twitterで関連するワードがトレンドに入るほどの騒ぎとなった。Twitterのつぶやきには「は?某アプリ送れないんだけど?ブチ切れ過ぎてキャリアにクレームつけた。 携帯売るなら中身まで責任持て」、「某アプリが一時間使えないってことは、あたし達にとっては一時間会話できないのと同じことだって早くキャリアには気づいて欲しいな」など、通信キャリアに対しての書き込みも多発した。
●苦い思い出ばかりではないショップ経験 うれしい事も多かった
ショップの仕事は辛いばかりでないとAさんは振り返ってくれた。
「辛かった思い出ばかりではありません。例えば80歳のおばあちゃんが開店と同時にタブレットを買いに来て『孫とビデオチャットをしたいから買う』と言うんです。購入されたので閉店まで他のスタッフと交代しながら一生懸命お教えしました。数日後、そのおばあちゃんが、『孫とビデオチャットできた』とお礼に来られたんです。その時は本当にうれしかったですね。」
また、思わぬ経験もあったという。
「帰省する度にショップに足を運んでくれる女性がいらっしゃいました。彼女は最初に来店した時は高校生で保護者の方と機種変更に来られたのですが、大学に進学し、卒業し、そして就職の報告にまで来られました。今では他県の他ショップに努められているんです。うれしかったですね。」
●ショップスタッフが商売抜きでうれしいと思うお客さんは、どんな人なのだろう
それでは、ショップスタッフにとって、ビジネス抜きにうれしいお客さんとはどんな方なのだろうか。
「ショップスタッフがうれしいお客さんは、実機を触った上でわからない事を質問される方ですね。そういう方は買った後に『こんなモノとは思わなかった』という感じにはならないと思います。『本体価格実質0円ならなんでも良いから』とご説明を聞いていただけない方は後でクレームになる場合が多いような気がします。また、希望をしっかりと伝えて頂けるとありがたいです。予算や具体的な利用方法ですね。それによってショップスタッフもオススメする機種が変わります。説明もしやすくなります」
「正直に言うと新規契約や機種変更を毎回していただける常連のお客さんが1番ありがたいお客さんです。担当スタップを名前で指名されるような方であれば、現在の料金プランや前回のやりとりをおぼえているので大変ありがたいです。」

常連のお客さんは過去の来店の案件も覚えているとか
「かかりつけのお医者さん的な感じでしょうか。でも、それがキャリアショップを利用するのには1番賢い方法かもしれません。自分のスマホの主治医を決めておけば、トラブルや故障の対応も相談しやすいでしょうし、ショップでの時間も短縮できると思いますよ」
かかりつけショップ、かかりつけスタッフを作っておくと、これまでの経緯を説明する時間も省ける。また、もしものトラブルが発生した際にも相談がしやすくなるだろう。またショップ側としても、トラブル発生でもクレーム扱いではなく。お客さんと建設的な対応ができるメリットもある。
今回、元キャリアショップスタッフに話をうかがったが、彼女はおととしに退職しているので現状のショップとは少し違うところがあるかもしれない。それでもスタッフ経験者の意見というのは、なかなか聞けないので貴重な話ではないだろうか。
われわれ利用者も、キャリアのスタッフも同じ人間。立場は違えども、気持ちの良いコミュニケーションは心がけたいものである。
携帯ショップに行く際には、あわてて駆け込むだけはなく、ショップスタッフとの交流ができるくらいに落ち着いて、良い関係を作ってみてはいかがだろうか。
余談だが、ショップスタッフを経験したAさんは、今でも続いている悩みがあるという。
「当時は、ケータイ電話が好きでついた仕事でしたので、新機種が出ると買ってしまうんです。iPhoneだけでも全機種(4GSまで)もっています。もちろん社割りがあるわけではないので、やめてから2年たった今でも、端末代金を分割で支払っているわけで…」
もし自分がスタッフでも、やはり同じ事をしてしまいそうで、身につまされる話である。
甲斐寿憲

