『貝殻マーク』捲土重来なるか? エンジンオイルの世界トップブランド『シェル』が、一般ユーザー向けブランディング活動を本格化
シェルの現状を知るための取材会
去る3月26日、週末にF1日本グランプリ決勝開催を控えた鈴鹿サーキットのホテルにて、シェル・ルブリカンツ・ジャパンが主催するメディア向けの『シェル・ヒリックス(HELIX)新商品発表会』と、シェル・グループが主催する『シェル・チャンピオンシップ・クラブ2026前夜祭』が行われ、筆者も参加することができた。
【画像】F1日本GP開催直前の鈴鹿で『シェル・ヒリックス新商品発表会』と『シェル・チャンピオンシップ・クラブ2025前夜祭』開催! 全56枚
案内が来た時点で気がついたのは、大変失礼ながら、シェルに対するイメージが数年前で止まっていることだ。だから、今回の取材はその現状を知るという意味で、とても興味深いものとなった。

『シェル・チャンピオンシップ・クラブ2025前夜祭』に登場したスクーデリア・フェラーリのF1パイロットたち。胸には貝殻マークが入っている。 平井大介
ちょうど10年前となる2016年、ロイヤル・ダッチ・シェルが保有する昭和シェル石油の株式が、出光興産へ譲渡された。2019年には、出光興産と昭和シェル石油が経営統合。出光興産として新たにスタートを切っている。
その後、2021年から2023年頃にかけて、全国にあるシェルのサービスステーション(ガソリンスタンド)が、アポロステーションへと順次リニューアル。日本のガソリンスタンドから、貝殻マークでお馴染みだったシェルの看板がなくなってしまったのだ。
つまり、『数年前で止まっている』とは2023年頃のことで、そのイメージギャップを埋めるのが、本稿の目指すところとなる。
日本におけるシェルの起源は1900年
日本におけるシェルの起源は、1900年に横浜で貿易業を行っていた『サミュエル商会』が石油部門を独立させ、『ライジングサン石油』が誕生したことにある。初期から貝殻マークが使用され、1910年代には『赤貝印』、『黒貝印』ブランドでガソリンが販売されていた。
戦後になると『シェル石油』と名を改め、1985年に昭和石油と合併して『昭和シェル石油』となり、2019年に出光興産と合併したことで、日本でガソリン販売におけるシェルの系譜が消滅……という流れだ。

メディア向けに開催された『シェル・ヒリックス新商品発表会』では、ルクレール選手とハミルトン選手が出演するテレビCMが紹介された。 シェル・ルブリカンツ・ジャパン
一方、2016〜2017年に行われた昭和シェル石油の会社分割により『潤滑油・グリースの研究開発/製造/販売事業を承継』したのが、2017年11月に発足した『シェル・ルブリカンツ・ジャパン』。2021年1月にはシェル・グループの一員となっている。つまり、ガソリンスタンドの看板からは名前が消えたが、その活動が止まったわけではないのだ。
現在同社が取り扱う商品は、ディーゼルエンジン油、ガスエンジン油、自動車用ギア油、船舶用潤滑油、工業用潤滑油、グリース、航空用潤滑油、そしてガソリンエンジン油の『シェル・ヒリックス』となる。
シェル・ヒリックスは、グローバル潤滑油市場において19年連続世界ナンバーワンサプライヤーに選出というデータもある、まさに世界のトップブランド。F1チームである『スクーデリア・フェラーリ』のパートナーを長年務めていることでも知られる。
今回、日本グランプリ開催に合わせた理由がまさにそこで、世界各国から招待された販売店関係者に対する表彰が行われた『シェル・チャンピオンシップ・クラブ2025前夜祭』に、F1パイロットであるシャルル・ルクレール選手とルイス・ハミルトン選手が登場したのだ。この度、両選手が出演するテレビCMも製作されている。
世界統一パッケージラベルで発売開始
4月1日から発売開始となったのは、『シェル・ヒリックス・ウルトラ』シリーズの新商品で、輸入車だけでなく国産車にも幅広く適用できるようにラインナップを拡充したことなどが特徴。製品名称を改め、世界統一パッケージラベルへの変更も受けている。
新商品となるのは、ヘリックス・ウルトラが0W-16、5W-40、同ECTが0W-20、5W-30で、5月7日時点で全ての販売がスタートした。メーカーから認証を受けているのは、BMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、ポルシェ、ルノー、フィアットなどで、詳しい適合の組み合わせはホームページや販売店などで確認頂きたい。

4月1日から発売開始となった『シェル・ヒリックス・ウルトラ』シリーズの新商品。世界統一パッケージラベルを採用している。 シェル・ルブリカンツ・ジャパン
シェル・ルブリカンツ・ジャパンの調査によれば、乗用車用エンジンオイルの販売チャネルは、ディーラー43%、カー用品店19%、サービスステーション15%、整備工場13%、中古車販売店9%となっている。
この中でやはりサービスステーションの15%がなくなったことは大きく、出光興産との経営統合で、そこだけゼロリセットされてしまったわけだ。
そこで同社はカー用品店での販売を強化しつつ、昨年夏より『シェル・ピット』と呼ばれる認定の整備工場加盟店を募集しており、今年はその活動を本格化。そして、2030年を目標に『乗用車用エンジンオイル市場ナンバーワン』へ挑戦するという。
現在、日本における潤滑油市場におけるシェルのシェアは約21%で、競合上位は約25%となるが、これを乗用車用に絞ると20%にも届いていないという。また、BtoBが約9割とかなりの比率で、グローバルではBtoBとBtoCは均衡しているため、BtoC強化は急務となっているわけだ。
エンジンオイルの選び方は難しい
製品内容からするとやはり輸入車がメインとなりそうで、競合はカストロールやモービル1となる。ただ、エンジンオイルは実際の効果がわかりにくいため選び方が難しく、指名買いに至るまでは、ブランド力や販売店のアドバイスが大きいだろう。
そういった意味でシェルは、ブランドは世界的にかなりの強さがあるから、日本でのブランド訴求や販売ネットワークの整備によっては、目指すところのナンバーワンに到達する可能性は大いにある。

日本における起源は120年以上前となるシェル。果たして『貝殻マーク』の捲土重来なるか? シェル・ルブリカンツ・ジャパン
ただ、今回発表会で説明を聞いていて、オイル販売の難しさを改めて感じた。CMに登場するのはスクーデリア・フェラーリのパイロットだが、決してスーパーカー専用というわけでなく、輸入車はもちろん国産車にも幅広く適用するとなると、果たして自分のクルマに適合するのだろうか? と一般ユーザーは疑問を抱くに違いない。かくいう私もそう感じたのだ。
そういった点からも、ナンバーワンへの道のりが平坦ではないことが予想されるが、こうして発表会を開催するなどして『ブランディング活動を始動』したというのが現在地となる。
実は厚木に研究開発拠点、横浜と神戸に生産施設を持っており、日本で120年以上の歴史があるだけに、その基盤は強いものがあるシェル。果たして『貝殻マーク』の捲土重来なるか? その行方に注目したい。
