《時価総額50兆円超》キオクシアがトヨタを抜いた「大きな意味」…低迷する日本経済にチャンス到来か

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株式市場の象徴的な変化

現在、世界経済をけん引しているのは、間違いなくAI(人工知能)だ。AIの開発や、それに使う半導体、データセンター、モデル開発企業に投資する企業などの株価は、大きく上昇している。それは、世界の投資資金が、そうした分野に向かっていることを証明している。

6月初旬時点で、エヌビディアを筆頭に、AI関連11社それぞれの株式時価総額は1兆ドル(160兆円)を超えた。一部、株価に割高感はあるものの、AIは世界経済を引っ張っている。私たちは今、過去の産業革命以上ともいわれる、“AI革命”の真っただ中にいるといえるだろう。

そうしたAIの大波は、日本経済、金融市場にも重大なインパクトを与えはじめた。

6月1日の国内株式市場の変化は象徴的だった。AIなどIT先端企業への投資を行うソフトバンクグループの株式時価総額が、22年ぶりにトヨタ自動車を上回ったのだ。6月上旬には、NAND型フラッシュメモリー大手のキオクシアの時価総額が、トップ2にランクイン。

同社の勢いはそのまま続き、6月12日にはトヨタやソフトバンクグループを抜いて国内株式時価総額で首位に立った。

そうした変化は、中長期的に日本経済を考える上で重要な意味を持つ。

現在、日本株の取引のうち、7割程度は海外投資家だ。国内の個人投資家は約2割といわれている。内外の投資家は、日本企業の中で、AI関連分野で成長を目指す企業が現れたことを察知し始めた。

1990年代初めのバブル崩壊以降、わが国の企業は、新しいモノやサービスの創出が難しかった。中国、韓国、台湾企業による製造技術のキャッチアップ、国際的な水平分業は加速し、日本企業は競争力を失った。

しかし、ここへ来て、AIの大波の中に、わが国企業にもそれなりのチャンスが来ているといえる。とにかく、足元では、AI向けのメモリー半導体関連分野だ。国内の半導体メーカー、サプライヤーによる高付加価値の製品創出は、日本経済の実力回復に欠かせない。

世界経済の成長をけん引するAI

世界経済をけん引してきた米国では、一時、景気回復ペースが鈍化する兆候が見え始めた。

ホルムズ海峡の実質封鎖が長引き、米国のガソリン小売価格は、個人消費減少の分水嶺である1ガロン当たり4ドルを上回った。それに伴い、米個人消費は減少することも懸念された。ただ、米国のAIブームの勢いは強力だ。

今年3月、イラン戦争の影響で世界的に株価は下落した。

ところが、4月に入ると一転して主要投資家は一気呵成に半導体関連銘柄を買い上げた。エヌビディア、AMD、マーベルテクノロジー、HBM(広帯域メモリー)の主要サプライヤーであるマイクロンテクノロジーの株価は反発した。多くの投資家は、AIチップなどの需要が伸び、業績が急拡大すると楽観している。

AIの成長期待は、一部では神話のような神通力を帯び始めた。企業がビッグデータ分析にAIを活用することで、これまでになかった需要を創出できるとの期待は高い。AIによるフェイクニュース流布などのマイナス面よりも、成長期待の方が圧倒的に高いのが現状である。

主要投資家の中には、AIによって新興国での教育ニーズが急拡大するなど、主要先進国が経験したことのない経済成長が起きるとの見方もある。データの分析で、地政学リスクや気候変動に対応した供給網の構築の期待も高い。

こうしたAIがもたらす加速度的、非連続な成長への期待が、世界の株価を押し上げた。6月上旬、株式市場はAI一極集中相場の様相が鮮明だった。

キオクシアの株価は70倍に

わが国の経済、金融市場にも影響は波及している。特に、株式市場へのインパクトは大きい。

日本株の中で、上昇が鮮明な代表銘柄はキオクシアだ。6月3日、キオクシアの株価は一時、8万円台に上昇。6月19日には10万円の大台を突破した。2024年に同社が上場した時の初値は1440円だった。そこから約1年半の間に、株価は約70倍も上昇した。

AIデータセンターで使う高性能のフラッシュメモリーやSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)需要の急増、それによる業績拡大期待が株価上昇を支えた形だ。

オープンAIへの投資を積み増した、ソフトバンクグループの業績期待も高まった。早ければ、今年9月、オープンAIは米ナスダック市場に新規株式公開を行うという。どうやら主要投資家の予想よりも早いようだ。

また、オープンAIと推論モデルの性能向上を競う、アンソロピックのIPO観測も出ている。推論モデル開発企業の資金調達増加でAIの性能向上ペースが加速し、ソフトバンクグループの投資収益が拡大すると見込む投資家は増えた。

その結果、ソフトバンクグループの時価総額は一時、トヨタ自動車を上回ったのである。一部の主要投資家は、日本の産業構造のけん引役が自動車関連産業から、AI関連産業に移行するとみているようだ。

それは、わが国の経済にとって非常に重要な意味を持つ。

わが国の経済の実力(潜在成長率)は、日銀推計によると0.6%程度だ。米国は、推計の方法にもよるが、2.0%をやや下回る程度だろう。その差は、個人消費の勢いもさることながら、AIモデルの開発や半導体企業、IT先端企業の集積によるところが大きい。

キオクシアやソフトバンクグループに続く形でAI関連分野の日本企業が増加すると、日本経済の本格的な回復の可能性は高まるだろう。

では、日本企業にどのようなチャンスが舞い込むのか。

つづく記事〈キオクシア株にさらなる追い風か…AI企業が目論む「脱エヌビディア」の実現で起こること〉で詳しく解説する。

【つづきを読む】キオクシア株にさらなる追い風か…AI企業が目論む「脱エヌビディア」の実現で起こること