『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』©2026 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

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 劇場版『名探偵コナン』シリーズといえば、“爆弾”をめぐる壮大な展開が度々描かれることでお馴染み。最新作『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』でもその伝統は受け継がれており、物語を大きく動かす要素となっていた。

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 今回はそんな同シリーズに登場する爆破シーンを振り返り、「歴代爆弾魔のなかで一番恐ろしいのは誰か」について考えてみたい。

■『時計じかけの摩天楼』森谷帝二 まず、劇場版における爆弾魔の原点として外せないのが、第1作『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』に登場する森谷帝二だ。

 森谷は米花町でその名を馳せる有名建築家なのだが、“左右対称”に強く執着しており、自分が設計した建築物のうち「左右対称ではない」「美しくない」と判断したものを次々爆破していく。

 森谷の恐ろしさは、自らの美学を貫くというエゴイスティックな動機にもかかわらず、無関係な人々を巻き込むことを一切ためらわない点にある。電車の線路や巨大商業施設など、大勢が犠牲になる場所を平気で標的とするのだ。また序盤では爆弾を仕込んだラジコン飛行機を少年探偵団の元太と光彦、歩美に渡しており、3人はあやうく命を落とすところだった。

 さらに森谷の性格をよく示しているのは、米花シティービルに仕掛けた最後の爆弾。これは時限式となっていた上、設計図を見て解体しても、最後に残ったコードをほぼヒントなしで切断しなければ起爆するという特殊な爆弾だった。逆恨みした相手を精神的にいたぶろうとする、凶悪な本性を感じさせる。

■『14番目の標的』沢木公平 それに対して第2作『名探偵コナン 14番目の標的』の沢木公平は、森谷とは対照的な犯人。無差別的な犯行ではなく、狙った相手を執念深く追い詰める“復讐者”タイプの爆弾魔だった。

 一流のソムリエだった沢木は、バイク事故で味覚障害を負ったことをきっかけに、事故の加害者や自分を侮辱した人間への殺意を募らせていく。その執念はあまりに強く、連続殺人のカモフラージュに利用できるというだけで、旧知の仲だった毛利小五郎まで標的とするほどだった。

 犯行の最終局面では、海上レジャー施設・アクアクリスタルに爆弾を設置。そこには沢木の計略によって小五郎や標的となった人々が集められており、海上の密室空間で逃げ道ごと断とうとしていた。爆発自体というよりも、陰湿で執拗な性格こそが沢木の恐ろしさだと言えるだろう。

■『天国へのカウントダウン』エージェント・ジン 第5作『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』に登場する黒ずくめの組織のエージェント・ジンについても触れておきたい。本作でジンは、組織を裏切った“シェリー”こと灰原哀を抹殺するため、巨大建造物・ツインタワービルに爆弾を仕掛ける。そのときビルでは完成記念パーティーが開かれており、集まった人々のなかには子どもたちの姿もあった。

 たった1人の裏切り者を殺すために、多くの無関係な人々を巻き込む爆破事件を起こす……。まさに黒ずくめの組織らしい、容赦のない犯行だ。

 また、異常な心理状態となっていた他の犯人たちとは違い、ひたすら冷徹に合理的な判断を下しているのがジンの特徴。“プロ”ならではの恐ろしさがそこにはある。

■『ゼロの執行人』日下部誠 その一方で現代的な爆弾魔の姿を体現していたのは、第22作『名探偵コナン ゼロの執行人』の日下部誠だ。本作の爆破は、ネットワークにつながった家電をハッキングする「IoTテロ」として描かれている。

 日下部はまず、サミット会場予定地である国際会議場を爆破。さらに都心の各地で電子レンジや電気ポットなどを次々と爆発させ、都市全体を混乱の渦に叩き落とす。日常生活のなかにある身近な機器が凶器に変わるという事態は、それだけで強烈な恐怖を感じさせる。

 とはいえ日下部の犯行は、恐ろしくもどこか哀しく映る。というのもその犯行動機は自身の協力者を死に追いやった公安への復讐という、歪んだ正義感にあったからだ。恐ろしい事件ではあるものの、犯人の人間性が凶悪だったとは言えないだろう。

■『ハロウィンの花嫁』プラーミャ 「一番恐ろしい爆弾魔は誰か」という問いへの答えにもっともふさわしいのは、やはり第25作『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』のプラーミャではないだろうか。

 プラーミャは全世界を股にかけて暗躍しているという正体不明の殺し屋。数年前に自身を追い詰めた警察学校組の面々を葬り去るため、日本に舞い戻ってきた。

 その脅威の1つは、殺し屋としての能力の高さ。高性能の爆弾を自在に操るだけでなく、世界中の警察を翻弄してきた頭脳、そしてワイヤーを射出してビルからビルに飛び移る身体能力とどれをとっても隙がない。3年前の事件では、あの安室透を真正面から手玉に取り、1対1の戦いに限れば勝利を収めていたほどだ。

 また、自分の正体を知る者は誰一人逃さないという徹底した性格もプラーミャの恐ろしさだ。作中では少年探偵団と警察学校組、さらに自身に恨みを持った者たちで構成された組織「ナーダ・ウニチトージティ」を、1人残さず殺害しようと画策するのだった。

 その計画はきわめて周到だが、どれだけ多くの人を巻き込むことも躊躇していない。ジンのようなプロフェッショナルタイプでありながら、無差別犯タイプや復讐者タイプの顔も併せ持っている驚異の犯人だ。

 なお、プラーミャは最終的にハロウィンの飾りを利用し、渋谷を広範囲にわたって爆発させるという計画を実行しようとしていた。そのスケールのすさまじさからしても、作中最強の爆弾魔と言っても過言ではないだろう。

 劇場版『名探偵コナン』に登場する爆弾は、たんなる舞台装置ではなく、犯人の思想や美学を表すものでもあった。だからこそ作中の爆弾魔たちは、いずれも強烈な印象を残す人物ばかりとなっている。過去作を鑑賞する際には、ぜひその生き様に注目してみてほしい。(文=キットゥン希美)