サントリーの動きに注目が集まる

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4月15日にサントリーホールディングスが、「ルル」「ロキソニン」などを扱う第一三共ヘルスケアを買収すると発表しました。買収額は2465億円。サントリーはすでに「セサミンEX」「ロコモア」などの健康食品を扱っていましたが、今回の買収で協和キリンを上場子会社に持つキリンホールディングスと方向性が重なってきました。一方、アサヒグループホールディングスやサッポロホールディングスは、ビールや酒類へと経営資源を集中する姿勢を鮮明にしています。
◆世界的なビール離れが進む

ビールの市場は停滞しています。キリンホールディングスの調査によると、2024年の世界のビール消費量は1億9412万キロリットルで前年比0.5%の増加に留まりました。消費量ランキング1位で年間4053万キロリットルという巨大な中国市場は前年比で3.7%も減少、2位のアメリカも0.5%減少しています。ビールで有名なドイツは2.2%、日本も2.7%それぞれ減少しました。ロシアやインド、タイなどで消費量は伸びていますが、世界的に見ると市場の伸長ペースは限定的であり、高い伸びしろは失われています。

サントリーは2014年にジムビームを1兆6500億円で買収し、大成功を収めています。国内のビール市場の先細りが見え始めた中で、海外の市場開拓に力を入れていました。ウォール・ストリート・ジャーナルは、2024年にサントリーがアメリカのクラフトビール会社ボストン・ビールと買収交渉に入ったと報じています。しかし、成立の話は聞こえてきません。そうした中で、第一三共ヘルスケアを買収するというニュースが飛び込んできたのです。

サントリーがヘルスケア事業の強化を印象づけた瞬間でした。「ロコモア」などを扱うサントリーウエルネスの2025年12月期の売上高は1102億円。第一三共ヘルスケアの2025年3月期の売上高が867億円で、2社合計で2000億円近い売上規模になります。なぜ、ビール会社は健康食品や医薬品事業を強化するのでしょうか。

◆健康食品にシフトする背景には「発酵技術」が

ビール会社は高い発酵技術を持っています。ビールの栄養価は高く、健康食品と本業の方向性が似ていたことが背景にあります。国民の健康志向の高まりと、健康や福祉を重視するSDGsとの方向性とも合致しており、企業イメージを高めやすいというメリットもありました。

しかし、健康食品の市場も停滞が鮮明になってきました。矢野経済研究所によると、2025年度の健康食品の市場規模は前年度比0.8%減の9147億円。サプリは微増を続けているものの、その他の健康食品は市場の縮小が顕著なのです。一方、医薬品の開発支援などを行うIQVIAによると、2025年度の医薬品の市場規模は前年度比1.7%増の11兆7039億円。高齢化に伴って国内の医薬品市場は旺盛に伸びています。健康へと目を向けたビール会社が、医薬品へと行きつくのは当然のことでした。

◆高効率な収益モデルを追求するキリン

キリンホールディングスは、2025年12月期の酒類全体の事業利益が前期比9.1%増の1354億円でしたが、医薬品を扱う協和キリンの事業利益は同11.4%増の1023億円でした。売上収益は酒類が1兆753億円で、協和キリンが4968億円。協和キリンは、酒類の販売よりも遥かに効率よく稼いでいるのです。

ただし、医薬品のビジネスは経営の舵取りが極めて難しいことも確か。2026年3月、協和キリンはアトピー性皮膚炎の治療薬候補だった「ロカチンリマブ」のすべての治験を中止すると発表しました。売上2000億円を生み出す潜在性を持っていたプロジェクトから撤退したのです。悪性腫瘍に関する新たな懸念が確認されたことがその理由。医薬品の開発は投資額が大きく開発期間が長期に渡るため、リスクが大きいビジネスであることは間違いありません。