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刑事裁判をやり直す「再審」制度の見直しをめぐり、検察官による不服申し立て(抗告)の「原則禁止」を刑事訴訟法の本則に盛り込んだ改正案を、政府が閣議決定する見通しだと報じられている。

こうした状況の下、再審に関わってきた元裁判官や弁護士らは、「証拠開示の問題に手がつけられていない」と課題を指摘する一方、「今ここで法案を出さないと、また数十年変わらない」として、国会審議を通じた修正に期待を寄せた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●元裁判官「法務省案を非常に危惧」

裁判官や弁護人として再審請求審に携わった弁護士らが5月13日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。

再審法の見直しをめぐっては、自民党内からも法務省案への批判が相次ぐ中、法務省側が、検察官抗告の「原則禁止」を刑訴法の本則(本体)に記載する方向で調整していると報じられている。

一方で、法務省の修正案には、再審開始決定を取り消すべきと認めるに足りる「十分な根拠」がある場合に限って抗告できるという規定が盛り込まれるとの報道もある。

これについて、元裁判官の根本渉弁護士は「非常に危惧している」と語った。

根本弁護士は、1979年に鹿児島県で起きた「大崎事件」の第3次再審請求審で、福岡高裁宮崎支部の裁判長として、検察官による抗告を退け、鹿児島地裁による再審開始決定を維持した経験がある。

しかし、その後、検察官が特別抗告し、最終的に最高裁が再審開始決定を取り消した。根本弁護士は、その経験を踏まえて次のように述べた。

「特別抗告は、憲法違反や判例違反がないとできないことになっているが、そこに『十分な根拠』という要件を加えると、どういうことが起きるのかを考えてほしい。

最高裁は『著しく正義に反する場合』は高裁の決定を取り消すことができ、大崎事件では実際にそれで取り消された。『十分な根拠』があればいいとなれば、誤認があるなどと主張すれば検察側が特別抗告できるようになるのではないか」

●「法案を出さないと、また何十年先になる恐れ」

大崎事件で殺人罪などで有罪判決を受けた原口アヤ子さんの弁護人として、何度も再審の壁に直面してきた鴨志田祐美弁護士も記者会見に出席した。

鴨志田弁護士は、法務省案で盛り込まれる「十分な根拠」という要件について「特別抗告にも適用される」との見方が示されていることに触れ、「抜け道が残り、原則と例外が逆転しかねないリスクがある」と危機感を示した。

一方で、これまで何度も見直しの必要性が叫ばれながら、70年以上にわたり再審法改正が実現してこなかった現実も踏まえて、次のように語った。

「ただ、『これでは飲まない』と言ってしまったら、もう法案は出てこない。ここで出さなかったら、また何十年先になっちゃうかもしれない。法案が出ないと、議連案を出しても通らない。今の国会情勢では、不十分だけれどもこの案を出してもらって、国会の審議の中でもっと良いものに変えてほしいし、みなさんにも注目してほしい」

●シンポ「そこに正義はあるか」も開催へ

法務省案の問題点について国民の理解や関心を高めようと、関連イベントの開催も予定されている。いずれもオンラインでの配信が行われる。

【シンポジウム「法務省の再審法改正 そこに正義はあるか」】

日時:5月16日(木)午後2時〜午後4時30分

場所:青山学院大学 青山キャンパス(東京都渋谷区)

内容:元裁判官らが、現場で直面した証拠開示の問題などについて語る。

【集会「無実の人を救おう!ノーモアえん罪」】

日時:5月20日(月)午後6時15分〜午後8時45分

場所:文京区民センター(東京都文京区)

内容:鴨志田弁護士や、再審法に詳しい研究者らが登壇する。